電磁気学 参考書ルートと電気回路何をどの順で
電気電子系の編入試験は、出る科目がはっきりしている点でほかの分野と違います。電気回路と電磁気学。この2つが柱です。要項を見ると、多くの大学がこの2科目を名指しで挙げています。
範囲がはっきりしているぶん、やるべきことも明確です。ただし2つ、つまずきどころがあります。
ひとつは、電磁気学が「高校物理の延長」ではないこと。大学の電磁気学はベクトル解析(発散・回転・線積分・面積分)の上に成り立っていて、数学が足りないまま入ると、式の意味が取れないまま計算だけ追うことになります。もうひとつは、電気回路が「公式を覚える科目」ではないこと。過渡現象や交流回路は、微分方程式と複素数の扱いがそのまま問われます。
この記事では、志望校がどちらをどの深さで出すかを確かめたうえで、電気回路と電磁気学を何からどの順で積むかを整理します。
この記事で分かること
- 参考書を買う前に確かめること(ここで必要な範囲が決まります)
- 電気回路・電磁気学それぞれの読む順序と、つまずきどころ
- 数学(ベクトル解析・微分方程式・複素数)をどこまで戻るか
- 電気電子の科目を課している大学と、出題の型
- いつまでに何を終えるかの目安と、やってはいけない使い方
C言語・アルゴリズム・論理回路が中心の人は、大学編入 情報系 参考書ルートをご覧ください。電気回路は両方の分野で出ますが、情報系では回路の基礎まで、電気電子系では過渡現象・交流回路まで深く問われるという違いがあります。
編入試験は大学ごとに出願資格も科目も違います。いまの学年・在籍区分で受けられる大学がどこかは、条件を突き合わせて初めて分かります。
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買う前に決めること
先に志望校の募集要項で、専門科目に何が並んでいるかを確かめてください。電気電子系は範囲がはっきりしている分野ですが、大学によって「電気回路だけ」「電磁気学だけ」「両方」「選択制」と構成が変わります。
| 確かめること | なぜ必要か |
|---|---|
| 電気回路と電磁気学の両方か | ここが最大の分岐です。両方を課す大学、片方だけの大学、複数科目から選択させる大学があります。片方でよいなら、その1科目を深くやるほうが確実です。 |
| 過渡現象・交流回路まで入るか | 電気回路は、直流の抵抗回路までなら計算で足りますが、過渡現象(RL・RC回路)と交流回路(フェーザ・共振)が入ると、微分方程式と複素数が必要になります。過去問で確かめてください。 |
| 数学が別に課されるか | ほとんどの大学で専門とは別に数学があります。電磁気学はベクトル解析、電気回路は微分方程式と複素数の上に成り立つので、数学の勉強がそのまま専門の土台になります。 |
| 英語はスコア提出か筆記か | TOEICのスコア提出型が主流です。スコア提出型なら、参考書より先に受験日程を押さえてください。返却に時間がかかるため、直前の受験では出願に間に合わないことがあります。 |
| 口頭試問があるか | 面接で専門を問う大学があります。解けるだけでなく、解き方を口で説明できる状態まで必要です。 |
志望校が課すのはどちらか、両方か
実際の要項を確認した例です。「電気回路と電磁気学の2本柱」が基本形で、そこに何が足し引きされるかが大学ごとの違いになります。
| 大学 | 学科と専門科目の構成 |
|---|---|
| 山口大学 | 工学部 電気電子工学科 電磁気学・電気回路と面接。2科目の典型例です(同じ工学部でも機械工学科は英語・数学・面接、社会建設工学科は構造力学・土質力学・水理学と、学科ごとに別物です)。 |
| 鹿児島大学 | 工学部 電気電子工学プログラム 電気磁気学・電気回路学、数学、面接。「電気磁気学」という科目名で示される大学もあります。 |
| 三重大学 | 工学部 電気電子工学コース 英語(TOEIC)・数学・電磁気学・電気回路・面接。英語はスコア提出型です。 |
| 岐阜大学 | 工学部 電気電子情報工学科 数学と専門科目、面接。専門は電気回路・電磁気学に加えて電子回路まで範囲に入ります。面接にも配点があり、口頭試問を含みます。 |
| 徳島大学 | 理工学部 電気電子システムコース 数学/英語(TOEIC・TOEFL)/専門科目。専門は電気磁気学・回路理論が範囲です。 |
| 東京電機大学 | 工学部第二部 電気電子工学科 数学・英語・回路理論・電磁気学と個別面接。時間割も専門科目1(回路理論)と専門科目2(電磁気学)に分かれています。 |
| 香川大学 | 創造工学部 英語(TOEICのスコア)と筆記試験。筆記は数学+「基礎力学/電磁気学/プログラミング/化学」から1科目選択。電磁気学を選べば、力学やプログラミングは不要です。 |
| 室蘭工業大学 | 理工学部 英語はTOEICのスコア換算、専門科目と面接。学力試験と面接の合計に調査書を加えて総合判定されます。 |
試験科目は年度によって変わります。募集要項は必ず最新年度のものでご確認ください。各大学のリンク先に、要項を確認した時点の詳しい内容をまとめています。
電磁気学:数学に戻るかどうかで決まる
電磁気学でつまずく人の大半は、物理ではなく数学で止まっています。大学の電磁気学は、ベクトル解析(発散・回転・勾配、線積分・面積分)を道具として使います。ガウスの法則もアンペールの法則も、積分形と微分形の両方で出てきます。
式を見て「何を足し合わせているのか」が言えないなら、先に数学に戻ってください。電磁気学の参考書を何冊増やしても、そこは埋まりません。
