大学編入 物理 参考書ルート|高校の穴埋めから力学・電磁気の演習まで
編入試験の物理で最初につまずくのは、本の選び方より勉強の型の切り替えです。高校物理の「公式を覚えて当てはめる」勉強から、運動方程式や電磁気の法則から出発して、微分積分を使って自分で式を立てる勉強へ。ここを飛ばして演習書に入ると、解説を読んでも「なぜその式から始まるのか」が分からなくなります。
もうひとつ、物理は出題範囲の大学ごとの差が大きい科目です。力学と電磁気の2分野が柱であることはほぼ共通ですが、熱力学まで含む大学、力学・熱力学・電磁気学から選択させる大学、口頭試問で問う大学まで分かれます。だから検索で出てきたおすすめ本を上から順に買うのではなく、志望校の範囲を確かめてから、分野ごとに1冊ずつ決めるのが正解です。
この記事では、オンライン編入学院が、合格した人が実際に使った教材と各大学が公表している募集要項をもとに、物理の参考書を力学・電磁気・熱・波動の分野別に、標準ルートと難関大ルートの2本立てで整理します。数学・化学も含めた理系全体の組み立ては理系の編入試験の参考書にまとめているので、物理以外も課される人はそちらも合わせて読んでください。
この記事で分かること
- 物理の参考書を買う前に確かめること
- 力学・電磁気・熱・波動を、それぞれどの本でどの深さまでやるか
- 標準ルートと難関大ルートの分かれ目
- 物理を課している大学の例と、出題のされ方の違い
- 高校物理に戻るべきかどうかの判断
編入試験は大学ごとに出願資格も科目も違います。いまの学年・在籍区分で受けられる大学がどこかは、条件を突き合わせて初めて分かります。
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ここでいう難関大ルートは、旧帝大や神戸大学、筑波大学、東京科学大学、電気通信大学のように、出題範囲が広い、または分野別の演習書まで仕上げないと届かない大学を指します。標準ルートは、力学と電磁気を教科書レベルで固め、編入形式の問題集を1冊仕上げれば戦える大学です。
買う前に決めること
先に志望校の募集要項で、次の4つを確かめてください。ここが決まらないうちに本を買うと、使わない本が積み上がります。
| 確かめること | なぜ必要か |
|---|---|
| そもそも物理が課されるか | 理系でも数学だけ、あるいは数学+専門科目という大学が多くあります。物理が要らないなら、この記事の本は1冊も買わなくてかまいません |
| 分野の範囲 | 柱は力学と電磁気です。熱力学まで含む大学、力学・熱力学・電磁気学から選択させる大学(神戸大学海洋政策科学部など)があります。名古屋工業大学工学部のように基礎力学・基礎電磁気学から出題と明記する大学もあります |
| 解答の形式 | 途中式を書かせる記述式が主流ですが、口頭試問で物理を問う大学もあります。口頭試問なら「解ける」に加えて「説明できる」練習が要ります |
| 専門科目との関係 | 電気回路や材料力学などの専門科目が別に立っている大学では、物理はその土台になります。物理だけ仕上げても専門科目に届かない構成があるので、科目の全体像を先に見てください |
出発点は、高校物理をどこまでやったかで変わる
物理は、数学以上に「どこから始めるか」で差がつきます。大学の物理は高校物理の理解を前提にしているためです。
| いまの状態 | どこから始めるか |
|---|---|
| 高校物理が未履修・不安 | 物理のエッセンスで高校範囲の力学・電磁気を先に固めます。いきなり大学の本に入ると、数式は追えても現象がつかめません。演習量が欲しければ良問の風を足します |
| 高等専門学校 | 力学・電磁気を授業で扱った学科なら、教科書レベルの復習から編入形式の演習書へ入れます。授業で使った教科書がそのまま復習教材になります |
| 4年制大学(1〜2年) | 教養科目で力学・電磁気学を履修していれば、教科書レベルの本で通し直すところから。単位だけ取って中身が残っていない場合は、高校範囲の確認も含めて組み立て直してください |
判断に迷ったら、大学レベルの教科書の練習問題を数問解いてみてください。手が止まるなら1段階戻る。「習ったことがあるか」ではなく「いま解けるか」で決めるのが確実です。
全体の順序:4段階で積み上げる
| 段階 | 使う本 |
|---|---|
| 1. 高校物理の確認 不安があるなら必ず | 物理のエッセンス[力学・波動]、物理のエッセンス[熱・電磁気・原子]、良問の風 |
| 2. 大学の力学 | 大学1・2年生のためのすぐわかる力学、力学キャンパス・ゼミ |
