埼玉大学工学部の編入試験対策|倍率の推移・出題範囲・出願の実務
結論:埼玉大学工学部の編入試験はこんな試験
埼玉大学工学部の第3年次編入学試験は、試験科目が数学1科目と面接だけという、国立大学の工学部としてはきわめてシンプルな試験です。数学の出題範囲は微分積分学・線形代数・常微分方程式の3分野で、配点は300点。面接は得点化されず「合・否」の判定のみに使われます。英語の筆記試験も、TOEICなど外部試験のスコア提出も課されません。
ただし、受ける前に押さえておくべき条件が3つあります。1つめは、工学部の5学科すべてで募集しているわけではないこと。募集があるのは機械工学・システムデザイン学科、電気電子物理工学科、環境社会デザイン学科の3学科で、いずれも若干名です。2つめは、3学科の試験が同じ日・同じ時間割で行われるため、学科をまたいだ併願ができないこと。3つめは、学科によって倍率の水準がはっきり違うことです。
大学が公表している「埼玉大学3年次編入学試験実施状況」の公表されている各年度をたどると、工学部全体では受験者数÷合格者数の倍率が4.3倍〜7.0倍のレンジで動いています。一方、学科別に5年を合算すると機械工学・システムデザイン学科が8.8倍、電気電子物理工学科が4.8倍、環境社会デザイン学科が3.2倍と、2倍以上の開きがあります。「どの学科に出願するか」が、この試験で最初にして最大の意思決定です。
この記事では、埼玉大学が公表している募集要項と入試実施状況の原本、そして受験直後の方から寄せられたアンケートをもとに、倍率の実像・出題範囲・出願手続の実務・面接の中身までを整理します。
出願資格は大学ごとに条件が細かく分かれます。短大・高専・専門学校・大学在学中で扱いが変わり、英語資格が要る大学もあります。自分が出願できるかどうかは、条件を1つずつ突き合わせないと分かりません。
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いまどの年度を見ればよいか
重要2027年4月入学(令和9年度)の選抜はすでに終了しています。試験日は2026年7月4日(土)、合格発表は2026年7月14日でした。これから受験を検討する方の対象は2028年4月入学(令和10年度)になります。
令和10年度の募集要項はまだ公表されていません(2026年8月6日時点)。埼玉大学工学部の第3年次編入学の要項は例年5月ごろに大学公式サイトの「学生募集要項」ページで公表されており、直近の令和9年度版は2026年5月に公表されています。日程の目安は次のとおりです。
- 要項の公表: 例年5月ごろ(大学公式サイトの入試情報 → 学生募集要項)
- インターネット出願の登録開始: 出願開始の約1週間前(令和9年度は6月1日から)
- 出願期間: 6月上旬の約1週間(令和8年度は6月2日〜6日、令和9年度は6月8日〜12日)
- 試験日: 6月末〜7月上旬の土曜日(令和8年度は6月28日、令和9年度は7月4日)
- 合格発表: 試験の約10日後(令和9年度は7月14日)
- 入学手続: 12月中旬(令和8年度は12月11日、令和9年度は12月17日の予定)
上の日付はいずれも過去2年度の実績です。令和10年度の日程は要項の公表を待って確認してください。以下の記事本文で「最新の要項」と書いている部分は、断りがない限り令和9年度(2027年4月入学)の募集要項を指します。
試験概要(令和9年度要項にもとづく)
| 募集学科・人員 | 機械工学・システムデザイン学科/電気電子物理工学科/環境社会デザイン学科 いずれも若干名 ※工学部は5学科(上記3学科+情報工学科・応用化学科)で構成されますが、編入の募集学科表に載るのはこの3学科のみです |
|---|---|
| 試験日 | 2026年7月4日(土)※3学科共通 |
| 出願期間 | 2026年6月8日(月)〜6月12日(金)期間内郵送必着(大学への持参は不可) インターネット出願の登録・検定料の納入は6月1日から可能 |
| 試験科目・配点 | 数学 300点(10:00〜11:30/出題範囲は微分積分学・線形代数・常微分方程式) 面接(13:30〜/得点化せず「合・否」の判定のみ) |
| 合否の決め方 | あらかじめ決められた配点により学力検査の成績で順位を付けて合否を決定。面接が一定の評価基準に達しない者は不合格 |
| 提出書類 | 編入学志願票(インターネット出願)/成績証明書/卒業(見込)・修了(見込)証明書/志望の理由(大学所定様式・本人記載) ※外国人留学生は在留カードの写し等、外国語の証明書は日本語訳を追加 |
| 検定料 | 30,000円(クレジットカード・ネットバンキング・コンビニ・ペイジー対応銀行ATM) |
| 合格発表 | 2026年7月14日(火)14:00〜。インターネット出願サイトのマイページで合格通知書を交付。掲示による発表は行わず、不合格者への通知もありません |
