無機化学演習 編入で使うか迷ったら|大学院入試が題材という前提
無機化学は、範囲の広さのわりに手を動かす教材が少ない分野です。教科書を読んでも問題が解けるようにならない、という声が多いのはそのためです。
本書はその演習を埋める1冊ですが、題材が大学院入試問題であるという前提があります。この記事では、編入受験生がこの本を使うべきかどうかの判断基準から整理します。
この本の位置づけ
はじめにで、本書の立場がはっきり述べられています。無機化学は周期表のほぼすべての元素を対象にするため範囲が広く、勉強しづらい。では何が重要なのか。そのヒントは大学院の入学試験問題にある、という考え方です。学部で学んだ無機化学のうち、理解しておかなければならない部分が問われるのが大学院入試だから、という理屈です。実際、全国の主だった大学院で出題された問題を集め、分類し、解答を付けたのが本書です。
構成は6章で、原子構造、分子構造、固体構造、酸と塩基、酸化と還元、遷移金属の化学に分かれています。各章に基礎となる例題があり、解答と詳しい解説が付きます。例題を理解すればその章がほぼ押さえられるように作られており、そのうえで例題の約3倍の数の問題が用意されています。著者はこの反復を、スポーツの基本動作の練習にたとえています。
編入受験生にとっての位置づけは、はっきりさせておく必要があります。本書は編入試験用ではありません。題材が大学院入試である以上、編入試験より高い水準の問題が含まれます。無機化学の出題が重い大学を志望する場合、あるいは編入後の院進まで視野に入れている場合には、その水準まで踏み込む価値があります。そうでない場合は、もっと軽い教材で足ります。
判断材料は志望校の過去問です。この記事の「ターゲット大学と対策できるテーマ」で、本書の内容と重なる大学・学部と頻出テーマを確かめてください。
いつどのタイミングの編入受験生におすすめか
無機化学の教科書を1冊読み終えたあとに入る本です。用語と概念が入っていない状態で演習から始めると、解説を読むこと自体が学習になってしまい、時間あたりの進みが遅くなります。
編入試験の準備全体で見ると、これは後半の教材です。まず志望校の出題範囲を確かめ、必要な単元の理論を押さえ、そのうえで演習量を足す段階で開いてください。
逆に、直前期に本書を新しく買うのは勧めません。水準が高いぶん1問あたりの時間がかかり、残り時間を消費します。直前期は、志望校の過去問と、すでに解いた教材の復習に寄せてください。
無機化学にどこまで踏み込むかは、志望校の出題と、その先に院進を考えているかで変わります。過剰な演習は他科目の時間を削ります。志望校と現在の状況をうかがったうえで、必要な水準を整理します。
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ターゲット大学と対策できるテーマ
過去問の出題傾向を分析し、本書の内容が実際の出題範囲と重なる大学・学部を抽出しました。「頻出テーマ」はその学部の過去問で繰り返し問われている論点のうち、本書で扱っているものです。
東京農工大学工学部
数学
頻出テーマ酸解離定数、第一イオン化エネルギー、原子構造、軌道エネルギー、有効核電荷、原子半径
本書の該当ページ酸解離定数(p.85)、第一イオン化エネルギー(p.20)、原子構造(p.5)、軌道エネルギー(p.166)
お茶の水女子大学理学部
化学数学
頻出テーマ酸解離定数、主量子数、σ軌道、軌道エネルギー、原子半径、有効核電荷
本書の該当ページ酸解離定数(p.85)、主量子数(p.2)、σ軌道(p.35)、軌道エネルギー(p.166)
化学数学
頻出テーマ半径比、酸解離定数、軌道エネルギー準位、第一イオン化エネルギー、原子構造、解離定数
本書の該当ページ半径比(p.51)、酸解離定数(p.85)、軌道エネルギー準位(p.166)、第一イオン化エネルギー(p.20)
電気通信大学情報理工学域
数学
頻出テーマ主量子数、σ軌道、原子構造、軌道エネルギー、安定化エネルギー、電子親和力
本書の該当ページ主量子数(p.2)、σ軌道(p.35)、原子構造(p.5)、軌道エネルギー(p.166)
京都工芸繊維大学工芸科学部
化学
頻出テーマイオン半径比、格子定数、酸解離定数、第一イオン化エネルギー、原子半径、電子親和力
本書の該当ページイオン半径比(p.51)、格子定数(p.61)、酸解離定数(p.85)、第一イオン化エネルギー(p.20)
茨城大学理学部
化学数学物理
頻出テーマ塩化セシウム、格子定数、イオン半径比、電子数、分子構造、イオン半径
本書の該当ページ塩化セシウム(p.51)、格子定数(p.61)、イオン半径比(p.51)、電子数(p.26)
大阪公立大学工学部
化学
頻出テーマ酸解離定数、原子半径、遷移金属、有効核電荷、イオン半径、核電荷
本書の該当ページ酸解離定数(p.85)、原子半径(p.7)、遷移金属(p.121)、有効核電荷(p.6)
新潟大学理学部
化学物理
頻出テーマ電子親和力、標準電極電位、イオン半径、分子構造、結合次数、結合性軌道
本書の該当ページ電子親和力(p.13)、標準電極電位(p.113)、イオン半径(p.51)、分子構造(p.37)
※志望校の最新の募集要項と過去問は必ずご自身でご確認ください。
この本の使い方
各章の例題から始めてください。例題は、その章の要点を押さえるために選ばれており、解答と解説を読んで理解すれば章の骨格が入るように作られています。ここを飛ばして問題に進むと、解けない問題が並ぶだけになります。
例題のあとの問題は、著者の言葉を借りれば「適切な引き出しを開ける」練習です。どの考え方を使うかを自分で選ぶ段階なので、解けなかったときは、知識が足りなかったのか、選び方を間違えたのかを区別して記録してください。前者なら教科書へ、後者なら例題へ戻ります。
全章を等しくやる必要はありません。志望校の頻出テーマに当たる章から先に取りかかってください。この記事の「本書の該当ページ」で、テーマごとのページを確かめられます。
物理化学や有機化学と並行して進める場合は、章単位で交互に回すと、どれも中途半端になりにくくなります。
注意点
繰り返しになりますが、題材は大学院入試問題です。編入試験の水準を超える問題が含まれるので、全問を解けるようにする必要はありません。解けない問題があること自体は、この本では想定内です。
また、理論の解説書ではありません。例題の解説は詳しいものの、無機化学の体系を最初から説明する本ではないので、教科書を別に持っておいてください。
最後に、時間配分の問題です。無機化学は範囲が広く、やろうと思えばいくらでも時間を使えます。志望校の配点と出題比率を確かめ、かける時間の上限を先に決めてから取りかかってください。
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※調査方法: 企業担当者へのヒアリング、企業発表情報、デスクリサーチ/調査対象: 大学編入試験対策の予備校・個別指導塾(医学部・看護学部系除く)/調査項目: 2025年度と2026年度の大学編入試験合格者数
オンライン編入学院 公式サイト
オンライン編入学院は、専門科目をどの水準までやるかの見きわめから指導しています。合格状況は年度ごとに合格者速報で公開しています。2027年度入学では群馬大学理工学部にも合格者が出ています。
演習の水準が決まったら、次は他の科目との配分です。現在の状況をうかがって、専門科目全体の進め方を一緒に整理します。
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