| 3. 大学の電磁気 | 大学1・2年生のためのすぐわかる電磁気学、よくわかる電磁気学、基礎電磁気学 電磁気学マップに沿って学ぶ |
| 4. 編入形式の演習 | 弱点克服 大学生の初等力学、弱点克服 大学生の電磁気学。難関大はさらに分野別の演習書へ |
数学と並行して進めてください。大学の物理は微分積分を道具として使います。微分積分の基本的な計算ができるようになってから2の段階へ入るのが順当です。電磁気ではベクトルの扱い(内積・外積)にも慣れておく必要があるため、線形代数とも足並みをそろえます。数学側の進め方は理系の編入試験の参考書を見てください。
分野別:どの本をどの深さまでか
力学:すべての土台。「式を立てる」型をここで作る
力学は配点でも学習順でも物理の中心です。運動方程式を立てて微分方程式として解く、という大学物理の型をここで身につけます。単振動、保存則、剛体の回転あたりが編入でよく問われる山です。
| ルート | どこまでやるか |
|---|---|
| 標準ルート | すぐわかる力学か力学キャンパス・ゼミで「運動方程式から解く」型を通し、弱点克服 大学生の初等力学で編入形式の問題に慣れるところまで。合格した人が力学の軸として挙げることが多い1冊です |
| 難関大ルート | そこから演習しよう力学や演習 力学キャンパス・ゼミで大学院入試レベルまで含む問題演習を足します。剛体の慣性モーメントの計算を白紙から書けるかが、仕上がりの目安になります。機械系の学科で材料力学などが専門科目に立つ場合は機械系のための力学が橋渡しになります |
電磁気:法則から場を求める計算に慣れる
電磁気はガウスの法則やアンペールの法則から電場・磁場を求める計算がほぼ必ず出ます。高校の電磁気とは景色が変わる分野で、ベクトルの計算に慣れているかどうかで速度が決まります。
| ルート | どこまでやるか |
|---|---|
| 標準ルート | すぐわかる電磁気学・よくわかる電磁気学・基礎電磁気学 電磁気学マップに沿って学ぶのどれか1冊で全体を通し、弱点克服 大学生の電磁気学の基本問題で編入形式に慣れるところまで |
| 難関大ルート | 定番の電磁気学演習や演習しよう電磁気学で、対称性の高い電荷・電流分布から場を求める計算を、条件を変えて繰り返します。電気系の学科では電気回路が別科目として立つことが多いので、要項で構成を確かめてから配分を決めてください |
熱力学:範囲に入っているかを先に確認
熱力学は「そもそも範囲に入っているか」の確認が先です。入っている場合は、熱力学第1法則・第2法則、理想気体のサイクル、エントロピーのあたりが中心になります。
| ルート | どこまでやるか |
|---|---|
| 標準ルート | 物理のエッセンス[熱・電磁気・原子]で高校範囲を固め、大学の教科書の熱力学の章を通すところまで。力学・電磁気を削ってまで深掘りする分野ではありません |
| 難関大ルート | 熱力学が明示的に範囲へ入っている大学(神戸大学海洋政策科学部の選択科目、横浜国立大学理工学部の専門科目など)を受けるなら、演習しよう熱・統計力学でサイクルとエントロピーの計算問題を白紙から解けるようにします |
波動:大学レベルで出す大学は限られる
波動を大学レベルの独立分野として出す大学は限られます。多くの場合、高校範囲の波動と、力学の単振動の延長で対応できます。
| ルート | どこまでやるか |
|---|---|
| 標準ルート | 物理のエッセンス[力学・波動]で高校範囲を固めるところまで。専用の本を新しく買う必要はありません |
| 難関大ルート | 要項に「波動」が明記されている場合のみ、力学の演習書の単振動・連成振動の問題を重点的に回します。ばねや振り子を運動方程式から解いて周期を出す流れを、条件を変えても書けるようにしておけば、波動の基本問題まで橋がかかります |
標準ルートと難関大ルートの全体像
| ルート | 流れ |
|---|---|
| 標準ルート | 高校物理の穴をエッセンスで埋める → 大学の力学・電磁気を教科書レベルの本で1冊ずつ通す → 弱点克服の2冊で編入形式に慣れる → 志望校の過去問。ここまでで戦える大学は少なくありません |
| 難関大ルート | 標準ルートの後に分野別の演習書をもう1段足します。力学は演習しよう力学、電磁気は電磁気学演習・演習しよう電磁気学、熱力学が範囲なら演習しよう熱・統計力学。「学期末・大学院入試」と銘打つ演習書まで仕上げるのがこの層です |
標準ルートで使う本です。
難関大ルートで足す本です。