| 入学手続 | 2026年12月17日(木)9:00〜17:00(予定)。入学料282,000円(予定額) |
| 編入学時期・年次 | 2027年4月・第3年次編入。在学は6年を超えられません(休学期間を除く) |
| 単位認定 | 出身学校での修得単位に応じて、学科が定めた認定基準により認定 |
出典: 令和9年度 埼玉大学工学部 第3年次編入学学生募集要項(埼玉大学公式サイト)。日程・金額・様式は年度ごとに変わります。出願前に必ず最新の要項で確認してください。
情報工学科・応用化学科は編入の募集がない
要項の「入学者受入れの方針」には、工学部が機械工学・システムデザイン学科、電気電子物理工学科、情報工学科、応用化学科、環境社会デザイン学科の5学科で構成されると明記されています。一方、その次のページにある「募集学科及び人員」の表に載るのは3学科だけです。令和8年度(2026年4月入学)の要項でも同じ3学科でした。情報工学科・応用化学科への3年次編入を考えている場合は、募集学科の表がその年度どうなっているかを最初に確認してください。要項の他のページや大学案内には5学科すべての名前が出てくるため、学科名がどこかに載っていることは募集の根拠になりません。
科目と日程が分かっても、いまの学習量で間に合うか、何を先にやるかは人によって変わります。併願先との重なりも、組み合わせ次第で負担が大きく変わります。
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倍率:大学公表の実施状況から
埼玉大学は毎年度「埼玉大学3年次編入学試験実施状況」というPDFを公表しており、募集人員・志願者数・受験者数・合格者数・入学手続者数・入学辞退者数・入学者数の7項目が学部別に載っています。この表には教養学部・経済学部・工学部が縦に並んでおり、工学部の欄は3学科の内訳行と、その下の「計」行で構成されています。以下の学部全体の数字は、すべてこの「計」行から取ったものです。
倍率は受験者数÷合格者数で計算しています。志願したが受験しなかった人が毎年10〜18名いるため、実際に会場で競う相手の数に近いのは受験者数のほうです。参考として志願者数÷合格者数も併記します。
| 入学年度 | 志願者 | 受験者 | 合格者 | 入学者 | 受験倍率 | 志願倍率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2022年度 (令和4年度) | 102名 | 84名 | 12名 | 10名 | 7.0倍 | 8.5倍 |
| 2023年度 (令和5年度) | 86名 | 69名 | 16名 | 10名 | 4.3倍 | 5.4倍 |
| 2024年度 (令和6年度) | 73名 | 59名 | 13名 | 6名 | 4.5倍 | 5.6倍 |
| 2025年度 (令和7年度) | 73名 | 63名 | 14名 | 11名 | 4.5倍 | 5.2倍 |
| 2026年度 (令和8年度) | 83名 | 72名 | 12名 | 8名 | 6.0倍 | 6.9倍 |
| 5年合計 | 417名 | 347名 | 67名 | 45名 | 5.2倍 | 6.2倍 |
学部全体の水準はおおむね4〜7倍で、2023年度から2025年度は4.3〜4.5倍と安定していましたが、2026年度は6.0倍に上がりました。志願者数が73名から83名へ増えた一方で合格者が12名に絞られたためです。合格者数は5年間ずっと12〜16名で、志願者の増減にかかわらず一定の枠に収まっている点は覚えておく価値があります。
学科別の内訳:ここがいちばん差が出る
学部全体の数字は「埼玉大学工学部という選択肢の相場」を知るには役立ちますが、実際に出願するのは3学科のうちの1つです。同じPDFの内訳行から、学科別の推移を示します。
| 入学年度 | 機械工学・ システムデザイン | 電気電子物理工 | 環境社会デザイン |
|---|---|---|---|
| 2022年度 | 受験39/合格5 7.8倍 | 受験22/合格2 11.0倍 | 受験23/合格5 4.6倍 |
| 2023年度 | 受験27/合格7 3.9倍 | 受験20/合格3 6.7倍 | 受験22/合格6 3.7倍 |
| 2024年度 | 受験25/合格2 12.5倍 | 受験19/合格6 3.2倍 | 受験15/合格5 3.0倍 |
| 2025年度 | 受験25/合格2 12.5倍 | 受験24/合格7 3.4倍 | 受験14/合格5 2.8倍 |
| 2026年度 | 受験33/合格1 33.0倍 | 受験30/合格6 5.0倍 | 受験9/合格5 1.8倍 |
| 5年合計 | 受験149/合格17 8.8倍 | 受験115/合格24 4.8倍 | 受験83/合格26 3.2倍 |
