化学熱力学 編入でエントロピーが分からない人へ|基本概念に紙数を割く本
化学熱力学でつまずく受験生は、計算ができないのではなく、何を計算しているのかが分からない状態に陥っています。エントロピーという量が何を表しているのかが腑に落ちないまま、公式だけが積み上がっていくためです。
本書は、その状態を正面から扱う教科書です。この記事では、本書の方針と、編入対策での使いどころを整理します。
この本の位置づけ
まえがきの書き出しが、この本の性格を表しています。著者自身が、化学熱力学は大変難しい学問であり、大学1年生のときに半年、3年生のときに1年の講義を受けたがよく理解できなかった、と書いています。学生に講義する立場になって悪戦苦闘した結果、初めて分かったような気になった、とも述べています。
そのうえで、難しさの構造が分析されています。講義は「熱」や「温度」という日常の言葉から始まるが、次第に準静的過程、可逆過程、不可逆過程という抽象的な概念が導入され、エントロピーという不可解な量の登場によって難解さが頂点に達する。よく考えると「熱」や「温度」という言葉自体も、日常的な感覚に根ざしているだけに意味があいまいだ、という指摘です。
この分析にもとづいて、本書は基本概念の説明に十分な紙数を費やす方針をとっています。さらに、通常の本と異なり、冒頭から原子・分子の存在を前提にして「熱」「温度」「エントロピー」の意味を考える構成になっています。
編入対策での位置づけは、熱力学でつまずいた受験生の立て直しです。演習書ではないので、手を動かす量は別に確保してください。
いつどのタイミングの編入受験生におすすめか
物理化学や熱力学の講義を受けたが理解が定着していない、という段階で開く1冊です。教科書を読んでも意味が入ってこないときの、迂回路として機能します。
編入試験の準備では、専門科目の対策の前半に置いてください。概念の理解は後半に回すほど効率が落ちます。演習の段階で「意味が分からないまま解いている」状態になると、少し設定を変えられたときに対応できません。
逆に、熱力学の考え方がすでに入っていて、計算の練習が必要なだけなら、本書ではなく演習書を選んでください。
熱力学は、計算はできるのに意味が分からないまま進んでしまいやすい分野です。どこで止まっているのかで、開くべき本が変わります。現在の状況をうかがったうえで整理します。
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ターゲット大学と対策できるテーマ
過去問の出題傾向を分析し、本書の内容が実際の出題範囲と重なる大学・学部を抽出しました。「頻出テーマ」はその学部の過去問で繰り返し問われている論点のうち、本書で扱っているものです。
香川大学医学部
物理
頻出テーマ分子運動論、気体分子運動論、状態量、圧平衡定数、分子運動、標準電極電位
本書の該当ページ分子運動論(p.13)、気体分子運動論(p.13)、状態量(p.5)、圧平衡定数(p.114)
東京農工大学工学部
数学
頻出テーマ圧平衡定数、状態量、熱化学、エネルギー変化、熱機関、カルノーサイクル
本書の該当ページ圧平衡定数(p.114)、状態量(p.5)、熱化学(p.38)、エネルギー変化(p.114)
高知大学医学部
数学
頻出テーマ微積分、可逆熱機関、定圧変化、気体分子運動論、アンモニア合成、反応熱
本書の該当ページ微積分(p.175)、可逆熱機関(p.70)、定圧変化(p.38)、気体分子運動論(p.13)
英語
頻出テーマギブズエネルギー変化、熱機関、エネルギー変化、カルノーサイクル、可逆過程、エントロピー変化
本書の該当ページギブズエネルギー変化(p.114)、熱機関(p.70)、エネルギー変化(p.114)、カルノーサイクル(p.61)
電気通信大学情報理工学域
数学
頻出テーマ反応熱、熱化学、標準電極電位、カルノーサイクル、可逆過程、エントロピー変化
本書の該当ページ反応熱(p.48)、熱化学(p.38)、標準電極電位(p.157)、カルノーサイクル(p.61)
化学物理
頻出テーマ熱機関の効率、熱化学、可逆過程、カルノーサイクル、エントロピー変化、熱容量
本書の該当ページ熱機関の効率(p.70)、熱化学(p.38)、可逆過程(p.67)、カルノーサイクル(p.61)
物理
頻出テーマ分子運動論、可逆熱機関、定圧変化、気体分子運動論、熱機関、熱容量
本書の該当ページ分子運動論(p.13)、可逆熱機関(p.70)、定圧変化(p.38)、気体分子運動論(p.13)
大阪公立大学工学部
物理化学
頻出テーマアンモニア合成、熱化学、エネルギー変化、熱機関、熱容量、内部エネルギー
本書の該当ページアンモニア合成(p.123)、熱化学(p.38)、エネルギー変化(p.114)、熱機関(p.70)
物理化学数学
頻出テーマ定圧変化、反応熱、電極電位、エントロピー変化、化学ポテンシャル、内部エネルギー
本書の該当ページ定圧変化(p.38)、反応熱(p.48)、電極電位(p.157)、エントロピー変化(p.83)
京都工芸繊維大学工芸科学部
化学物理
頻出テーマ気体分子運動論、アンモニア合成、熱化学、ラウールの法則、エントロピー変化、内部エネルギー
本書の該当ページ気体分子運動論(p.13)、アンモニア合成(p.123)、熱化学(p.38)、ラウールの法則(p.134)
※志望校の最新の募集要項と過去問は必ずご自身でご確認ください。
この本の使い方
基本概念の章を飛ばさないでください。本書の価値はそこにあります。準静的過程や可逆過程の説明は、読み流さずに、自分の言葉で言い換えられるかを確かめながら進めてください。
原子・分子から意味を考える構成なので、統計的な見方と熱力学の関係を意識しながら読むと、理解が早くなります。
読んだ範囲は、必ず演習書で手を動かしてください。概念が入っていても、計算の手順は別に練習が必要です。
この記事の「ターゲット大学と対策できるテーマ」で、志望校の頻出テーマと本書の対応を確かめられます。出題される範囲から読み始めてください。
注意点
教科書であって問題集ではありません。演習量は別に確保してください。
また、概念の説明に紙数を割いているぶん、範囲を短時間で通す用途には向きません。直前期に開く本ではありません。
化学熱力学と物理の熱力学は、扱う対象と用語の使い方が一部異なります。志望校の出題がどちらの立場に近いかを過去問で確かめ、必要なら物理寄りの教材も併用してください。
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※調査対象期間 2024/4〜2026/3 TPCマーケティングリサーチ(株)調べ
※調査方法: 企業担当者へのヒアリング、企業発表情報、デスクリサーチ/調査対象: 大学編入試験対策の予備校・個別指導塾(医学部・看護学部系除く)/調査項目: 2025年度と2026年度の大学編入試験合格者数
オンライン編入学院 公式サイト
オンライン編入学院は、概念の理解でつまずいたときの立て直し方から指導しています。年度ごとの合格状況は合格者速報で公開しています。2027年度入学の合格には群馬大学理工学部が含まれます。
概念が入ったあとは、演習で手を動かす段階です。現在の状況をうかがって、次に使う教材を一緒に決めます。
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