迷ったら、志望校の過去問を先に1年分見てください。力学・電磁気の2分野構成か、熱まで含むか、誘導つきの小問か大問1本の記述かで、足すべき本が決まります。この確認より先に難関大ルートの演習書を買わないのが、遠回りしないコツです。
物理を課している大学の例
物理を課している大学の例です。それぞれの記事で、範囲と出題のされ方を確認できます。
- 難関大ルートの目安——筑波大学理工学群、大阪大学基礎工学部、東京科学大学物質理工学院、電気通信大学情報理工学域、神戸大学理学部(物理学科は物理の筆記)、九州大学理学部(物理学科は筆記と口頭試問)
- 標準ルートの目安——徳島大学理工学部、島根大学総合理工学部、和歌山大学システム工学部、名古屋工業大学工学部(基礎力学・基礎電磁気学)、神戸大学海洋政策科学部(力学・熱力学・電磁気学から2科目選択)
- 専門科目と一体の形式——神戸大学工学部(学科により数学・物理に加えて電気回路など)、横浜国立大学理工学部(基礎科目の物理と、材料力学・流体力学・熱力学などの専門科目)、京都工芸繊維大学工芸科学部(課程により力学・電磁気学・電気回路の専門基礎)
- 口頭試問で問われる形式——九州大学工学部のように、筆記ではなく口頭で数学・物理・化学の基礎学力を問う大学もあります。「解ける」に加えて「説明できる」練習が要ります
同じ大学でも学科・プログラムによって科目と範囲が違います。ここに挙げたのは目安です。必ず志望する学科の募集要項で確認してください。志望校がまだ絞れていない人は、工学部編入の実施大学一覧や理学部編入の実施大学一覧から科目で比べられます。
使い方:「解ける」ではなく「白紙から書ける」まで
物理の演習書の使い方で効くのは、数学と同じく1冊を3周して白紙から解ける状態にすることです。周回ごとのやり方は理系の編入試験の参考書に書いたので、ここでは物理に固有の注意だけ足します。
- 「どの法則から出発したか」を毎回言えるようにする。運動方程式か、エネルギー保存か、ガウスの法則か。ここが言えない正解は、数値が合っただけの暗記です。口頭試問がある大学では、この練習がそのまま本番対策になります
- 途中の式変形を省かず書く。編入試験の多くは記述式で、途中式が採点対象です。文字のまま最後まで解いて、最後に値を入れる書き方に慣れてください
- 図を描いてから式を立てる。力の図示、ガウス面の取り方など、図を飛ばすと立式の根拠を説明できなくなります
独学で進める人におすすめの物理の参考書の組み合わせ
編入の物理を予備校に通わず1人で進める人は少なくありません。高専や短大に通いながら、あるいは働きながら準備する場合、疑問をその場で質問できる相手がいないという前提で本を選ぶ必要があります。
独学でいちばん多い失敗は、解答が簡潔な本を選ぶことです。「答えは合っているのに、なぜその式を立てるのか分からない」という状態で止まると、そこから先へ進めません。書店で選ぶときは、解いた後の解説が、式変形の途中まで書かれているかを必ず確認してください。
独学で進めるときの組み合わせは、「解説の詳しい教科書1冊」+「解答が丁寧な問題集1冊」が基本です。ここに志望校の過去問を足せば足ります。冊数を増やすより、同じ本を3周するほうが、質問できる相手がいない環境では確実に伸びます。
それでも詰まったときの手順を決めておいてください。15分考えて分からなければ解答を見る、解答を読んでも分からなければ印を付けて次に進み、1週間後にもう一度戻る。1問に何時間もかけるより、この回し方のほうが独学では効きます。
あとは、いまの自分の位置から何を先にやるかです。志望校と現在の状況をうかがったうえで、順番を整理します。
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まとめ
- 買う前に、物理が課されるか・どの分野までかを募集要項で確かめてください。力学・電磁気が柱で、熱・波動は大学によります
- 高校物理に不安があるなら、エッセンスで先に穴を埋める。大学の本に直接入ると現象がつかめません
- 標準ルートは、教科書レベルの力学・電磁気+弱点克服の2冊まで。難関大ルートはそこに分野別の演習書を1段足します
- 数学と並行して進める。微分積分の基本計算ができてから大学レベルの物理へ
- 「白紙から書ける」「どの法則から出発したか言える」を仕上がりの基準にする。記述式でも口頭試問でも、ここが得点になります
理系全体の科目の組み立てと数学・化学のルートは理系の編入試験の参考書へ。志望校ごとの科目・範囲は工学部編入|実施大学一覧・難易度ランキングと理学部編入|実施大学一覧・難易度ランキングから各大学の記事で確認できます。
よくある質問
編入試験の物理は、どの分野から始めればよいですか?