上のバーは5年(2022〜2026年度入学)を合算した受験倍率です。単年の数字はこの下で解説するとおり大きく振れるため、学科の相場を比べる目的では合算値のほうが実態に近くなります。
読み取れることを3点にまとめます。
- 機械工学・システムデザイン学科は、合格者数の少なさが倍率を押し上げています。5年間の合格者は17名で、内訳は5名・7名・2名・2名・1名。2023年度は3.9倍と3学科で最も低かったのに、2026年度は33.0倍になりました。志願者・受験者の人数はどの年も25〜39名と大きくは変わっておらず、変動しているのは合格者数のほうです。合格者が1〜2名という年は、倍率という指標そのものが不安定になります。「毎年33倍の学科」ではなく「合格枠が年によって1名にも7名にもなる学科」と理解してください。
- 電気電子物理工学科は3〜5倍台で安定しています。2022年度こそ合格2名で11.0倍でしたが、その後4年は合格3〜7名で推移し、直近3年は3.2倍・3.4倍・5.0倍。志願者数は年々増えており(2022年度27名→2026年度35名)、2026年度はやや上昇しました。3学科の中では合格者数がいちばん多い学科です(5年で24名)。
- 環境社会デザイン学科は倍率が最も低く、しかも下がり続けています。4.6倍→3.7倍→3.0倍→2.8倍→1.8倍と5年連続で低下しました。合格者数が5〜6名で安定している一方、志願者数が2022年度の30名から2026年度は14名へと半減しているためです。ただし受験者9名という規模なので、その年に誰が受けたかで倍率が動きやすい点は考慮してください。
合格したうち実際に入学したのは3人に2人
実施状況PDFには入学手続者数・入学辞退者数・入学者数の列もあります。工学部では5年間で合格67名に対し入学者45名。合格しても入学手続をとらなかった人が22名いる計算です。埼玉大学工学部は7月に合否が出て12月に入学手続という日程なので、秋以降の他大学の試験を受けたうえで進路を選んでいる受験者が一定数いると考えられます。受験する側から見れば、この試験は「早い時期に1つ確保して、その後も動ける」性格の入試だといえます(詳しくは併願の節で扱います)。
出典: 埼玉大学「令和4年度〜令和8年度 埼玉大学3年次編入学試験実施状況」(大学公式サイトの年度別入試結果ページ)および「令和8年度・令和9年度 埼玉大学工学部第3年次編入学学生募集要項」巻末の「過去の実施状況」。倍率は編入総研編集部が計算しました。実施状況PDFは教養学部・経済学部・工学部が1枚に並ぶ形式のため、本記事では工学部の3学科行と「計」行のみを使っています。学科・コース単位の内訳を学部全体の数値として掲載しないよう、学部合計は必ず「計」行から取りました。
出願資格を条文どおりに確認する
要項の出願資格は次の(1)〜(6)のいずれかに該当することです。「62単位以上」という条件がかかるのは(4)だけで、全員に共通する要件ではありません。ここを取り違えると、出願できるのにあきらめる/出願できないのに準備を進める、という事故になります。
- (1) 大学を卒業した者、および入学年の3月までに卒業見込みの者
- (2) 短期大学を卒業した者、および同3月までに卒業見込みの者
- (3) 高等専門学校を卒業した者、および同3月までに卒業見込みの者
- (4) 修業年限4年以上の大学において62単位以上を修得し、かつ2年以上在学した者、および同3月までに同要件を満たす見込みの者 ←4年制大学の在学生はこの区分
- (5) 専修学校の専門課程を修了した者、および同3月までに修了見込みの者。ただしその課程は修業年限2年以上かつ修了に必要な総授業時数1,700時間以上または62単位以上であること、かつ学校教育法第90条第1項に規定する大学入学資格を有する者に限る
- (6) 外国において学校教育における14年以上の課程を修了した者、および同3月までに修了見込みの者
実務上の注意点も要項に書かれています。出願資格(4)で出願する場合、卒業(見込)証明書の提出は不要です(在学中で卒業見込みが立たないため)。提出するのは志願票・成績証明書・志望の理由の3点になります。また、見込みで受験して合格した人が3月末までに要件を満たせなかった場合は入学を許可されません。「2年以上在学」と「62単位以上」は両方満たす必要があるので、休学期間がある方や単位が不足しそうな方は、在籍校の教務担当に早めに確認しておくことをおすすめします。
なお、埼玉大学工学部の編入試験には推薦区分・社会人区分・私費外国人留学生の別枠といった複数の選抜区分はありません。要項に記載された選抜方法は数学と面接の1本のみで、実施状況PDFでも工学部の行は区分に分かれていません(教養学部は一般・社会人・留学生の3区分に分かれています)。高等専門学校からの推薦入試を探している方は、この大学では該当する枠がない点にご注意ください。
