ベクトル解析 編入で使うならどこまで|演習書との違いと4章の進め方
編入試験の数学で、微分積分と線形代数までは対策したものの、ベクトル解析で止まる受験生は多くいます。勾配・発散・回転といった記号が急に出てきて、何を計算しているのかが見えなくなるためです。
本書は、その入口から線積分・面積分の応用までを、講義の形で一冊にまとめた本です。この記事では、編入受験生から見た本書の位置づけと、同じ著者が出している演習書とどちらを先に買うべきかを整理します。
この本の位置づけ
本書は問題集ではなく、読んで理解するための講義本です。著者はまえがきで、ベクトル解析をベクトルと微分積分を融合させた分野と位置づけ、力学・電磁気学・流体力学といった物理の現象を理論的に理解するために欠かせないものだと説明しています。逆にいえば、これらの科目が専門で出る大学を志望するなら、数学の一単元という以上の意味を持ちます。
特徴的なのは、著者がこの分野を富士山の登山にたとえている点です。初めは易しいのに中腹から急に難しくなり、結局は途中で諦めてしまう。そうならないように、というのが本書の作りの前提になっています。全体は4章で、各章がさらに10ページから20ページ程度のテーマに分けられているため、一度に読む量が決まっているのが独学向きです。
もう一つ、面積分の扱いに著者の判断が入っています。負の面要素を認める専門書が多いなかで、本書は面要素をすべて正とする原則で面積分の理論を組み直したと明記しています。面積分でつまずいた経験がある人は、この違いが理解に効きます。
扱う範囲は、方向余弦や共面ベクトル、スカラー三重積とベクトル三重積から始まり、ベクトル値関数、接線ベクトル、主法線ベクトル、従法線ベクトル、曲率と捩率、フレネ・セレーの公式、スカラー場と等位曲面へと進みます。編入試験でどこまで問われるかは大学によって差が大きいので、この記事の「ターゲット大学と対策できるテーマ」で、志望校の頻出テーマと重なる範囲を先に確かめてください。
いつどのタイミングの編入受験生におすすめか
微分積分と線形代数がひと通り終わった段階で入るのが基本です。偏微分と重積分の計算に手が止まる状態でベクトル解析へ進むと、記号の意味の話と計算の話が同時に押し寄せて、結局どちらも身に付きません。
導入が早すぎるかどうかより、順序を守れているかのほうが重要です。逆に遅すぎると、線積分・面積分まで到達しないまま試験を迎えます。この分野は後半に進むほど計算量が増えるので、試験直前に始めて間に合う単元ではありません。
そもそもベクトル解析まで必要かどうかは、志望校の出題範囲で決まります。編入数学の出題を微分積分と線形代数に限っている大学も多く、その場合に本書へ時間を投じるのは得策ではありません。募集要項の出題範囲と過去問を先に確認し、必要だと分かってから取りかかってください。電磁気学や流体力学が専門科目にある場合は、数学としての必要性とは別に、専門の前提として早めに入る価値があります。
高専からの編入と大学からの編入でも、置きどころが変わります。高専では在学中の授業でベクトル解析に触れる課程が多く、その場合は授業の進度に合わせて本書を副読本として使えます。大学の理系学部から編入する場合は、履修していない科目である可能性があるので、独学で1周する時間をあらかじめ計画に組み込んでください。
ベクトル解析まで手を広げる必要があるかどうかは、志望校の出題範囲で決まります。専門科目や英語に回すべき時間を数学に使ってしまう受験生は少なくありません。志望校と現在の進み具合をうかがったうえで、どの単元にどれだけ時間を割くかを整理します。
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ターゲット大学と対策できるテーマ
過去問の出題傾向を分析し、本書の内容が実際の出題範囲と重なる大学・学部を抽出しました。「頻出テーマ」はその学部の過去問で繰り返し問われている論点のうち、本書で扱っているものです。
英語数学
頻出テーマスカラー3重積、1階線形微分方程式、ノルム、1階線形、定常電流、xy平面