順序は「教科書で筋を通す → 演習で手を動かす」
まず教科書を1冊、通しで読みます。静電場から始まり、導体と誘電体、電流と磁場、電磁誘導、マクスウェル方程式へ——この流れを一度通すことで、個々の公式がどこから来たかが分かります。
そのうえで演習です。編入試験は計算が中心なので、手を動かした量がそのまま得点になります。合格した先輩がよく使っているのも演習書です。
教科書として使う本です。
演習で使う本です。編入対策では、ここに最も時間を使います。
『弱点克服 大学生の電磁気学』は、つまずきやすい箇所から入る構成なので、教科書を通したあとの穴埋めに向きます。『電磁気学演習』は問題量が多く、手を動かす段階の主戦力になります。
電気回路:直流で止まらず過渡現象と交流まで
電気回路は、直流の抵抗回路(キルヒホッフの法則、重ね合わせ、テブナンの定理)で止まってしまう人が多い科目です。しかし編入試験で差がつくのは、その先の過渡現象と交流回路です。
過渡現象(RL回路・RC回路のスイッチ切り替え)は、微分方程式そのものです。交流回路(フェーザ表示、インピーダンス、共振、電力)は、複素数の扱いがそのまま問われます。数学が土台になっているのは電磁気学と同じです。
順序は「教科書で直流から交流まで通す → 演習で計算量をこなす」。演習では、回路図を自分で描き直してから解く癖をつけてください。与えられた図のまま考えると、等価回路への変形で手が止まります。
『詳解 電気回路演習』は上下巻で、上巻が直流・交流の基礎、下巻がその先を扱います。志望校が過渡現象まで出すなら下巻まで、直流中心なら上巻で足ります。過去問で確かめてから買ってください。
数学はどこまで戻るか
電気電子系は、数学が専門の土台になっている分野です。必要なのは次の3つです。
| 数学の範囲 | どこで使うか |
|---|---|
| ベクトル解析 | 電磁気学の全体。発散・回転・勾配、線積分・面積分。ガウスの法則とアンペールの法則を、積分形と微分形の両方で読むために必要です |
| 微分方程式 | 電気回路の過渡現象。RL・RC回路のスイッチ切り替えは、1階の微分方程式を解く問題そのものです |
| 複素数 | 交流回路。フェーザ表示、インピーダンス、共振。複素数の計算に慣れていないと、式変形で時間を使い切ります |
専門の参考書を買う前に、この3つが手を動かせる状態かを確かめてください。足りないと分かったら、専門より先に数学です。進め方は編入数学の参考書ルート|微分積分・線形代数を何からどの順でにまとめています。
また、電磁気学は物理の力学と地続きです。高校物理の電磁気で止まっている自覚があるなら、大学編入 物理の参考書ルートで土台を確認してから入るほうが早く進みます。
いつまでに何を終えるか
| 時期 | やること |
|---|---|
| 受験の10〜6か月前 | 要項で電気回路・電磁気学のどちらが必要かを確定する。数学(ベクトル解析・微分方程式・複素数)が手を動かせる状態か確認し、足りなければ先に埋める。英語がスコア提出型なら受験日を予約する。 |
| 6〜3か月前 | 教科書を通して読み、公式の出どころを押さえる。電気回路は直流から交流まで。この時期に過去問を一度解き、過渡現象まで出るかを確かめる。 |
| 3〜1か月前 | 演習書で計算量をこなす。電磁気学は積分の設定、電気回路は等価回路への変形を反復。過去問を時間を計って解く。 |
| 直前1か月 | 間違えた問題の解き直しと、解法の手順の確認。新しい参考書には手を出さない。口頭試問がある大学は、解いた問題を口で説明する練習をする。 |
やってはいけない3つの使い方
1つめ。数学を飛ばして電磁気学に入ることです。ベクトル解析が分からないまま教科書を読むと、式を目で追うだけになります。「この積分は何を足し合わせているのか」が言えない状態で先に進んでも、演習で必ず止まります。遠回りに見えても、数学に戻るのが最短です。
2つめ。電気回路を直流で終わらせることです。抵抗回路の計算は分かりやすく、できるようになった実感も得やすいのですが、編入試験で差がつくのは過渡現象と交流回路です。志望校の過去問でここが出るなら、時間配分を変えてください。
3つめ。情報系の参考書で代用することです。論理回路やプログラミングの教材は、電気回路の過渡現象や電磁気学の積分計算をカバーしません。逆も同じです。志望校が「電気回路・電磁気学」と書いているのか「情報基礎・プログラミング」と書いているのかを、要項の言葉どおりに確認してください。
あとは、いまの自分の位置から何を先にやるかです。志望校と現在の状況をうかがったうえで、順番を整理します。
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まとめ
- 最初にやることは、要項で電気回路と電磁気学のどちらが必要かを確かめることです。片方でよい大学、両方の大学、選択制の大学があります
- 電磁気学でつまずく原因の大半は数学です。ベクトル解析に戻るかどうかで進み方が変わります
- 電気回路は直流で止まらないこと。過渡現象は微分方程式、交流回路は複素数がそのまま問われます
- 順序は教科書で筋を通してから演習。編入試験は計算が中心なので、手を動かした量が得点になります
- 情報系の教材では代用できません。要項の科目名どおりに教材を選んでください
志望校の出題範囲に対して、いま手元の本で足りているかどうかは、過去問を1年分解けば分かります。オンライン編入学院では、志望校の出題範囲に合わせた学習計画のご相談を無料で受け付けています。
よくある質問
電磁気学と電気回路は、両方やらないといけませんか?