出願手続の実務チェックリスト
出願期間は6月上旬の約1週間だけ、しかも郵送必着で大学への持参は認められません。要項の記載から逆算した準備の流れをまとめます。日付は令和10年度の要項が公表されてから確定してください。
- 前年度のうちに: 出願資格の区分を確定します。4年制大学の在学生は、入学時点で「2年以上在学」と「62単位以上」を満たせるか、履修計画も含めて教務担当に確認します。
- 要項公表(5月ごろ)直後: 募集学科の表を最初に見て、志望学科が当年度に募集されているかを確認します。同時に、志望の理由の様式を大学公式サイトからダウンロードします(本人が記載する書類です)。
- 出願1か月前まで: 成績証明書・卒業(見込)証明書を出身学校長または学部長名で発行してもらいます。発行に日数がかかる学校もあるため、早めに依頼してください。
- 出願1か月前まで(該当者のみ): 身体等に障がいがあり受験上・修学上の配慮が必要な方は、出願期間前に事前相談の申請が必要です。所定の配慮申請書と、発行後6か月以内の医師の診断書を工学部係へ提出します。障がいの程度によっては検討に時間がかかるため、要項でも早めの申請が求められています。
- 出願1〜2週間前(該当者のみ): 学資負担者が災害救助法適用地域で被災し罹災証明を得られた場合、検定料の免除を申請できます。令和9年度は原則6月1日までの提出が期限でした。
- 登録開始日(令和9年度は6月1日)〜: インターネット出願サイトで志願者登録を行い、検定料30,000円を支払います。顔写真は出願前3か月以内に撮影した、加工していない写真をアップロードします。
- 出願期間(6月上旬の約1週間): 支払い後にダウンロードできる志願票と宛名シートをカラー印刷し、市販の角形2号封筒に貼って、証明書類とともに簡易書留速達郵便で郵送します。
- 受験票の配信(令和9年度は6月19日): 出願が確認されるとメールで通知が届き、マイページから受験票と受験案内をダウンロードできます。A4用紙に片面で印刷して当日持参します。郵送はされず、スマートフォンの画面提示も認められません。
検定料を支払ったあとの入力誤りは、印刷した書類を赤の二重線で訂正して郵送する扱いになりますが、「志望学部」「志望学科」の訂正には一切応じないと要項に明記されています。学科の決定は登録前に済ませてください。また、書類の到着確認の問い合わせには応じないため、郵便追跡サービスで自分で確認します。
試験当日の流れと合否の決まり方
当日は数学が10:00〜11:30(90分)、面接が13:30からという一日です。要項の選抜方法にはこう書かれています。「あらかじめ決められた配点により、学力検査の成績に基づいて順位を付けて合否を決定しますが、面接が一定の評価基準に達しない者は、不合格とします」。
つまり、順位を決めるのは数学300点だけで、面接は点数として加算されない代わりに、基準に届かなければそこで不合格になるという構造です。面接は「落とすための関門」であって「挽回の場」ではありません。数学で取りこぼした分を面接で埋めることはできない、と理解して準備するのが正確です。逆に、面接で大きく減点されて逆転されることもない、ということでもあります。
もう1点、要項の注記に「面接では、大学の第1・2年次に修得する専門的知識の有無を問うことがあります(電気電子物理工学科のみ)」とあります。電気電子物理工学科を志望する場合は、志望動機だけでなく、電磁気学・電気回路・物理などの基礎を口頭で説明できる状態にしておく必要があります。他の2学科にはこの注記がありません。
数学の出題範囲と対策の組み立て方
要項の出題範囲欄には「微分積分学/線形代数/常微分方程式」の3つが明記されています。工学部の編入試験でよく課される物理・専門科目・英語は含まれません。裏を返せば、この3分野以外の学習は直接の得点にならないということでもあります。90分で300点分を解く形式なので、手が止まらない計算力が最優先の課題になります。
2026年7月4日に受験した方から寄せられた試験直後アンケートでは、出題内容として「導関数、2次偏微分、不定積分、二重積分、行列とベクトル、常微分方程式」が挙げられていました。別の受験者は「出題傾向は例年通りだった」と回答しています。3分野が満遍なく問われる構成で、どれか1分野を捨てる戦略は取れません。以下、分野ごとに押さえるべき範囲を整理します。
著作権の観点から、過去問の設問そのものは記載していません。以下は分野・テーマのレベルでの整理です。
微分積分学:多変数まで踏み込む
1変数の微分・積分(導関数、合成関数の微分、置換積分、部分積分、定積分、対数微分、ロピタルの定理、マクローリン展開)に加え、2変数以上の微積分が問われます。偏導関数・2次偏微分、極値問題、重積分(累次積分)、変数変換とヤコビアンといった、大学1〜2年の「微分積分II」相当の内容です。アンケートでも「2次偏微分」「二重積分」が挙がっており、1変数だけの復習では足りません。
