編入数学の参考書ルート|微分積分・線形代数を何からどの順で
編入試験の数学は、理系のほぼすべての学部で課され、経済学部でも一部の大学が課す、編入でいちばん出番の多い筆記科目です。そして核になる分野は、どの大学でもほぼ共通しています。微分積分と線形代数です。
参考書選びで失敗する形も決まっています。教科書レベルを飛ばして編入向けの演習書から入るか、志望校が出さない範囲まで手を広げるか、そのどちらかです。この記事では、入門から過去問までの4段階の順序を先に示したうえで、標準ルートと難関大ルートの2本立てで「どこまでやるか」を分けて説明します。
ここでいう難関大ルートは、旧帝大や神戸大学、筑波大学のように出題範囲が広い、あるいは問題の水準が高い大学を指します。標準ルートは、微分積分と線形代数を中心に基礎的な学力を確かめる出題の大学です。
なお、この記事は理系の編入試験の参考書(数学・物理・化学の総合ガイド)の数学編です。物理や化学も課される人は、科目の組み合わせ方を含めて総合ガイドから読んでください。
この記事で分かること
- 買う前に確かめること(数学の「範囲」は大学ごとに違います)
- 入門→教科書レベル→編入向けの演習→過去問の4段階
- 標準ルートと難関大ルートの分かれ目と、それぞれで使う本
- 微分方程式・複素関数・確率統計まで必要な大学の見分け方
- 経済学部の編入数学で使う本
- 数学を課す大学の探し方
編入試験は大学ごとに出願資格も科目も違います。いまの学年・在籍区分で受けられる大学がどこかは、条件を突き合わせて初めて分かります。
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買う前に確かめること:数学の「範囲」は大学で違う
同じ「数学」でも、募集要項に書かれる範囲は大学ごとに違います。ここを確かめずに本を買うと、出ない分野に時間を使うことになります。
| 確かめること | 実際の例 |
|---|---|
| 微分積分と線形代数 だけか | 名古屋工業大学工学部は数学の範囲を微分積分学・線形代数学と示しています。この2分野だけなら、必要な本は数冊で足ります |
| 微分方程式や 複素関数まで含むか | 埼玉大学工学部は微分積分学・線形代数に加えて常微分方程式を、筑波大学理工学群の応用理工学類は微分方程式・複素関数までを範囲に含めています |
| 数学と何がセットか | 神戸大学工学部は数学と物理、神戸大学経済学部は数学と経済学という組み合わせです。数学にかけられる時間は、セットの科目で決まります |
| 解答の形式 | 途中式を書かせる記述式が主流です。答えだけ合わせる練習では通用せず、白紙から式変形を書き切る練習が要ります |
複素関数や微分方程式まで求められるかどうかで、必要な期間は数か月変わります。志望校の募集要項と過去問を先に見て、範囲を確定させてから本を買ってください。
編入数学は4段階で積み上げる
順序はどの大学を受ける場合でも同じです。順序を飛ばさないことが、いちばん効きます。
| 段階 | 使う本 |
|---|---|
| 1. 入門 大学の数学が初めて/苦手 | 初めから学べる微分積分キャンパス・ゼミ、やさしく学べる微分積分、やさしく学べる線形代数 |
| 2. 教科書レベル 定義と定理を通す | 微分積分キャンパス・ゼミ、線形代数キャンパス・ゼミ、大学教養 微分積分、新微分積分I |
| 3. 編入向けの演習 編入で出る形に慣れる | 編入数学入門 講義と演習、編入数学徹底研究、大学編入のための数学問題集 |
| 4. 仕上げ 実際の入試問題で通す | 編入数学過去問特訓、志望校の過去問 |
3の演習書から始めないでください。編入向けの演習書は「教科書の内容を知っている人」向けに作られています。定義や定理を知らないまま解説を読むと、解き方の丸暗記になり、形を変えた問題に対応できなくなります。
合格した先輩の体験談では、本と並行して予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」(ヨビノリ)の動画で概念をつかんでから演習に入る、という使い方もよく挙がります。動画は理解の入口として使い、手を動かす演習は必ず本で行ってください。
標準ルート:教科書レベルを固めて徹底研究を1冊仕上げる
標準ルートの到達点は、微分積分と線形代数を教科書レベルで固め、編入数学徹底研究を白紙から解ける状態にすることです。そのうえで志望校の過去問に入ります。
たとえば埼玉大学工学部のように筆記が数学と面接だけの大学や、名古屋工業大学工学部のように範囲が微分積分学・線形代数学と示されている大学では、この2分野の完成度がそのまま合否に直結します。手を広げるより、決めた本を3周して仕上げるほうが確実です。
徹底研究が難しく感じる場合は、編入数学入門 講義と演習を間に挟むと、教科書レベルとの橋渡しになります。演習量が足りないと感じたら、演習 微分積分キャンパス・ゼミや演習 線形代数キャンパス・ゼミのように同じシリーズの演習版で埋めるのが手戻りの少ない方法です。
