基本的人権の事件簿〔第7版〕 棟居 快行,松井 茂記,赤坂 正浩,笹田 栄司,常本 照樹,市川 正人
憲法の基本的人権分野は、編入試験で頻出ですが、判例と学説が複雑に絡み合い、どの論点がどう争われているのかを把握しづらいと感じる受験生は多いでしょう。本書は具体的な「事件」を軸に、基本的人権の全体像を学べる構成になっており、判例の背景にある法的争点を理解するのに役立ちます。
この本の位置づけ
本書は、基本的人権の判例と学説をバランスよく学びたい中級者向けの参考書です。憲法の基礎知識がある程度ある状態で、個別の権利について「なぜそのような判断になったのか」を深掘りしたい受験生を想定した作りになっています。
似た立場の参考書と比べると、本書は「事件簿」という形式で、一つの争点について複数の判例をまとめて解説するアプローチをとっています。そのため、同じ権利でも時代とともに判例がどう変わったのか、学説がどう対立しているのかを追いやすいという特徴があります。
いつどのタイミングの編入受験生におすすめか
基礎講義や判例集で基本的人権の全体像を一通り学んだ後、各論点を深く理解したい段階(大学1年秋から2年春)での導入が効果的です。早すぎる段階で読むと、判例の背景が理解できず、ただ事件を追うだけになりかねません。逆に編入試験が近い時期に初めて手に取ると、各事件の関連性を整理するのに時間がかかるため、復習用や確認用の教材として使う方が現実的です。
使い方
本書は章を順番に読み進める必要はなく、学習中に疑問に思った権利分野から拾い読みする方法が有効です。例えば平等権について詳しく知りたければp.57の非配偶者間人工授精の事件から、プライバシー権の判例体系を確認したければp.114から読むといった具合です。
実際の使い方としては、まず過去問で頻出の権利分野を特定し、該当する章を読んで判例の流れを把握します。その後、参考書や講義ノートで学んだ権利と本書の事件例を対応させて、判例がどの争点に決着をつけたのかを確認する流れが効果的です。暗記ではなく、事件の経過と判示を追うことに重点を置きましょう。
編入試験でよく問われる論点から入るなら、次の順で読むのが効率的です。
- p.25 障害者差別解消法の成立
- p.57 平等原則と非配偶者間人工授精(AID)
- p.90 公序良俗に反する職業選択の自由の制約とは?
- p.114 プライバシー権とはどんな権利か
- p.128 自己情報コントロール権は「抽象的権利」である
- p.136 憲法33条・35条の令状主義
- p.148 夫婦同氏制の合憲性
- p.225 表現の自由の「優越的地位」
注意点
本書は第7版ですが、出版年の確認が必要です。判例法学では新しい判例や法改正への対応が重要であり、版が古い場合は近年の判例の追加学習が別途必要になります。
また、本書は最高裁判例を中心としているため、下級審判例の実務的な考え方まではカバーしていません。編入試験で問われることの多い「判例の具体的な文言」や「判例の引用方法」については、別途判例集や六法で直接確認する必要があります。さらに、この本は権利分野に特化しており、統治機構や憲法総論の内容は扱っていないため、他分野の学習とバランスを取ることを忘れずに。