受験者の感想として「積分に少し工夫が必要だと思った」という声がありました。積分の計算そのものは標準的でも、置換の仕方や積分順序の入れ替えなどひと手間の判断が要る出題があるということです。重積分は積分領域を図示して順序を決める練習を、変数変換はヤコビアンを含めた手順を、それぞれ型として繰り返しておくと当日の判断が速くなります。
線形代数:計算の正確さで差がつく
アンケートでは「行列とベクトル」が出題内容として報告されています。行列の基本計算、行列式、逆行列、連立一次方程式、固有値・固有ベクトルと対角化までが標準的な射程です。線形代数は解法の選択に迷う場面が少ない代わりに、計算ミスがそのまま失点になる分野です。3分野のうちで最も「練習量が点数に直結する」ところなので、直前期に手を止めないよう継続的に演習しておきたい分野といえます。
常微分方程式:解法の型をそろえる
変数分離形、同次形、1階線形微分方程式(積分因子)、2階線形微分方程式(特性方程式)、連立微分方程式といった、標準的な解法パターンが範囲です。常微分方程式は「どの型か」を見抜ければ手順が決まる分野なので、型の判別→解法の適用という流れを反復すれば安定して得点源にできます。大学によっては範囲外になることも多い分野ですが、埼玉大学工学部では出題範囲に明記されている以上、3分の1の比重で準備すべき対象です。
なお、大学が公表している情報開示制度では、不合格となった受験者本人に限り「数学の得点と順位」の開示を請求できます。開示されるのが数学の得点だけであることも、この試験が数学一本で順位を決めていることの裏づけになっています。
過去問の入手方法
要項には過去問題の閲覧方法が2つ案内されています。1つは埼玉大学大学院理工学研究科支援室工学部係の窓口(全学講義棟1号館1階)で来学して閲覧する方法、もう1つは大学が案内している外部サイト「サイバーカレッジ」を通じてインターネット上で閲覧する方法です。なお大学全体の「過去問題の閲覧について」のページには、3年次編入学試験については実施学部へ問い合わせるようにと書かれているため、確実なのは工学部係への確認です。試験直後アンケートでも「過去問をやってればなんとかなる」という声があり、過去問にどれだけ早く着手できるかが対策の中心になります。
面接で実際に聞かれたこと
2026年7月4日の試験直後に寄せられたアンケート3件から、面接の実像を整理します。いずれも合否発表前の回答のため、合格者の声ではなく受験者の報告としてお読みください。
聞かれた内容として複数の回答に共通していたのは次の項目です。
- 志望動機(全員が挙げています)
- 編入後の抱負・入学後にやりたいこと
- 興味がある研究分野
- 現在の大学での履修状況・取得単位・成績
- 併願校
- 進路・自己PR
特徴的だったのは、ある受験者が「専攻が変わることから2年で卒業できないかもしれないが、どう思うか」と問われたという報告です。埼玉大学工学部の単位認定は「出身学校での修得単位に応じて学科が定めた認定基準により行う」とされており、出身分野が離れている場合は認定される単位が少なくなる可能性があります。要項では在学期間の上限が6年と定められているため制度上の余裕はありますが、3年次編入でも2年で卒業できるとは限らないことを前提に、自分の考えを言語化しておく必要があります。
面接の形式・雰囲気については報告に幅がありました。「4対1で、1人がどんどん質問し、ほかの方は聞いている。最後に逆質問の時間がある」「6人くらいで少し厳しい感じ、面接時間は短かった」「6人の集団面接で5分ほど、少し淡々とした感じだった」といった内容です。「面接は和やかで盛り上がったと過去の体験記には書いてあったが、決してそうとは言えなかった」という感想もあり、和やかな雰囲気を前提にした準備はしないほうが安全です。時間が5分程度と短い回もあるため、志望動機と研究分野の希望は短く言い切れる形に整えておくとよいでしょう。
もう1点、「面接が合否に影響する」という回答がありました。要項どおり面接は得点化されませんが、基準に達しなければ不合格になる以上、筆記の出来にかかわらず面接の準備は必要です。
併願戦略:7月合格・12月手続という日程
埼玉大学工学部の日程は、併願設計のうえで特徴的です。
- 学内併願はできません。3学科は同一日・同一時間割で、志望学科の変更にも応じてもらえません。
- 埼玉大学の他学部とは日程が分かれています。2027年4月入学では、工学部が7月4日、教養学部が11月7日(出願10月1日〜9日)、経済学部が11月21日(出願10月1日〜9日)でした。理系から文系への進路変更を検討している方には選択肢がありますが、教養学部と経済学部は出願期間が同一なのでこの2つは同時に出せません。なお埼玉大学で3年次編入を実施しているのは、この教養・経済・工の3学部です。
