刑法〔第3版〕 山口 厚
編入試験の法学系科目では、刑法総論から刑法各論まで幅広い知識を整理して答える必要があります。特に因果関係や責任能力といった総論の基本概念、名誉毀損や業務妨害などの各論の構成要件を体系的に理解することは、論述問題で説得力のある答案を作成するうえで欠かせません。本書は判例の立場を踏まえながら、これらの論点を一貫性をもって解説しており、編入試験の頻出分野を網羅的に対策できる基本書です。
この本の位置づけ
本書は大学の法学部で刑法の単位取得を目指す学生、および大学院入試を視野に入れた受験生を想定した標準的な基本書です。専門学校や資格試験向けの簡略版ではなく、判例の議論背景まで掘り下げた内容が特徴です。
ほかの入門的な刑法テキストと異なり、本書は「客観的危険説」と「具体的危険説」といった学説の対立軸を明示しながら説明するため、単なる知識の暗記ではなく、複数の立場を比較検討できる思考力が養成できます。編入試験で論述を求められる受験生にとって、一つの立場に固執せず、バランスの取れた答案を作成するための土台になります。
いつどのタイミングの編入受験生におすすめか
本格的な編入試験対策を開始する時期(おおむね受験学年の8~10か月前)を目安に導入することが適切です。それより早期に着手すると、試験までの長期間に内容を忘れてしまい、直前期での最終確認に時間がかかりすぎるリスクがあります。
逆に導入が遅すぎる場合、各論の細かい論点ごとに参考書を切り替えることになり、刑法全体の体系的理解が得られないまま過去問演習に進むことになります。その結果、個別の論点には対応できても、複合的な事例問題で視点を落とすことが増えます。
ターゲット大学と対策できるテーマ
オンライン編入学院が保有する過去問データベースを分析し、本書の内容が実際の出題範囲と重なる大学・学部を抽出しました。「頻出テーマ」はその学部の過去問で繰り返し問われている論点のうち、本書で扱っているものです。
近畿大学大学院全学部
刑法
頻出テーマ未遂犯、事実の錯誤、殺人罪、中止犯、客観的危険説、具体的危険説
本書の該当ページ事実の錯誤(p.112)、客観的危険説(p.142)、具体的危険説(p.142)
※志望校の最新の募集要項と過去問は必ずご自身でご確認ください。
使い方
まず目次から「第3章」(p.60)の刑法総論の基本概念を読み込むことから始めます。ここで因果関係、責任能力、中止犯などの基礎を固めてから、「第4章」(p.135)以降の各論に進むようにしてください。
読みながら、各単元で取り上げられている判例がどの結論に至ったのか、そしてその理由が総論の原則とどう関連しているかを意識的にマークしておくと、後の過去問演習で応用しやすくなります。過去問演習では、自分が答案に書こうとしている論拠がこの基本書のどのページにあるのかを都度確認し、「学説上の位置づけ」を意識した答案作成を心がけてください。
編入試験でよく問われる論点から入るなら、次の順で読むのが効率的です。
- p.60 第3章「同等利益・優越的利益の保護」がここで扱われています
- p.135 第4章「行為と責任の同時存在の原則」がここで扱われています
- p.151 第6章「極端従属性説」がここで扱われています
- p.180 第7章「科刑上一罪」がここで扱われています
- p.244 第9章「反抗を著しく困難にする程度」がここで扱われています
注意点
本書は第3版の出版から相当年月が経ており、その後の判例や学説の展開が全て反映されているわけではありません。受験前には、志望大学の過去3~5年分の問題で、本書の記述と異なる立場を示した出題がないか確認しておくことをお勧めします。
また本書は学部教科書としての完成度を優先しているため、編入試験の出題傾向に特化した解説ではありません。刑法総論の章立ては充実していますが、試験によって出題される周辺論点(例えば特定の犯罪類型の判例理論)については別途資料での補充が必要になる可能性があります。志望大学の過去問を先に検討し、どの範囲をこの本で学ぶべきかを見定めることが学習効率を高めます。







