マクマリー一般化学 下 McMurry John,Fay Robert C,荻野 博 ,山本 学 ,大野 公一
編入試験の化学では、酸塩基平衡や反応速度、熱力学といった定量的な計算問題が頻出です。しかし独学で進めると、これらの概念がなぜそうなるのか、どう関連しているのかが曖昧なまま進んでしまいがちです。本書は上巻で基礎を固めた受験生が、編入試験に出現する応用的な問題へ対応する力を身につけるための参考書です。
この本の位置づけ
本書は高校化学の延長線上にある内容ですが、大学レベルの厳密さで各概念を扱っています。編入試験を受ける際に必要な化学平衡・酸塩基・熱力学・電気化学の理論的背景を、計算を通じて身につけたい受験生向けです。
同じ編入対策でよく使われる『化学の新研究』や『鎌田の化学』と比べると、本書は理論的な導出過程を丁寧に示す点が特徴です。一方、有機化学の反応メカニズムについては別冊上巻に譲っており、本書下巻では無機化学と物理化学に重点が置かれています。
いつどのタイミングの編入受験生におすすめか
上巻で化学結合・分子構造・化学熱力学の基礎を習得した後、下巻に進むのが標準的な使い方です。編入試験の過去問分析が終わり、重要論点が化学平衡・反応速度・酸塩基などに集中していることが確認できた段階で導入しましょう。
早すぎる導入(基礎が不安定なまま)は、ページ数の多さから挫折につながります。逆に試験直前での導入は、新しい概念理解に時間がかかり、問題演習へ十分な時間を確保できなくなります。
ターゲット大学と対策できるテーマ
オンライン編入学院が保有する過去問データベースを分析し、本書の内容が実際の出題範囲と重なる大学・学部を抽出しました。「頻出テーマ」はその学部の過去問で繰り返し問われている論点のうち、本書で扱っているものです。
京都工芸繊維大学工芸科学部
化学生物物理
頻出テーマ電極反応、標準還元電位、水素化物、酸の強さ、自発性、酢酸
本書の該当ページ電極反応(p.423)、標準還元電位(p.412)、水素化物(p.441)、酸の強さ(p.322)
お茶の水女子大学理学部
化学数学生物
頻出テーマ弱酸、共有結合性、ヘンダーソン・ハッセルバルヒ式、緩衝能、13族元素、酢酸
本書の該当ページ弱酸(p.329)、共有結合性(p.447)、ヘンダーソン・ハッセルバルヒ式(p.359)、緩衝能(p.358)
化学数学生物
頻出テーマ濃度変化、硝酸、熱力学的性質、緩衝能、弱酸、自発性
本書の該当ページ濃度変化(p.308)、硝酸(p.480)、熱力学的性質(p.582)、緩衝能(p.358)
英語
頻出テーマアルミナ、結晶場理論、電極反応、ヘンダーソン・ハッセルバルヒ式、ハーバー法、平衡
本書の該当ページアルミナ(p.545)、結晶場理論(p.521)、電極反応(p.423)、ヘンダーソン・ハッセルバルヒ式(p.359)
茨城大学理学部
化学数学
頻出テーマ平衡濃度、金属、電極反応、ガルバニ電池、共通イオン効果、ルイス酸
本書の該当ページ平衡濃度(p.331)、金属(p.529)、電極反応(p.423)、ガルバニ電池(p.407)
化学生物物理
頻出テーマ酸の強さ、熱力学第2法則 second law of thermodynamics、pH、酸素、熱力学、平衡定数
本書の該当ページ酸の強さ(p.322)、熱力学第2法則 second law of thermodynamics(p.393)、pH(p.326)、酸素(p.445)
電気通信大学情報理工学域
数学
頻出テーマ熱力学第2法則 second law of thermodynamics、燃料電池、熱力学、イオン性、平衡定数、ネルンストの式
本書の該当ページ熱力学第2法則 second law of thermodynamics(p.393)、燃料電池(p.425)、熱力学(p.388)、イオン性(p.441)
化学
頻出テーマハーバー法、初期濃度、標準モルエントロピー、アミン、鉛蓄電池、遷移金属
本書の該当ページハーバー法(p.311)、初期濃度(p.332)、標準モルエントロピー(p.392)、アミン(p.567)
※志望校の最新の募集要項と過去問は必ずご自身でご確認ください。
使い方
本書の使い方は、まず第13章~第17章を通読して、各単元の理論体系を把握することから始めます。その際、文中に出てくる式の導出過程や具体例を自分で計算して確認することが重要です。
次に、対象大学の過去問で酸解離定数・活性化エネルギー・エントロピーなど、本書で学んだ概念に関する問題を抽出して解きます。過去問で詰まった箇所を本書に戻って読み直す往復を繰り返すことで、理論と問題が結びつきます。第18章~第20章は、受験する大学の出題範囲に応じて選別して学習すればよいでしょう。
編入試験でよく問われる論点から入るなら、次の順で読むのが効率的です。
- p.311 第13章 化学平衡「ハーバー法」がここで扱われています
- p.322 第14章 酸と塩基「酸の強さ」がここで扱われています
- p.351 第15章 酸塩基平衡と溶解度平衡「中和反応」がここで扱われています
- p.388 第16章 熱力学:エントロピー、自由エネルギーと平衡
- p.408 第17章 電気化学
- p.452 第18章 水素、酸素、および水「過酸化水素」がここで扱われています
- p.489 第19章 主族元素:非金属「ハロゲン」がここで扱われています
- p.495 第20章 遷移元素と配位化合物
注意点
本書は原著が欧米の大学教科書であり、日本の編入試験で出題される有機反応(ニトロ化など)や構造式の描き方については、補足教材が必要な場合があります。特に有機化学の反応メカニズムを強化したい場合は、上巻や別の参考書と組み合わせてください。
もう一つの注意点として、ページ数が多く(下巻だけで520ページ以上)、全範囲を完全に理解しようとするとスケジュール圧迫につながる可能性があります。受験する大学の過去問で頻出の章(化学平衡、酸塩基、反応速度)に学習時間を集中させ、出題実績の薄い章は概要理解で十分です。