力学から始めてください。力学は配点の面でも学習順の面でも物理の中心で、電磁気や熱力学を学ぶときの考え方の土台になります。高校物理に不安がある場合は、大学の本に入る前に高校範囲の力学を固めてください。力学で「法則から式を立てて微分積分で解く」型を作ってから電磁気に進むと、同じ型がそのまま使えるため、2分野目以降は最初より短い時間で仕上がります。
高校で物理を履修していなくても、編入試験の物理に間に合いますか?
間に合わせている人はいますが、準備期間を長めに取ってください。大学の物理は高校物理の理解を前提にしており、いきなり大学の教科書に入ると、数式は追えても現象がつかめません。まず高校範囲の力学と電磁気を問題集で固め、そのうえで大学の力学に入る順序が確実です。あわせて微分積分の計算力が前提になるため、数学の進み具合と足並みをそろえて計画を立ててください。
熱力学や波動まで勉強する必要はありますか?
志望校の募集要項で範囲を確かめてから決めてください。編入試験の物理の柱は力学と電磁気で、熱力学まで含むかどうかは大学によって分かれます。波動を大学レベルで出す大学はさらに限られ、多くは高校範囲と力学の単振動の延長で対応できます。範囲に入っていない分野に使った時間は、そのまま力学・電磁気の演習量を削ることになるので、確認より先に本を買わないでください。
数学がまだ途中でも、物理の勉強を始めてよいですか?
高校範囲の確認は数学と関係なく始められますが、大学レベルの力学・電磁気は、微分積分の基本的な計算ができるようになってから入ってください。大学の物理は微分積分を道具として使うため、数学が入門段階のうちに物理の演習書へ入ると、物理でつまずいているのか数学でつまずいているのかが分からなくなります。電磁気ではベクトルの扱いにも慣れておく必要があるため、線形代数と並行して進めるのが順当です。
口頭試問で物理が問われる場合は、何を準備すればよいですか?
筆記と同じ範囲を、口頭で説明できる状態まで持っていってください。口頭試問では、解けるかどうかに加えて「なぜその法則を使うのか」を言葉で説明させられます。普段の演習で、解き終えた問題について「どの法則から出発したか」「どこで近似を使ったか」を声に出して説明する練習を足すのが効果的です。定義や法則の名前を正確に言えるようにしておくことも、筆記だけの対策との違いになります。
物理の演習書は何冊やればよいですか?
分野ごとに1冊を、白紙から解ける状態まで繰り返すのが基本です。標準ルートなら力学と電磁気で各1冊、難関大ルートでもそこに分野別の演習書を1冊ずつ足す程度で足ります。同じ分野の演習書を並行して何冊も進めると、どれも中途半端になります。解けない問題が多くて本を替えたくなったときは、演習書ではなく教科書レベルの本に戻るのが正しい対処です。
ほかの科目の参考書ルート
理系の編入試験では、複数の科目を同時に進めることになります。ほかの科目の順序も、あわせて確認してください。

