本書の該当ページスカラー3重積(p.42)、1階線形微分方程式(p.101)、ノルム(p.136)、1階線形(p.101)
東京都立大学システムデザイン学部
数学
頻出テーマスカラー3重積、平行六面体の体積、平行六面体、ストークスの定理、線積分
本書の該当ページスカラー3重積(p.42)、平行六面体の体積(p.42)、平行六面体(p.42)、ストークスの定理(p.235)
物理数学
頻出テーマスカラー3重積、1階線形微分方程式、定常電流、法線ベクトル
本書の該当ページスカラー3重積(p.42)、1階線形微分方程式(p.101)、定常電流(p.175)、法線ベクトル(p.112)
※志望校の最新の募集要項と過去問は必ずご自身でご確認ください。
この本の使い方
著者は、まず1回流し読みすることを勧めています。難しい公式の証明は初めは飛ばしてよい、とはっきり書かれています。1周目で全体の地図を作り、2周目で計算を自分の手で追う、という二段構えが本書の想定です。
各章が10ページから20ページのテーマに分かれているので、1日1テーマのように区切って進められます。独学で止まりやすい分野なので、区切りを決めて毎日触るほうが、まとまった時間を月に数回取るより結果が出ます。
手を動かす量が足りないと感じたら、同じ著者の演習書に移ってください。理論書と演習書は同じ4章構成で対応しているので、詰まった章だけを行き来できます。本記事の「本書の該当ページ」に、頻出テーマがどのページで扱われているかを載せていますので、過去問で分からない論点が出たときはそこから逆引きするのが速い使い方です。
物理と並行して使うのも有効です。電磁気学で発散や回転が出てきた時点で本書の該当テーマに戻ると、数学の記号が物理の現象と結び付いて定着します。
手が止まったときに、どこまで戻るかも決めておいてください。計算そのものが進まないなら微分積分へ、行列やベクトルの扱いで詰まるなら線形代数へ戻ります。ベクトル解析は前の単元の上に積む分野なので、この本の中だけで解決しようとすると時間を失います。同じシリーズで線形代数の巻も出ているので、戻り先として押さえておくと復習が速くなります。
注意点
本書は講義本なので、これだけでは演習量が足りません。読んで分かった気になったまま試験に臨むと、計算の途中で手が止まります。同じ著者の演習書か、編入試験の過去問集を必ず併走させてください。
また、シリーズ全体が大学の講義の単位取得を意識した作りで、編入試験に特化した本ではありません。編入試験特有の出題形式、たとえば複数単元をまたぐ問題への対応は、過去問演習で別に補う必要があります。
最後に、繰り返しになりますが、志望校でベクトル解析が出題範囲に入っているかを先に確かめてください。出題範囲外の単元に時間を使うのは、編入試験でもっとも避けたい失敗です。
価格の面も一言だけ触れておきます。理論書と演習書を両方そろえると、それなりの金額になります。志望校の出題範囲を確認しないまま両方を買うより、まず理論書を1冊終えて、演習量が足りないと感じた時点で演習書を足すほうが無駄がありません。
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※調査対象期間 2024/4〜2026/3 TPCマーケティングリサーチ(株)調べ
※調査方法: 企業担当者へのヒアリング、企業発表情報、デスクリサーチ/調査対象: 大学編入試験対策の予備校・個別指導塾(医学部・看護学部系除く)/調査項目: 2025年度と2026年度の大学編入試験合格者数
オンライン編入学院 公式サイト
オンライン編入学院は、編入数学の単元ごとの進め方から、専門科目との時間配分まで指導しています。年度ごとの合格状況は合格者速報で公開しています。2027年度入学の合格には電気通信大学が含まれます。
理論を1周したあと、演習書に進むのか、過去問に移るのかは、試験までの残り時間で変わります。現在の状況をうかがったうえで、次に開く1冊と過去問に入る時期を一緒に決めます。
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