刑法総論〔第4版〕 山口 厚
編入試験の法学系科目では、刑法総論の理論的な論点が頻出です。特に事実の錯誤、中止犯、過失責任といった分野では、判例と学説の対立を理解したうえで答案を構成する必要があります。本書は、これらの基礎理論を体系的に解説しており、編入対策の土台作りに役立ちます。
この本の位置づけ
本書は刑法総論の中級レベル向けです。高校法律知識や一般教養レベルからステップアップして、大学法学部の講義水準にある論理的思考を身につけたい受験生に適しています。法学系大学院進学や編入学試験で理論的な深さが求められる場合に、特に有効です。
この本の特徴は、単なる定義の羅列ではなく、法益保護主義(p.4)といった根本原理から各論点を導き出す構成になっている点です。他の入門書よりも論理的な一貫性が強く、過去問で出題される複雑な事例問題に対応する思考力を養えます。
いつどのタイミングの編入受験生におすすめか
本書は、編入対策の準備期間中盤(1年目の秋冬~2年目春)での導入が目安です。まず基本的な刑法の条文知識を整理してからこの書に取り組むと、理論的フレームワークがより明確に頭に入ります。
もし早期に取り組みすぎると、理論の抽象性についていけず挫折するリスクがあります。逆に直前期に初めて読むと、細部の理論理解に時間がかかり、過去問演習に充てる時間が足りなくなる可能性があります。
ターゲット大学と対策できるテーマ
オンライン編入学院が保有する過去問データベースを分析し、本書の内容が実際の出題範囲と重なる大学・学部を抽出しました。「頻出テーマ」はその学部の過去問で繰り返し問われている論点のうち、本書で扱っているものです。
近畿大学大学院全学部
刑法
頻出テーマ事実の錯誤、中止犯、客観的危険説、具体的危険説
本書の該当ページ事実の錯誤(p.220)、客観的危険説(p.296)、具体的危険説(p.296)
※志望校の最新の募集要項と過去問は必ずご自身でご確認ください。
使い方
本書は通読ではなく、過去問の出題論点に対応させながら読む使い方をお勧めします。まず受験予定先の過去問を確認し、事実の錯誤が問われているなら該当箇所を集中的に学ぶという段階的アプローチが効率的です。
ページ番号の例として、「具体的危険説」について出題された場合は、目次の関連箇所を参照したうえで、その前後の論理構造まで読み込むことで、応用問題にも対応できます。読み終わった論点については、すぐに該当する過去問を解き直し、理論と実際の出題形式のズレを確認します。
マーカーやノートで論点ごとに整理することも重要です。判例と学説の立場の違いが明記されている箇所は特に、自分の言葉で要約しておくと、答案作成時の引き出しが増えます。
編入試験でよく問われる論点から入るなら、次の順で読むのが効率的です。
- p.4 法益保護主義
- p.68 第5節 正犯性
- p.117 第1款 正当防衛の独自性
- p.149 第4款 盗犯等防止法の特則
- p.166 第5節 被害者の同意
- p.184 尊厳死
- p.276 第7節 責任能力
- p.308 第3款 任意性
注意点
本書は第4版ですが、法改正に完全には追従していない可能性があります。特に近年の刑法改正や重要判例が加わっていないケースもあるため、購入前に改版日を確認し、必要に応じて最新判例集や法改正情報を別途補足してください。
また、本書は理論型の参考書であり、実務的な事例分析よりも学説の論証に重点が置かれています。このため、実際の過去問が「事例に対して判断理由を述べよ」といった形式の場合、本書だけでは足りず、判例集や演習書との組み合わせが不可欠です。責任能力(p.276)や被害者の同意(p.166)など、重要論点であっても、記述の深さが限定されている箇所もあるため、必要に応じて法学系論文や判例評釈を参照しましょう。