志望校によります。山口大学工学部の電気電子工学科や三重大学工学部の電気電子工学コース、東京電機大学工学部第二部の電気電子工学科のように、電磁気学と電気回路の2科目を課す大学が基本形です。一方、香川大学創造工学部は「基礎力学・電磁気学・プログラミング・化学」から1科目を選ぶ形式で、電磁気学を選べば力学やプログラミングは不要になります。岐阜大学工学部のように電子回路まで範囲に入る大学もあります。要項の科目名を確かめ、片方でよいならその1科目を深くやるほうが確実です。
電磁気学が理解できません。参考書を変えるべきですか?
その前に数学を確かめてください。電磁気学でつまずく人の大半は、物理ではなく数学で止まっています。大学の電磁気学はベクトル解析(発散・回転・勾配、線積分・面積分)を道具として使い、ガウスの法則もアンペールの法則も積分形と微分形の両方で出てきます。式を見て「何を足し合わせているのか」が言えないなら、参考書を増やしても解決しません。ベクトル解析に戻るのが最短です。数学が入っている状態なら、つまずきやすい箇所から入る演習書で穴を埋めてください。
電気回路はどこまで勉強すればよいですか?
志望校の過去問で、過渡現象と交流回路が出るかを確かめてください。直流の抵抗回路(キルヒホッフの法則、重ね合わせ、テブナンの定理)で止まってしまう人が多いのですが、編入試験で差がつくのはその先です。過渡現象(RL・RC回路のスイッチ切り替え)は1階の微分方程式を解く問題そのもので、交流回路(フェーザ表示、インピーダンス、共振、電力)は複素数の扱いが問われます。演習書が上下巻に分かれている場合、直流中心の大学なら上巻で足り、過渡現象まで出るなら下巻まで必要です。
情報系の参考書ルートとの違いは何ですか?
中心になる科目が違います。情報系はC言語・アルゴリズム・論理回路が主で、電気電子系は電気回路・電磁気学・電子回路が主です。電気回路は両方の分野で出ますが、扱いの深さが違います。情報系では回路の基礎までで足りることが多いのに対し、電気電子系では過渡現象や交流回路まで問われます。論理回路やプログラミングの教材は電磁気学の積分計算をカバーしませんし、逆も同じです。要項に書かれている科目名どおりに教材を選んでください。
数学はどの範囲が必要ですか?
ベクトル解析・微分方程式・複素数の3つです。ベクトル解析は電磁気学の全体で使い、微分方程式は電気回路の過渡現象、複素数は交流回路で必要になります。ほとんどの大学で専門科目とは別に数学が課されるため、数学の勉強がそのまま専門の土台になるのがこの分野の特徴です。専門の参考書を買う前に、この3つを手を動かせる状態かどうか確かめてください。足りないと分かったら、専門より先に数学に時間を使うほうが結果的に早く進みます。
英語はどう準備すればよいですか?
この分野ではTOEICのスコア提出型が主流です。三重大学工学部、徳島大学理工学部、香川大学創造工学部、室蘭工業大学理工学部などがスコアを利用します。スコア提出型でいちばん多い失敗は受験日程の読み違えです。スコアの返却には時間がかかるため、出願に間に合う受験回から逆算して早めに予約してください。読解型の対策が必要な場合の進め方は、編入試験の英語の記事にまとめています。
ほかの科目の参考書ルート
電気電子とあわせて数学・物理が必要な人、情報系も併願する人は、こちらもあわせてご覧ください。