- 合格から入学手続まで約5か月あります。2027年4月入学では合格発表が2026年7月14日、入学手続日が2026年12月17日(予定)でした。7月に合格を得たあとも、秋から冬にかけて実施される他大学の編入試験を受けることが日程上は可能です。
この「7月に結果が出る」という点は、6〜8月に試験が集中する国公立大学工学部の編入を目指す方にとって重要です。多くの国公立大学工学部の編入試験は初夏から夏にかけて行われるため、試験日そのものは重なりやすい一方、埼玉大学の合格を確保したうえで秋以降の私立大学等に挑戦するという組み立てが取れます。実際、5年間の合格者67名に対し入学者は45名で、合格者の3割は他の進路を選んでいます。
ただし、入学手続日は1日だけで「本学が定めた入学手続日以外は、いかなる理由があっても一切受付しません」と要項に明記されています。手続を行わなければ入学辞退として扱われます。併願する場合は、他大学の合格発表日と埼玉大学の入学手続日の前後関係を必ずカレンダーで確認してください。
試験科目の面では、埼玉大学工学部は数学のみ・英語不要という構成のため、英語外部試験のスコアや物理・専門科目を課す大学と併願すると、準備の重複が少なくなります。逆に言えば、埼玉大学の対策だけをしていると他大学に対応できないため、併願先を決めてから学習計画を組むほうが効率的です。関東圏の国公立大学工学部については、記事末尾の関連記事もあわせて参考にしてください。
合格ロードマップ(時期別)
試験日(6月末〜7月上旬)から逆算した準備の目安です。2028年4月入学を目指す方は、2027年7月上旬の試験を想定して読み替えてください。
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1年前〜:出願資格と学科を固める
まず出願資格の区分を確定します。4年制大学の在学生なら「2年以上在学かつ62単位以上」を入学時点で満たせるか、履修計画とあわせて教務担当に確認してください。並行して志望学科を決めます。学科をまたいだ併願はできず、出願後の変更も認められないため、この判断は早いほど有利です。学科別の倍率データと、自分が研究したい分野の両方から検討してください。
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6〜9か月前:数学3分野の土台づくり
微分積分学・線形代数・常微分方程式を、まずは1周ずつ通します。試験は90分で1科目のみなので、範囲は広くありません。この段階では網羅性より手順を迷わないことを優先します。多変数の微積分(偏微分・重積分・変数変換)と、固有値・対角化までの線形代数、常微分方程式の解法パターンが到達点です。
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3〜6か月前:過去問と編入向け問題集
工学部係の窓口または大学が案内している方法で過去問を確認し、出題の形式と分量に慣れます。あわせて大学編入向けの数学問題集で、時間を計った演習に移ります。「難易度は高くはないため差が出にくい」という受験者の感想があるとおり、取れる問題を確実に取り切る精度が合否を分けます。ミスの傾向を記録して潰していく段階です。
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2〜3か月前:志望の理由と面接の準備
志望の理由は本人が記載する提出書類で、面接でも資料として使われます(要項に「提出された資料は面接の際に使用し、総合的な判断に用います」と明記)。研究したい分野を具体的に書けるよう、埼玉大学工学部の各学科の研究内容を調べます。電気電子物理工学科志望の方は、専門的知識を問われる可能性があるため専門科目の復習も始めます。
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出願期(6月上旬): 手続を確実に
証明書を手元に揃えたうえで、登録開始日にインターネット出願の登録と検定料の支払いを済ませ、期間内に簡易書留速達郵便で郵送します。到着確認は郵便追跡サービスで自分で行います。受験票は配信日以降にダウンロードしてA4片面でカラー印刷しておきます。
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直前期(6〜7月): 計算精度と想定問答
新しい教材には手を出さず、これまでに解いた問題の解き直しで計算精度を上げます。面接は志望動機・入学後の抱負・興味のある研究分野・履修状況と成績・併願校の5点を、短く言い切れる形に整えます。集団面接で持ち時間が5分程度という報告もあるため、長い説明を用意するより、1問30秒で答えきる練習のほうが効果的です。
試験当日のチェックリスト
