教養としてのロースクール小論文
法学部志望者が編入試験で直面するのが、単なる法律知識だけでなく、民主主義や法の支配、社会保障制度といった社会科学的背景を問われることです。このような論点に対して、断片的な知識では説得力のある小論文を書くことができません。本書は、ロースクール入試の出題傾向に基づいて、法学編入試験で繰り返し問われる重要なテーマを歴史的・思想的な深さから理解することを支援します。
この本の位置づけ
本書は、単に小論文の書き方テクニックを学ぶ段階を終えた受験生、特に法学部志望で「テーマの背景知識を整理したい」という課題を持つ受験生に適しています。北海道大学、大阪大学、広島大学などの難関大学法学部受験、および日本福祉大学などで社会保障制度や福祉国家といった専門テーマが出題される場合に、特に有効に機能します。 他の小論文参考書の多くは「起承転結の組み立て方」や「段落構成」といった形式面を中心に扱いますが、本書は法学・政治学・思想の具体的なテーマを題材に、各分野の基礎的な考え方や論争点を学ぶ内容構成になっています。つまり、内容的な深さを重視する大学の出題に対応するための教材という位置づけです。
いつどのタイミングの編入受験生におすすめか
本書の導入は、志望大学の過去問で「民主主義とは何か」「法と道徳の関係」「社会保障制度の役割」といったテーマが頻出であることを確認した後、つまり志望校が決まって過去問を分析する段階(編入受験準備の中期~後期)が目安です。早期に手をつけると、具体的な出題傾向と結びつけられず、一般教養書の域にとどまってしまいます。 逆に試験直前に初めて開くと、400ページを超えるボリュームの中から必要な部分を抽出する作業に時間をとられ、実際の答案作成練習の時間が不足する可能性があります。遅くとも本格的な過去問演習を始める2~3ヶ月前には着手し、自分の志望校が出題するテーマの関連箇所を優先的に読み込む進め方が効果的です。
ターゲット大学と対策できるテーマ
オンライン編入学院が保有する過去問データベースを分析し、本書の内容が実際の出題範囲と重なる大学・学部を抽出しました。「頻出テーマ」はその学部の過去問で繰り返し問われている論点のうち、本書で扱っているものです。
専門科目(法学・政治学)
頻出テーマ民主主義、デモクラシー、法の支配、法哲学、新自由主義、国際政治
本書の該当ページ新自由主義(p.54)、民主主義(p.53)、デモクラシー(p.254)
日本福祉大学全学部
小論文
頻出テーマ専門分野、歴史意識
本書の該当ページ専門分野(p.285)、歴史意識(p.413)、ニーズ(p.28)
亜細亜大学全学部
小論文
頻出テーマ江戸時代、戦国時代、朝鮮戦争
本書の該当ページ戦国時代(p.325)、朝鮮戦争(p.321)、ウェストファリア条約(p.329)
神戸学院大学現代社会学部
小論文
頻出テーマ交通事故
本書の該当ページ交通事故(p.33)、高齢者(p.207)、社会保障(p.53)
群馬大学医学部
小論文
頻出テーマ生命倫理、医療情報
本書の該当ページ医療情報(p.275)、生命倫理(p.105)
※志望校の最新の募集要項と過去問は必ずご自身でご確認ください。
使い方
まず目次から自分の志望大学で出題されているテーマに該当するページを特定します。例えば法学部志望であれば「自己責任の意義」「法と道徳」「共同体、市場、国民国家」などから始めることを推奨します。各講の冒頭で基本概念を押さえ、その後の具体事例(星新一の作品解釈や歴史的事件など)でテーマの応用形を学ぶ流れになっています。 読みながら「この論点は試験でどう出題されるのか」という問い意識を持つために、並行して志望大学の過去問題文を参照することが重要です。本書で学んだ概念が、実際の出題文でどのように登場するのかを確認することで、知識が具体的な答案作成へと結びつきます。 読破を目指さず、自分に関連する講から選択的に学習し、その後の過去問演習の中で「あ、ここで出た考え方だ」という発見を繰り返すサイクルが最も効果的な使い方です。
編入試験でよく問われる論点から入るなら、次の順で読むのが効率的です。
- p.3 なぜ、こうした知識を背景とした出題が多いのか――『教養としての大学受験国語』を参考に
- p.42 星新一「少年と両親」と手段とされる個人――臓器提供者として世にだされた子供たち
- p.77 <獨協大学 04年度 課題文一部抜粋>
- p.154 自己責任の意義
- p.187 共同体、市場、国民国家
- p.270 第四講 専門家と素人──手段が自己目的化してゆく大衆社会をめぐって「クオリティ・オブ・ライフ」がここで扱われています
- p.330 イラク戦争と国連決議の無力
- p.350 寛容なる政治体制としての前近代帝国――イスラムのミレット制の新しさ
注意点
本書は2000年代初頭の大学受験小論文参考書を基盤としており、引用されている具体事例や時事ネタの一部は現在から見て時代が経過しています。そのため、参照されている歴史解釈や社会認識が現在の標準的な学説と異なる可能性があることに注意してください。本書の内容を参考にしつつ、志望大学の過去問や最新の学術文献で必ず確認する習慣が必要です。 加えて、本書は思想的背景や歴史的教養を深める教材であり、小論文の「文章構成」「論理展開」「時間内に書き上げる訓練」といった技術的な部分は別途対策が必要です。本書で知識を得た後、実際の答案作成練習で形式面の工夫が求められます。また法学部でも大学によって強調されるテーマが異なるため、自分の志望校が具体的に何を問うのか、過去3年分の出題テーマから優先順位をつけて読むことをお勧めします。







