大学院へのミクロ経済学講義
編入試験のミクロ経済学では、需要曲線や市場均衡といった概念的な理解だけでなく、ラグランジェ乗数法などを使った数学的な導出を求める大学が増えています。本書は、経済学の理論を数学的に厳密に解説することで、この両面からの対策を可能にします。
この本の位置づけ
本書は、4年制大学から編入を目指す学生や、既に経済学の基礎を一通り学んだ受験生向けです。単なる暗記ではなく、理論の「なぜそうなるのか」を数式で理解したい方に適しています。
一般的なミクロ経済学の教科書と異なり、本書は最適化問題の数学的解法(第3章 p.49)を重視し、その後で消費者行動(第4章 p.73)や生産者行動(第5章 p.81)へ進む構成になっています。つまり、計算手法を先に習得してから経済学の各トピックに応用する学習フローになっているため、数学が得意な受験生ほど活用しやすい一冊です。
いつどのタイミングの編入受験生におすすめか
遅くとも編入試験の8~10ヶ月前には手に取るべき参考書です。線型代数や微分法の基礎(第1~2章)から始まるため、数学の復習に時間がかかる場合は、さらに早めの導入が有効です。
逆に試験3~4ヶ月前からの導入では、数学部分の習得に時間を取られすぎて、応用分野(独占市場や産業組織論など)まで到達しにくくなります。また導入が遅れると、過去問で出題される複雑な計算問題に対応する余裕がなくなるため注意が必要です。
ターゲット大学と対策できるテーマ
過去問の出題傾向を分析し、本書の内容が実際の出題範囲と重なる大学・学部を抽出しました。「頻出テーマ」はその学部の過去問で繰り返し問われている論点のうち、本書で扱っているものです。
数学経済学
頻出テーマヘッセ行列、最適生産量、労働供給関数、2階導関数、2階偏導関数、べき関数
本書の該当ページヘッセ行列(p.51)、最適生産量(p.170)、労働供給関数(p.76)、2階導関数(p.165)
経済学
頻出テーマ最適化問題、ラーナーの独占度、労働供給関数、平均可変費用、予算制約、ラグランジェ乗数法
本書の該当ページ最適化問題(p.54)、ラーナーの独占度(p.116)、労働供給関数(p.76)、平均可変費用(p.89)
経済学数学
頻出テーマ同質財市場、最適生産量、ラーナーの独占度、偏導関数、競争均衡、予算制約
本書の該当ページ同質財市場(p.128)、最適生産量(p.170)、ラーナーの独占度(p.116)、偏導関数(p.38)
経済学
頻出テーマ労働供給関数、財需要、平均可変費用、予算制約、ラグランジェ乗数法、ワルラス法則
本書の該当ページ労働供給関数(p.76)、財需要(p.158)、平均可変費用(p.89)、予算制約(p.65)
新潟大学経済科学部
経済学
頻出テーマ最適生産、予算制約、要素需要、ラグランジェ乗数法、費用関数、利潤
本書の該当ページ最適生産(p.170)、予算制約(p.65)、要素需要(p.81)、ラグランジェ乗数法(p.54)
経済学
頻出テーマ最適生産量、マーシャル需要関数、競争均衡、予算制約、保険、費用関数
本書の該当ページ最適生産量(p.170)、マーシャル需要関数(p.73)、競争均衡(p.105)、予算制約(p.65)
経済学
頻出テーマ取引量、平均可変費用、予算制約、競争均衡、利潤、利潤最大化
本書の該当ページ取引量(p.107)、平均可変費用(p.89)、予算制約(p.65)、競争均衡(p.105)
経済学経営学
頻出テーマ負値、産業組織論、競争均衡、分散、競争市場、消費者余剰
本書の該当ページ負値(p.21)、産業組織論(p.128)、競争均衡(p.105)、分散(p.170)
経済学
頻出テーマ予算制約、要素需要関数、要素需要、平均可変費用、費用関数、クールノー均衡
本書の該当ページ予算制約(p.65)、要素需要関数(p.81)、要素需要(p.81)、平均可変費用(p.89)
英語小論文経済学
頻出テーマ予算制約、ラグランジェ乗数法、費用関数、最適化、財市場、消費者余剰
本書の該当ページ予算制約(p.65)、ラグランジェ乗数法(p.54)、費用関数(p.82)、最適化(p.54)
広島大学経済学部
経済学
頻出テーマべき関数、ラグランジェ乗数法、分散、最適化、利潤最大化、余因数
本書の該当ページべき関数(p.33)、ラグランジェ乗数法(p.54)、分散(p.170)、最適化(p.54)
※志望校の最新の募集要項と過去問は必ずご自身でご確認ください。
使い方
第1~3章は、この本を読み進める前提となる数学知識の確認に使ってください。自分がすでに習得している部分は流し読みしてよいでしょう。第4章以降の各トピック(消費者行動、生産者行動、市場形態など)は、教科書的に順序通り進む必要があります。
同時に、志望大学の過去問を手元に用意し、各章を読了するたびに「この単元はどの問題で出題されているか」を確認する習慣をつけてください。特に価格弾力性(第4章)、市場均衡(第6章 p.101)、独占市場での利潤最大化(第7章 p.116)は頻出分野なので、過去問の該当問題を解きながら本書の説明と照らし合わせるとより理解が深まります。
本書で理論を理解した後、過去問で実際の出題形式に慣れるという往復を心がけましょう。特にナッシュ均衡やインセンティブ設計など、テーマによっては本書の記述だけでは足りないケースもあるため、不足分は志望大学に特化した参考書や講義ノートで補うことをお勧めします。
編入試験でよく問われる論点から入るなら、次の順で読むのが効率的です。
- p.8 第1章 線型代数の基礎「列ベクトル」がここで扱われています
- p.25 第2章 微分法の基礎「平均変化率」がここで扱われています
- p.49 第3章 最適化問題「2階偏導関数」がここで扱われています
- p.73 第4章 消費者行動「マーシャル需要関数」がここで扱われています
- p.81 第5章 生産者行動「要素需要関数」がここで扱われています
- p.101 第6章 完全競争市場「ワルラス法則」がここで扱われています
- p.116 第7章 供給独占市場「ラーナーの独占度」がここで扱われています
- p.139 第8章 産業組織論の基礎「パラメータ」がここで扱われています
注意点
本書は高度な数学的アプローチを採用しているため、「計算よりもグラフや直感的な理解を重視する大学」の過去問には、本書の内容がやや過剰である可能性があります。志望大学の過去問をあらかじめ確認し、数式による導出問題がどの程度出題されているかを把握した上で、この本への投資判断をしてください。
また、本書は第8章(産業組織論)のページ数が限定的(p.139以降)であるため、情報の非対称性やモラル・ハザードなど、この分野の問題が頻出する志望大学の場合は、別途専門書や問題集での補強が必要になる可能性があります。本書をスタートラインと考え、足りない部分を他の教材で埋める柔軟さを持つことが重要です。




