材料力学 参考書ルート流体力学・熱力学まで何をどの順で
機械系の編入試験は「4力学」と言われます。材料力学・流体力学・熱力学・機械力学の4つです。ただ、この呼び方をそのまま信じて4分野を均等に勉強すると、ほとんどの人が時間を配分し損ねます。
理由は2つあります。ひとつは、多くの大学が課すのは4つではなく3つだということ。材料力学・流体力学・熱力学の3点セットが標準で、機械力学(振動)まで課す大学は限られます。もうひとつは、3分野のあいだでも出題量が大きく違うこと。過去問を分野ごとに見ると、熱力学がいちばん多く、材料力学はその3分の1ほど、流体力学は5分の1ほど、機械力学は10分の1ほどしかありません。
そしてもうひとつ、この分野には本選びで踏みやすい落とし穴があります。機械系の「材料力学」と、土木・建築系の「構造力学」は別の科目です。どちらもはりのたわみや曲げモーメントを扱うため書店では隣に並びますが、材料力学は部材そのものの応力とひずみが中心、構造力学はトラスやラーメンなど骨組み全体の力の流れが中心です。取り違えると、試験で問われる形にたどり着けません。
この記事では、志望校が3点セット型かどうかを確かめたうえで、出題量の多い順に何をどう積むかを整理します。
この記事で分かること
- 参考書を買う前に確かめること(ここで必要な分野が決まります)
- 志望校が課すのは3分野か4分野か(要項で確認した実例)
- 熱力学・材料力学・流体力学・機械力学それぞれの重心と読む順序
- 「物理の熱力学」と「工業熱力学」の違いと、どちらが必要か
- いつまでに何を終えるかの目安と、やってはいけない使い方
編入試験は大学ごとに出願資格も科目も違います。いまの学年・在籍区分で受けられる大学がどこかは、条件を突き合わせて初めて分かります。
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買う前に決めること
先に志望校の募集要項で、専門科目に何が並んでいるかを確かめてください。機械系は「4力学をやればよい」という科目ではなく、要項の1行で必要な分野が2つにも6つにも変わります。
| 確かめること | なぜ必要か |
|---|---|
| 専門は3分野か4分野か | ここが最大の分岐です。「材料力学・流体力学・熱力学」と書かれていれば3点セット型。ここに機械力学(振動)が入る大学、制御工学や機械加工まで入る大学もあります。課されない分野に使った時間は戻りません。 |
| 選択制かどうか | 「3科目から2科目選択」のように、絞れる大学があります。出願時に選ぶ場合は願書を出した時点で受験科目が固定されるため、過去問を見てから決めてください。 |
| 熱力学は物理系か工業系か | 同じ「熱力学」でも、エントロピーや熱力学第一法則を問う物理の熱力学と、カルノーサイクルや熱機関を問う工業熱力学では使う本が変わります。過去問で出題の型を確かめてください。 |
| 数学が別に課されるか | 多くの大学で専門科目とは別に数学があります。微分積分・線形代数・微分方程式が土台になるため、専門と別枠で時間を確保するかが変わります。 |
| 英語はスコア提出か | 機械系はTOEICのスコア提出型が主流です。スコア提出型なら、参考書より先に受験日程を押さえてください。返却に時間がかかるため、直前の受験では出願に間に合わないことがあります。 |
志望校が課すのは3分野か4分野か
実際の要項を確認した例です。「材料力学・流体力学・熱力学」の3点セットが標準形で、そこに何が足し引きされるかが大学ごとの違いになります。
| 大学 | 学科と専門科目の構成 |
|---|---|
| 横浜国立大学 | 理工学部 機械・材料・海洋系学科(機械工学EP) 基礎科目に数学・物理、専門科目に材料力学・流体力学・熱力学。3点セットの典型です。 |
| 兵庫県立大学 | 工学部 機械・材料工学科 機械工学コース 材料力学・流体力学・熱力学と面接。同じ学科でも材料工学コースは「力学・電磁気学」で、コースごとに試験が違います。 |
| 滋賀県立大学 | 工学部 機械システム工学科 数学(微積分・線形代数)・熱力学・流体力学・材料力学。英語はTOEICのスコアを換算し、面接もあります。 |