- 受験票: 事前にA4用紙へ片面でカラー印刷したものを持参します。スマートフォン等の画面表示による提示は認められません。前日までに印刷を済ませてください。
- 時間配分: 数学は10:00〜11:30の90分。1科目で完結するため、途中で気持ちを切り替える科目がありません。90分通しの演習を事前にしておくと当日の失速を防げます。
- 昼の待ち時間: 筆記終了(11:30)から面接(13:30)まで約2時間空きます。ある受験者は「教室内でネットが繋がりにくかったため、休み時間に見たい資料などは写真フォルダに残しておくか印刷しておく方がいい」とアドバイスしています。面接用のメモは紙か端末内に保存しておきましょう。
- 解く順番: 「筆記試験は簡単だった」「難易度は高くはないため差が出にくい」という感想が複数ありました。差がつきにくい試験ほど、確実に取れる問題を落とさないことが決定的です。
おすすめ参考書
埼玉大学工学部の出題との対応が確認できている参考書から、微分積分学・線形代数・常微分方程式の3分野と総合演習をカバーする6冊を紹介します。各カードをタップすると詳しいレビュー記事に移動できます。
編入の微分積分徹底研究微分積分学
手を動かしてまなぶ微分積分(藤岡敦)微分積分学
スバラシク実力がつくと評判の微分積分キャンパス・ゼミ微分積分学
やさしく学べる線形代数(石村園子)線形代数
スバラシク実力がつくと評判の常微分方程式キャンパス・ゼミ常微分方程式
編入数学徹底研究総合演習
使い方の目安としては、まず分野ごとの入門書(キャンパス・ゼミや「やさしく学べる」シリーズ、「手を動かしてまなぶ」)で計算手順を身体に入れ、そのうえで「編入の微分積分徹底研究」「編入数学徹底研究」といった編入試験に的を絞った問題集で出題形式に慣れる、という順序が組み立てやすいでしょう。埼玉大学工学部は出題範囲が3分野に限定されているため、大学の講義で使った教科書がそのまま使える場合はそれを優先しても構いません。
試験直後アンケートに見る受験者のリアル
2026年7月4日実施回(機械工学・システムデザイン学科の受験者)の試験直後アンケートから、当日の声を紹介します。合否発表前の回答のため、合格者ではなく受験者の声としてお読みください。
「積分に少し工夫が必要だと思った。難易度は高くは無いため差が出にくいと思う。面接は和やかで盛り上がったと過去の体験記には書いてあったが決してそうとは言えなかった。」
— 2026年7月4日受験者の試験直後アンケートより
「4対1/1人がどんどん質問して、他の方は聞いているだけだった。最後に質問したいことがあればされる。和やかというわけではなく、1人の方が凄くリアクションをして下さったのでそこに救われた。」
— 2026年7月4日受験者の試験直後アンケートより(面接の様子について)
「私の受けた教室に限るのかもしれないが、教室内でネットが繋がりにくかったため、休み時間に見たい資料などは写真フォルダに残しておくか印刷しておく方がいい。」
— 2026年7月4日受験者の試験直後アンケートより
「過去問をやってればなんとかなる。」
— 2026年7月4日受験者の試験直後アンケートより
「面接が合否に影響する。」
— 2026年7月4日受験者の試験直後アンケートより
よくある質問
埼玉大学工学部の編入試験の倍率はどのくらいですか?
大学が公表している「埼玉大学3年次編入学試験実施状況」の工学部「計」行で見ると、2022年度から2026年度入学の5年間で、受験者数÷合格者数の倍率は4.3倍〜7.0倍でした。5年を合算すると受験347名・合格67名で5.2倍です。学科別では差が大きく、5年合算で機械工学・システムデザイン学科が8.8倍、電気電子物理工学科が4.8倍、環境社会デザイン学科が3.2倍でした。単年では合格者が1〜2名という年があり倍率が大きく振れるため、1年だけの数字で難易度を判断しないでください。
工学部のどの学科でも編入できますか?
できません。埼玉大学工学部は機械工学・システムデザイン学科、電気電子物理工学科、情報工学科、応用化学科、環境社会デザイン学科の5学科で構成されていますが、第3年次編入学の募集学科は機械工学・システムデザイン学科、電気電子物理工学科、環境社会デザイン学科の3学科です。募集人員はいずれも若干名です。情報工学科と応用化学科は募集学科の表に記載がありません。
試験科目と配点を教えてください。
3学科共通で、数学(出題範囲は微分積分学・線形代数・常微分方程式)が10:00〜11:30の90分・300点、面接が13:30からです。面接は得点化されず「合・否」の判定のみに使われ、一定の評価基準に達しない場合は不合格になります。合否は学力検査の成績で順位を付けて決定すると要項に書かれているため、実質的に数学1科目の得点で順位が決まり、面接は足切りとして働く構造です。
英語の試験やTOEICのスコア提出は必要ですか?