標準ルートで使う本です。入門の3冊は、必要な人だけで構いません。
難関大ルート:もう1段の演習と範囲の拡張
難関大ルートは、標準ルートの先にもう1段足します。足し方は2方向あります。
| 足す方向 | 使う本 |
|---|---|
| 演習の水準を上げる | 編入数学過去問特訓を難度の高いC問題まで解く、または編入の微分積分徹底研究・編入の線形代数徹底研究で分野ごとに深掘りする。大学編入試験問題 数学・徹底演習を併用する人もいます |
| 範囲を広げる | 微分方程式は常微分方程式キャンパス・ゼミ、複素関数は複素関数キャンパス・ゼミ、確率統計は確率統計キャンパス・ゼミが入口になります |
範囲の拡張が要るかどうかは大学ごとに違います。筑波大学理工学群の応用理工学類は微分方程式・複素関数まで範囲に含み、埼玉大学工学部は常微分方程式までです。志望校が出さない分野は、難関大ルートでも後回しで構いません。
また、東京大学工学部のように1次試験が英語と数学を軸に組まれる大学や、大阪大学工学部のように数学に加えて学科別の専門基礎まで課す大学では、数学を早めに仕上げて専門科目に時間を回す計画が要ります。仕上げの時期を標準ルートより2か月ほど前倒ししてください。
難関大ルートで足す本です。
経済学部の編入数学
数学を課すのは理系だけではありません。神戸大学経済学部は線形代数と微分積分に関する基礎的問題を経済学とセットで課し、東北大学経済学部は経済数学と経済学の基礎問題を出します。広島大学経済学部も専門科目の中に数学の問題を含み、名古屋大学経済学部のように統計学まで範囲に入る大学もあります。
経済学部志望の場合、理系の演習書をそのまま使うより、経済学で使う形に絞った本から入るほうが効率的です。微分積分と線形代数の基礎は理系と同じ本(マセマのキャンパス・ゼミなど)で作れますが、仕上げは経済数学の本に切り替えてください。
経済学部の編入試験全体の科目構成は経済学系の編入実施大学一覧から、大学ごとの詳細は各大学の対策記事から確認できます。
数学を課す大学の探し方
数学が課されるかどうか、どの範囲までかは、学部系統ごとの一覧から大学別の対策記事へ進むと確認できます。
- 工学部編入の実施大学一覧——数学の比重がいちばん高い系統です。物理とセットの大学が多くあります
- 理学部編入の実施大学一覧——数学科は数学のみ、他学科は各専門科目という分かれ方が典型です
- 情報学系編入の実施大学一覧——名古屋大学情報学部のように、数学と情報系科目の組み合わせが中心です
- 経済学系の実施大学一覧——数学を課す大学と課さない大学が分かれます。課さない大学志望なら数学は不要です
いつまでに何を終えるか
秋(10月・11月)に試験がある大学を受ける前提での目安です。始める時期が遅い場合は、入門と教科書レベルを圧縮します。
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試験の1年前
志望校の数学の範囲を確認し、買う本を決める。必要なら入門段階に着手
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6〜8か月前
微分積分・線形代数を教科書レベルで一周する。ここが最も時間がかかります
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4〜6か月前
編入数学徹底研究などの演習書に入る。難関大ルートは微分方程式・複素関数など拡張分野もここで
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2〜3か月前
過去問と編入数学過去問特訓。時間を計り、途中式まで書く形で解く
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1か月前
間違えた問題の解き直しだけに絞る。新しい本を増やさない
過去問は最後に取っておくものではありません。勉強を始める前に一度目を通し、どの分野がどんな形式で出るかを見てください。そこで見た形式が、買う本と進める順序を決めます。
使い方で差がつく:1冊を3周する
本の選び方より効くのが使い方です。1周目は解説を読みながら通し、2周目は解答を閉じて白紙から解き、3周目は2周目で詰まった問題だけをやり直します。記述式では途中の式変形が採点されるため、「答えを見て分かった」で終えると本番で手が止まります。
解けないときは、方針が立たないのか、方針は立つが計算が合わないのかを区別してください。前者は教科書レベルに戻るサイン、後者は同じ本の類題を繰り返すサインです。この判断を含めた参考書の使い方全般は、理系の参考書ルート総合ガイドで詳しく説明しています。
数学を独学で進めるときに気をつけること
編入数学を独学で進める人は多く、実際それで合格しています。ただし、質問できる相手がいない環境には特有の落とし穴があります。