| 大阪公立大学 | 工学部 機械工学科 ①材料力学・機械力学/②熱力学・流体力学(計400点)+英語100点。機械力学まで入る4分野型で、専門の配点が高いのが特徴です。航空宇宙工学科は材料力学・熱力学・流体力学(300点)です。 |
| 岐阜大学 | 工学部 機械工学科 数学と機械工学(材料力学・機械加工・機械力学・流体力学・熱力学・制御工学)の基礎的事項、面接。範囲がもっとも広い型です。 |
| 鹿児島大学 | 工学部 機械工学プログラム 数学と、材料力学・工業熱力学・水力学から2科目選択、面接。2分野に絞れます。 |
| 東京電機大学 | 工学部第二部 機械工学科 数学・英語・物理・材料力学と個別面接。専門は材料力学だけで、時間割も専門科目1(物理)と専門科目2(材料力学)に分かれています。 |
| 三重大学 | 工学部 機械工学コース 英語(TOEIC)・数学・力学・面接。分野名を細かく指定せず「力学」とだけ示す大学もあります。 |
| 豊橋技術科学大学 | 工学部 機械工学課程 国語・英語・応用数学・専門科目。国語が課される数少ない大学です。 |
| 弘前大学 | 理工学部 機械科学科 面接のみ(15〜20分)。ただし面接の中で「数学」「機械工学の基礎」について試問されます。筆記がない=勉強しなくてよい、ではありません。 |
試験科目は年度によって変わります。募集要項は必ず最新年度のものでご確認ください。各大学のリンク先に、要項を確認した時点の詳しい内容をまとめています。
熱力学:出題は最多。ただし4分の3は物理の熱力学
4分野のうち、出題がいちばん多いのは熱力学です。そして、ここに機械系でいちばん多い誤解があります。
熱力学の出題の4分の3ほどは、大学1年で習う物理の熱力学の範囲です。エントロピー、内部エネルギー、熱力学第一法則、断熱変化、等温変化——ここが繰り返し問われます。カルノーサイクルや熱機関、熱効率といった工業熱力学らしい問題は、残りの4分の1ほどです。
つまり、いきなり工業熱力学の教科書から入るのは順序が逆です。まず物理の熱力学で、エントロピーと第一法則を式の意味から理解してください。そのうえで、志望校がサイクルを出すなら工業熱力学を足します。
物理の熱力学を固める本です。
どちらも物理の熱力学の本です。サイクルを主題にした工業熱力学の本ではないので、志望校がカルノーサイクルや熱機関を出す場合は、次の1冊を足してください。
工業熱力学(サイクル)を足す本です。
材料力学:たわみと曲げモーメント図が中心
材料力学は、出題量では熱力学の3分の1ほどですが、機械系でいちばん多くの大学が課す分野です。上の表でも、10大学すべての専門科目に入っていました。東京電機大学のように専門が材料力学1科目だけという大学もあります。
問われる論点ははっきりしています。はりのたわみ、曲げモーメント、たわみ角、片持ちはり、断面二次モーメント、せん断力図。ここが繰り返し出ます。逆に言えば、はりの問題を解けるようにすることが、この分野の対策のほぼすべてです。
教科書と演習を1冊ずつ用意する形が基本です。教科書で公式の導出をたどり、演習で手を動かして図を描けるようにします。
流体力学:3つの論点で3分の2が解ける
流体力学は、出題量では熱力学の5分の1ほどです。ただし、この分野は投資対効果がとても高いという特徴があります。
理由は、出題が特定の論点に集中しているからです。ベルヌーイの定理、浮力、連続の式。この3つだけで、流体力学の出題のおよそ3分の2を占めます。レイノルズ数や粘性抵抗まで問われることもありますが、まずはこの3つを確実にしてください。入門書1冊で大半に手が届く分野です。
失点は計算力よりも式を使ってよい条件で起きます。どの状況でベルヌーイの定理が成り立つのかを言葉で説明できるようにしてから、計算に入ってください。
機械力学(振動):出題は少ない。課される人だけ
機械力学は、4分野で出題がもっとも少ない分野です。熱力学の10分の1ほどしかありません。課す大学も限られており、上の表では大阪公立大学の機械工学科と岐阜大学が該当しました。
志望校が課さないなら、この分野に時間を使わないでください。その時間は材料力学と熱力学に回したほうが確実に効きます。