必要ありません。募集要項の選抜方法に記載されている試験は数学と面接だけで、出願書類にも英語の外部試験スコアは含まれていません。出願書類は志願票、成績証明書、卒業(見込)・修了(見込)証明書、志望の理由の4点が基本で、外国人留学生のみ在留カードの写し等が加わります。ただし年度による変更があり得るため、出願前に必ず最新の募集要項で確認してください。
62単位という条件は全員に必要ですか?
全員ではありません。62単位以上という条件が付くのは、出願資格のうち「修業年限4年以上の大学において62単位以上を修得し、かつ2年以上在学した者」という区分です。大学・短期大学・高等専門学校を卒業(見込み)する人は、この単位数の条件ではなく卒業の要件で出願します。専修学校の専門課程は、修業年限2年以上かつ総授業時数1,700時間以上または62単位以上という課程側の条件が付きます。
3学科の併願や、埼玉大学の他学部との併願はできますか?
3学科は同一日・同一時間割で試験が行われるため、学科をまたいだ併願はできません。要項にも「志望学部」「志望学科」の訂正には一切応じないと書かれており、出願時に1学科を選ぶ必要があります。一方、埼玉大学で3年次編入を実施しているのは教養学部・経済学部・工学部の3学部で、日程は分かれています。2027年4月入学では工学部が7月4日、教養学部が11月7日、経済学部が11月21日の試験でした。
合格したら、すぐに入学手続きが必要ですか?
いいえ。2027年4月入学の場合、合格発表は2026年7月14日でしたが、入学手続日は2026年12月17日の予定と要項に記載されています。合格から手続まで約5か月あるため、秋以降に実施される他大学の編入試験と併願しやすい日程です。ただし入学手続期間内に手続きを行わない場合は入学を辞退した者として扱われ、指定日以外の受付は一切ないため、日付の管理には注意してください。
不合格だった場合、自分の得点を知ることはできますか?
できます。埼玉大学工学部は第3年次編入学試験の情報開示制度を設けており、不合格となった受験者本人に限り、数学の得点と順位の開示を請求できます。所定の請求書と返信用封筒、受験票の原本を提出する方式で、2027年4月入学の選抜では2027年4月19日から5月28日が請求期間でした。請求方法や期間は年度により変わるため、最新の募集要項で確認してください。
まとめ
埼玉大学工学部の3年次編入試験は、数学1科目300点と面接だけという構成で、英語も専門科目も課されません。順位を決めるのは数学の得点であり、面接は得点化されない代わりに基準に届かなければ不合格という「関門」として働きます。学習範囲が微分積分学・線形代数・常微分方程式の3分野に限定されているぶん、その3分野をどれだけ速く正確に処理できるかが勝負になります。
戦略面で重要なのは3点です。第一に、募集があるのは5学科のうち3学科だけで、情報工学科・応用化学科は募集学科の表に載っていません。第二に、3学科は同一日程のため学科をまたいだ併願ができず、出願後の変更も認められないため、学科選択は準備の最初に決める必要があります。第三に、その学科ごとに倍率の相場が違い、5年合算で機械工学・システムデザイン学科8.8倍、電気電子物理工学科4.8倍、環境社会デザイン学科3.2倍という開きがあります。ただし単年では合格者が1〜2名の年もあるため、1年の数字だけを見て判断しないでください。
2027年4月入学の選抜はすでに終了しています。2028年4月入学を目指す方は、例年5月ごろに公表される募集要項で、募集学科・出願期間・試験日の3点を最初に確認したうえで、6月上旬の出願に向けて証明書の手配を進めてください。
あとは、いまの自分の位置から何を先にやるかです。志望校と現在の状況をうかがったうえで、順番を整理します。
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この記事について
監修: オンライン編入学院(株式会社BearBee)
本記事は、2年連続合格者数No.1※の大学編入予備校オンライン編入学院が監修しています。試験概要・日程・出願資格・選抜方法は埼玉大学が公表する募集要項の原本を、倍率は埼玉大学が公表する「3年次編入学試験実施状況」の原本をそれぞれ確認して記載しました。受験者の声はオンライン編入学院に寄せられた試験直後アンケートにもとづいています(本記事の引用は合否発表前の回答のため、合格者の声としては扱っていません)。
※調査対象期間:2024/4〜2026/3 TPCマーケティングリサーチ(株)調べ
最終更新: 2026年9月6日


