マクマリー有機化学 中 McMurry John,伊東 [ショウ] ,児玉 三明
有機化学の編入試験では、反応機構の理解が得点の分かれ目になります。特に芳香族化合物や官能基ごとの反応パターンは、暗記だけでは対応できない複雑な問題が出題されます。本書は、構造式と反応の因果関係を段階的に解説することで、受験生が「なぜこの反応が起きるのか」を理解する力を養えます。
この本の位置づけ
本書は、高校化学から大学の講義レベルへ段階的に進む受験生向けの参考書です。単なる反応式の羅列ではなく、電子の動きや中間体の形成プロセスに重点を置いており、編入試験で求められる「機構を説明する」レベルの理解に対応しています。
市販の簡潔な有機化学参考書と比べると、本書は各反応について複数ページを使って掘り下げています。そのため、限られた試験範囲だけを効率的に学びたい受験生よりも、原理をしっかり理解した上で応用問題に対応したい受験生に適しています。
いつどのタイミングの編入受験生におすすめか
導入時期は、大学の講義で有機化学の基礎(アルカン、アルケンの基本反応)を終えた時点が目安です。新潟大学や関西大学の出題から判断すると、遅くとも編入試験6ヶ月前には手元に置いておくことをお勧めします。
この本を早期に導入しすぎると、基礎知識がないまま複雑な反応機構に取り組むことになり、かえって混乱する可能性があります。逆に試験1〜2ヶ月前に導入すると、各章の内容を掘り下げる時間が不足し、過去問演習との往復に十分な期間を確保できません。
ターゲット大学と対策できるテーマ
オンライン編入学院が保有する過去問データベースを分析し、本書の内容が実際の出題範囲と重なる大学・学部を抽出しました。「頻出テーマ」はその学部の過去問で繰り返し問われている論点のうち、本書で扱っているものです。
新潟大学理学部
化学
頻出テーマ共鳴安定化、求核付加、芳香族求電子置換反応、ニトロ化、エネルギー準位、求核付加反応
本書の該当ページ求核付加(p.706)、求核付加反応(p.697)、中間体(p.621)
※志望校の最新の募集要項と過去問は必ずご自身でご確認ください。
使い方
第15章(芳香族化合物)から第22章(カルボニル化合物のα置換反応)まで、過去問に出題されている論点が系統的に配置されています。学習順序としては、芳香族化合物の基本構造と安定性を理解してから、第16章の反応へ進むことで理解が深まります。
この本を読む際は、図やスキーム(反応図)に付属している電子の流れを指でなぞりながら進めることが有効です。特に求核付加反応や芳香族求電子置換反応など、矢印で表現されている機構は「なぜこう動くのか」を自分の言葉で説明できるようになるまで繰り返してください。
過去問との往復方法としては、出題された反応が本書のどの章に該当するかを確認し、該当箇所を読み直してから再度問題に取り組む学習サイクルが効果的です。特にエステル加水分解やエポキシド開環など、中間体の形成が問われやすい反応については、過去問で出題された具体例と本書の解説を比較することで応用力が高まります。
編入試験でよく問われる論点から入るなら、次の順で読むのが効率的です。
- p.520 第15章 芳香族化合物「アントラセン」がここで扱われています
- p.577 第16章 芳香族化合物の化学反応「芳香族求核置換」がここで扱われています
- p.609 第17章 アルコール、フェノール、エーテル「フェノキシドイオン」がここで扱われています
- p.675 第18章 エーテルとスルフィド
- p.723 第19章 アルデヒドとケトン「Wolff-Kishner反応」がここで扱われています
- p.775 第20章 カルボン酸「カルボキシ化」がここで扱われています
- p.833 第21章 カルボン酸誘導体「逐次成長ポリマー」がここで扱われています
- p.869 第22章 カルボニル化合物のα置換反応「マロン酸エステル合成」がここで扱われています
注意点
本書は海外の有機化学テキストの邦訳です。編入試験で問われる範囲はほぼ網羅していますが、日本の大学教育特有の出題形式(特に新潟大学や関西大学の過去問)には異なるアプローチもあります。本書の解説を絶対視するのではなく、過去問の解答例との相違がないか確認するようにしてください。
本書の厚さと範囲の広さから、全てを精読しようとすると時間がかかりすぎます。編入試験では第15章から第22章の対応する部分に学習リソースを集中させ、その他の章は参考程度にとどめることをお勧めします。
また、本書は反応機構の理論的背景には強いですが、有機合成の実際的な条件(触媒、温度、溶媒など)についての記載は限定的です。過去問で合成条件が問われた場合は、別途資料で補う必要があります。