課される場合に問われるのは、減衰振動、固有振動数、強制振動、共振条件です。範囲が狭いぶん、1冊を仕上げれば得点源になります。
なお、大学の物理で扱う単振動(ばね・振り子)は、機械力学ではなく物理の力学の範囲で問われることがほとんどです。物理の対策は大学編入 物理の参考書ルートにまとめています。
数学と英語をどう組み込むか
数学は、上の表のほぼすべての大学で専門科目とは別に課されていました。範囲は微分積分・線形代数・微分方程式が土台です。4力学はどれも微分方程式の上に成り立っているため、数学が弱いまま専門に入ると、式変形で止まります。専門と並行して早い時期から進めてください。進め方は編入数学の参考書ルートにまとめています。
英語は、機械系ではTOEICのスコア提出型が主流です(三重大学・滋賀県立大学・豊橋技術科学大学など)。スコア提出型でいちばん多い失敗は、受験日程の読み違えです。出願に間に合う受験回から逆算し、参考書を選ぶより先に受験日を押さえてください。読解型の対策が必要な場合は編入試験の英語の対策で整理しています。
いつまでに何を終えるか
| 時期 | やること |
|---|---|
| 受験の10〜6か月前 | 要項で専門科目の分野を確定する。選択制なら受験する分野を決める。数学(微積・線形・微分方程式)を進める。英語がスコア提出型なら受験日を予約する。 |
| 6〜3か月前 | 材料力学のはり(たわみ・曲げモーメント図)を反復。熱力学は第一法則とエントロピーを式の意味から。流体力学はベルヌーイ・連続の式・浮力を固める。この時期に過去問を一度解き、出題の深さを測る。 |
| 3〜1か月前 | 志望校が出す分野の演習を仕上げる。工業熱力学のサイクルや機械力学の振動は、課される人だけここで足す。過去問を時間を計って解く。 |
| 直前1か月 | 間違えた問題の解き直しと、図を描く手順の確認。新しい参考書には手を出さない。面接・口頭試問がある大学は、解いた問題を口で説明する練習をする。 |
やってはいけない3つの使い方
1つめ。土木・建築系の「構造力学」の本で材料力学を勉強することです。どちらもはりのたわみや曲げモーメントを扱い、目次も似て見えます。しかし材料力学は部材そのものの応力とひずみが中心、構造力学はトラスやラーメンなど骨組み全体の力の流れが中心です。志望校が「材料力学」と書いているのか「構造力学」と書いているのかを、要項の言葉どおりに確認してください。鹿児島大学のように「水力学」、三重大学のように「力学」と書く大学もあります。
2つめ。課されない分野に手を広げることです。機械力学(振動)を課す大学は限られます。「4力学」という言葉に引きずられて4分野を均等にやると、いちばん出る熱力学と材料力学が薄くなります。要項で確認した分野だけに絞ってください。
3つめ。熱力学を「サイクルの科目」だと思い込むことです。工業熱力学の教科書から入ると、実際にいちばん問われるエントロピーや熱力学第一法則の理解が浅いまま進みます。物理の熱力学が先、サイクルは後——この順序を逆にしないでください。
あとは、いまの自分の位置から何を先にやるかです。志望校と現在の状況をうかがったうえで、順番を整理します。
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まとめ
- 最初にやることは、要項で専門科目の分野を確かめることです。3点セット型が標準ですが、材料力学1科目だけの大学も、6分野に及ぶ大学もあります
- 熱力学は出題が最多。ただし4分の3は物理の熱力学です。エントロピーと第一法則が先、サイクルは後
- 材料力学は、はりの問題を解けるようにすることがほぼすべてです。たわみ・曲げモーメント図・断面二次モーメント
- 流体力学はベルヌーイ・浮力・連続の式で3分の2。入門書1冊で大半に届きます
- 機械力学は課される人だけ。出題は4分野でもっとも少なく、課さない大学が多数です
- 土木の構造力学の本を材料力学に使わないこと。この分野でいちばん多い本選びの間違いです
志望校の出題範囲に対して、いま手元の本で足りているかどうかは、過去問を1年分解けば分かります。オンライン編入学院では、志望校の出題範囲に合わせた学習計画のご相談を無料で受け付けています。
よくある質問
材料力学と構造力学は、どちらの参考書を買えばよいですか?