1つめは、証明を飛ばしてしまうことです。独学だと「計算ができれば先に進める」という判断をしがちですが、編入数学では定理の意味を理解しているかを問う出題があります。線形代数の一次独立、固有値の意味などは、計算手順だけ覚えても答案が書けません。
2つめは、自分の答案の穴に気づけないことです。答えが合っていても、途中の論理が飛んでいれば減点されます。独学では、解答例と自分の答案を1行ずつ突き合わせる作業でこれを補ってください。「同じ答えだから正解」で済ませると、本番で書き方の減点を積み重ねます。
3つめは、詰まったときに止まってしまうことです。数学は前提が積み上がる科目なので、1か所で止まると全体が進まなくなります。15分考えて分からなければ解答を見ると決めてください。解答を読んで理解したら、その場で解き直して、1週間後にもう一度解きます。
独学でも到達できますが、答案を人に見てもらう機会は必要です。計算の正誤は自分で判定できても、論理の飛躍と記述の減点は自分では見つけられません。
あとは、いまの自分の位置から何を先にやるかです。志望校と現在の状況をうかがったうえで、順番を整理します。
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まとめ
- 編入数学の核は微分積分と線形代数。まず志望校の範囲を確かめてから本を買ってください
- 順序は入門→教科書レベル→編入向けの演習→過去問の4段階。演習書から始めないでください
- 標準ルートは、教科書レベルを固めて編入数学徹底研究を1冊仕上げるまで
- 難関大ルートは、そこに演習の1段(過去問特訓・分野別徹底研究)と範囲の拡張(微分方程式・複素関数・確率統計)を足す
- 経済学部の数学は、仕上げを経済数学の本に切り替える
- 1冊を3周。白紙から途中式まで書けるかを毎回確かめてください
物理・化学を含めた理系全体の組み立ては理系の編入試験の参考書 総合ガイドへ。出願の段取りは編入の出願手続きとスケジュール、出願できるかどうかの条件は編入の出願資格と必要単位にまとめています。
よくある質問
編入数学の参考書は何冊必要ですか?
標準ルートなら、教科書レベルの微分積分・線形代数で各1冊、編入向けの演習書1冊、過去問演習用1冊の計4冊前後が目安です。大学の数学が初めての人はその前に入門書が1〜2冊加わります。難関大ルートでも、そこに分野別の演習書や拡張分野の本が2〜3冊足される程度です。冊数を増やすより、決めた本を白紙から解ける状態にするほうが確実に得点につながります。
いきなり編入数学徹底研究から始めてもよいですか?
教科書レベルの微分積分・線形代数が身についているなら問題ありません。高専で既習の人や、大学の教養課程で単位を取って内容も覚えている人がこれに当たります。判断に迷うなら、徹底研究の最初の章を数問解いてみてください。解説を読んでも式の意味が追えないなら、教科書レベルの本を先に1冊通すほうが、結果的に早く仕上がります。
高校数学に戻る必要はありますか?
微分積分の計算(合成関数の微分、置換積分・部分積分)と三角関数・指数対数の扱いに不安があるなら、その分野だけ高校の教材で確認してください。大学の微分積分はこれらを前提に進むため、ここが曖昧なままだと入門書でもつまずきます。ただし高校範囲を全部やり直す必要はありません。穴のある分野だけを短期間で埋めて、早めに大学範囲へ進んでください。
微分方程式・複素関数・確率統計はやるべきですか?
志望校の範囲に入っている場合だけやってください。これらの分野は出題する大学と出題しない大学がはっきり分かれており、募集要項に範囲として明記されていることが多いです。範囲外の分野に使った時間は、そのまま微分積分・線形代数の演習量を削ります。志望校が複数あり範囲が揃わない場合は、共通する微分積分・線形代数を先に仕上げ、拡張分野は本命校の範囲に合わせて足すのが安全です。
経済学部の編入でも理系と同じ参考書でよいですか?
基礎までは同じで構いません。微分積分と線形代数の基礎は、理系と同じ教科書レベルの本で作れます。ただし仕上げは分けてください。経済学部の数学は経済学の応用(最適化、行列の経済モデルへの利用など)と結びついた出題が中心のため、経済学で出る数学のような経済数学の本で、出題される形に寄せていくほうが効率的です。経済学とセットで課されるため、数学だけに時間をかけすぎない配分も大切です。
過去問はいつから解けばよいですか?
入手した時点で一度目を通してください。解くためではなく、出る分野と形式を知って買う本を決めるためです。本格的に解くのは演習書を1冊仕上げたあと、試験の2〜3か月前からで、時間を計って途中式まで書く形で解きます。編入数学は記述式が主流のため、白紙から最後まで書き切れるかどうかを基準に仕上がりを判断してください。
ほかの科目の参考書ルート
理系の編入試験では、複数の科目を同時に進めることになります。ほかの科目の順序も、あわせて確認してください。


















