アトキンス物理化学 下
物理化学は、物理と化学の両分野にまたがる内容のため、どちらかの知識が不足していると理解に大きな穴が生まれます。特に編入試験では、熱力学や回転運動、流体力学といった複数の領域から複合的に出題される傾向が強く、体系的な理解が求められます。本書は物理化学の基礎から応用までを網羅的に扱う標準的な教科書で、編入対策での理論的な支柱となる一冊です。
この本の位置づけ
本書は工学系・理学系の編入受験を目指す受験生のうち、物理化学の内容を初学から体系的に学び直す必要がある方向けです。すでに高校物理と基礎化学の知識がある程度ある受験生であれば、本書の説明をスムーズに進められます。
類似の教科書と比べた際、本書の特徴は記述が丁寧で、エントロピー・内部エネルギー・状態方程式といった抽象的な概念を段階的に導入する点にあります。演習問題重視の参考書ではなく、あくまで理論的な原理の理解に軸足を置いているため、問題演習が豊富な教材とのセット使用が効果的です。
いつどのタイミングの編入受験生におすすめか
本格的な編入対策を開始する時期(目安:受験の12〜14ヶ月前)から導入することをお勧めします。大学指定教材として選ばれている場合は、指定されている時点で優先的に進めてください。開始が遅すぎると、応用的な問題への対応まで到達する時間が不足する傾向があります。
一方、早すぎる段階(受験まで20ヶ月以上先の時点)での着手は、内容の定着に時間がかかりすぎるリスクがあります。また、対象大学・学部の過去問を見る前に進めると、出題頻度の高い章と低い章の優先順位がつけにくくなるため注意が必要です。
ターゲット大学と対策できるテーマ
過去問の出題傾向を分析し、本書の内容が実際の出題範囲と重なる大学・学部を抽出しました。「頻出テーマ」はその学部の過去問で繰り返し問われている論点のうち、本書で扱っているものです。
化学物理生物
頻出テーマ振動エネルギー、歳差運動、動径分布関数、全エネルギー、結合長、親水性
本書の該当ページ振動エネルギー(p.668)、歳差運動(p.622)、動径分布関数(p.728)、全エネルギー(p.966)
数学化学
頻出テーマ電荷移動遷移、球対称、三重項、反応次数、レーザー、結合長
本書の該当ページ電荷移動遷移(p.593)、球対称(p.518)、三重項(p.913)、反応次数(p.929)
お茶の水女子大学理学部
数学化学生物
頻出テーマ分子間相互作用、拡散係数、電子遷移、全エネルギー、吸収スペクトル、モル熱容量
本書の該当ページ分子間相互作用(p.726)、拡散係数(p.871)、電子遷移(p.564)、全エネルギー(p.966)
京都工芸繊維大学工芸科学部
化学物理生物
頻出テーマ分子間相互作用、基準振動、アレニウスの式、反応次数、モルエントロピー、移動度
本書の該当ページ分子間相互作用(p.726)、基準振動(p.544)、アレニウスの式(p.895)、反応次数(p.929)
物理
頻出テーマ球対称、電気双極子モーメント、基準振動、比誘電率、電気双極子、外部磁場
本書の該当ページ球対称(p.518)、電気双極子モーメント(p.709)、基準振動(p.544)、比誘電率(p.712)
英語
頻出テーマ干渉計、重合度、歳差運動、反応次数、アレニウスの式、レーザー
本書の該当ページ干渉計(p.511)、重合度(p.909)、歳差運動(p.622)、反応次数(p.929)
化学
頻出テーマ統計熱力学、直線形、電子遷移、反応次数、電子状態、励起状態
本書の該当ページ統計熱力学(p.701)、直線形(p.517)、電子遷移(p.564)、反応次数(p.929)
新潟大学理学部
化学物理
頻出テーマ解離エネルギー、永久双極子モーメント、生成系、双極子相互作用、イオン半径、電気双極子
本書の該当ページ解離エネルギー(p.536)、永久双極子モーメント(p.710)、生成系(p.969)、双極子相互作用(p.717)
電気通信大学情報理工学域
数学
頻出テーマ電気双極子モーメント、動径分布関数、イオン性、イオン半径、量子数、基底状態
本書の該当ページ電気双極子モーメント(p.709)、動径分布関数(p.728)、イオン性(p.808)、イオン半径(p.809)
茨城大学理学部
数学化学物理
頻出テーマ質量密度、球対称、アレニウスの式、イオン半径、常磁性、基底状態
本書の該当ページ質量密度(p.834)、球対称(p.518)、アレニウスの式(p.895)、イオン半径(p.809)
※志望校の最新の募集要項と過去問は必ずご自身でご確認ください。
使い方
読み進める際は、最初から順番に読むのではなく、対象大学の過去問で出題されている単元(初期条件・エントロピー・慣性モーメント・角運動量など)を確認してから、該当箇所を優先的に学習することをお勧めします。各章では、定義と公式だけでなく、それらが導出される論理過程を丁寧に読み進めることが重要です。
1周目は理論的な理解に注力し、2周目以降で重要な箇所を繰り返し確認する学習方法が効果的です。合格者の体験談では、2〜3周する事例が複数報告されています。進めながら対応する単元の過去問に立ち返り、理論がどのように入試問題に反映されているかを確認する往復学習も有効です。
この本を使った合格者の声
オンライン編入学院に寄せられた合格体験談から、本書を実際に使っていた受験生の記述を抜き出しました。
編入前の自分へのアドバイスで、生物から化学へ変える場合に使った教科書として勧められている。
東京農工大学 工学部 合格(2026年度) / 物理化学
2周した。
お茶の水女子大学 理学部 合格(2027年度) / 物理化学
千葉大学指定教材のため選択し、2周した。演習ベースではなく原理の理解に使っていた。
千葉大学 工学部 合格(2026年度) / 物理化学
物理化学の内容がだいたい書いてあることから選択し、2025年7月から2026年6月まで3周した。
群馬大学 理工学部 合格(2027年度) / 化学
注意点
本書は物理化学全般を扱う標準的な教科書であるため、厳密性と詳細さを追求しており、ボリュームが相当あります。編入対策では出題範囲に限りがあるため、対象大学の過去問で問われていない単元に時間をかけすぎないよう注意してください。
また、本書は原理の理解に重点を置いているため、演習問題が少なめです。理論を学んだ後は、別途で過去問や演習問題集を組み合わせて、知識を問題解法に結びつける訓練が不可欠です。出版から時間が経過している可能性があるため、新版・改版の有無を確認した上で購入することをお勧めします。