志望校の募集要項に書かれている科目名のとおりに選んでください。機械系の学科は「材料力学」、土木・建築系の学科は「構造力学」と書かれているのが一般的です。どちらもはりのたわみや曲げモーメントを扱うため似て見えますが、材料力学は部材そのものの応力とひずみが中心、構造力学はトラスやラーメンなど骨組み全体の力の流れが中心で、試験で問われる形が違います。鹿児島大学工学部の機械工学プログラムのように「水力学」、三重大学工学部の機械工学コースのように「力学」とだけ示す大学もあるので、科目名だけで判断せず出題内容の記載まで確認してください。
4力学は全部やらないといけませんか?
志望校によります。横浜国立大学理工学部の機械工学EPや兵庫県立大学工学部の機械工学コースのように「材料力学・流体力学・熱力学」の3分野を課す大学が標準的で、機械力学まで入るのは大阪公立大学工学部の機械工学科や岐阜大学工学部の機械工学科のような大学です。逆に東京電機大学工学部第二部の機械工学科は専門が材料力学だけ、鹿児島大学工学部の機械工学プログラムは3科目から2科目を選択します。過去問で見ても機械力学の出題は4分野でもっとも少ないため、課されないなら手を広げず、材料力学と熱力学に時間を回してください。
熱力学は物理の熱力学と工業熱力学のどちらを勉強すればよいですか?
まず物理の熱力学からです。編入試験の熱力学の出題を見ると、4分の3ほどはエントロピー・内部エネルギー・熱力学第一法則・断熱変化といった、大学1年で習う物理の熱力学の範囲です。カルノーサイクルや熱機関、熱効率といった工業熱力学らしい問題は残りの4分の1ほどにとどまります。物理の熱力学で式の意味を理解してから、志望校がサイクルを出す場合に工業熱力学を足す順序が効率的です。志望校が「工業熱力学」と明記している場合は、サイクルの対策を必ず入れてください。
流体力学は何から手をつければよいですか?
ベルヌーイの定理、浮力、連続の式の3つからです。この3つで流体力学の出題のおよそ3分の2を占めるため、入門書1冊でも大半に手が届きます。この分野の失点は計算力よりも式の適用条件で起きます。どの状況でベルヌーイの定理を使ってよいのかを言葉で説明できるようにしてから計算に入ってください。余裕があればレイノルズ数や粘性抵抗まで広げますが、優先順位は先の3つが上です。
専門科目のほかに、数学はどれくらい必要ですか?
ほとんどの大学で専門科目とは別に課されます。範囲は微分積分・線形代数・微分方程式が土台になることが多く、滋賀県立大学工学部の機械システム工学科のように微積分・線形代数と明示される例もあります。4力学はどれも微分方程式の上に成り立っているため、数学が弱いまま専門に入ると式変形の途中で止まります。専門科目と並行して、早い時期から進めるのが安全です。
筆記試験が面接だけの大学は、勉強しなくてよいのですか?
そうではありません。弘前大学理工学部の機械科学科は選抜が面接のみですが、その面接の中で「数学」と「機械工学の基礎」について試問されます。筆記がないぶん、口頭で説明できる状態まで理解を深めておく必要があります。解いた問題を自分の言葉で説明する練習を、筆記対策と並行して入れてください。口頭試問を含む面接は、岐阜大学工学部のように配点が明示されている大学もあります。
ほかの科目の参考書ルート
数学や物理を併せて受ける人、あるいは併願先で別の科目が必要な人は、こちらもあわせてご覧ください。



