構造力学 参考書ルート土質力学・水理学まで何をどの順で
土木・建築系の編入試験には、ほかの学部と決定的に違う前提があります。同じ「構造力学」を課す大学どうしでも、必要な勉強量が数倍違うということです。専門科目が構造力学・土質力学・水理学から1科目を選べば済む大学がある一方で、4分野が同じ日に全部出て、どれも捨てられない大学があります。
この差は、参考書の冊数にそのまま跳ね返ります。1分野でよい人が3分野ぶんの本を買えば、時間が3分の1に薄まります。逆に4分野必須の大学を受ける人が構造力学だけを厚くやると、試験時間の4分の3を捨てることになります。
そしてもうひとつ、この分野には本選びで踏みやすい落とし穴があります。機械系の「材料力学」と、土木・建築系の「構造力学」は別の科目です。どちらも「はりのたわみ」「曲げモーメント」を扱うため書店では隣に並びますが、扱う対象も問題の形も違います。機械系の本で構造力学を勉強しても、試験で問われる形にはたどり着きません。
この記事では、まず志望校が何分野を課すかを確かめ、そのうえで構造力学・土質力学・水理学をどの順で積むかを整理します。
この記事で分かること
- 参考書を買う前に確かめること(ここで必要な冊数が決まります)
- 志望校によって必要な分野数がどれだけ違うか(要項で確認した実例)
- 構造力学・土質力学・水理学それぞれの読む順序
- 建築系で別に必要になる「計画・歴史」の扱い
- いつまでに何を終えるかの目安と、やってはいけない使い方
編入試験は大学ごとに出願資格も科目も違います。いまの学年・在籍区分で受けられる大学がどこかは、条件を突き合わせて初めて分かります。
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買う前に決めること
先に志望校の募集要項で、専門科目の構成を確かめてください。土木・建築系は「この1冊をやれば大丈夫」という科目ではなく、要項の1行で必要な本が2冊にも6冊にもなります。
| 確かめること | なぜ必要か |
|---|---|
| 専門科目は何分野か | ここが最大の分岐です。「構造力学・水理学・土質力学から1科目選択」と書かれていれば、得意な1分野に集中できます。「各1題・計4題」と書かれていれば、4分野すべてを同じ深さまで仕上げる必要があります。 |
| 選択制なら、いつ選ぶか | 出願時に選択する大学があります。願書を出した時点で受験科目が固定されるため、「直前に得意な方を選ぶ」ができません。出願前に過去問を見て決めてください。 |
| 数学が別に課されるか | 専門科目とは別に数学がある大学、専門の中に「土木基礎数学」として含まれる大学、数学のない大学があります。数学の対策時間を専門と別枠で確保するかどうかが変わります。 |
| 英語はスコア提出か筆記か | TOEICなどのスコア提出型が多い分野です。スコア提出型なら、参考書より先に受験日程を押さえてください。スコアの返却には時間がかかり、直前の受験では出願に間に合わないことがあります。専門科目と面接だけで英語試験のない大学もあります。 |
| 土木系か建築系か | 同じ学部でも学科で試験がまったく違います。建築系は構造力学に加えて建築計画・建築史・環境工学が問われることがあり、構造力学の本だけでは足りません。 |
志望校によって必要な分野数がこれだけ違う
実際の要項を確認した例です。同じ「構造力学を課す大学」でも、準備の重さがまったく違うことが分かります。
| 大学 | 学科と専門科目の構成 |
|---|---|
| 宮崎大学 | 工学部 土木環境プログラム 構造力学・水理学・土質力学から1科目選択(2027年度入試から)。1分野を仕上げれば受験できます。 |
| 日本大学 | 理工学部 土木工学科 「応用力学」「水理学」「地盤力学」の3科目から2科目選択。 |
| 徳島大学 | 理工学部 社会基盤デザインコース 構造力学・水理学・土質力学・材料学および鉄筋コンクリート力学の4科目から2科目選択(出願時に選択)。数学と英語(TOEIC・TOEFL)も別に課されます。 |
| 山口大学 | 工学部 社会建設工学科 構造力学・土質力学・水理学と面接。3分野すべてが範囲です。 |
| 横浜国立大学 | 都市科学部 都市基盤学科 「土木基礎数学」2問(必須)+「構造工学・水工学・地盤工学・土木計画学・コンクリート工学」(各2問・計10問)から4問を選択。独立した英語試験はありません。 |
| 東京都立大学 | 都市環境学部 都市基盤環境学科 「構造力学」「水理学」「土質・土木材料学」「土木計画学」から各1題・計4題(120分)。分野を捨てる戦略が取りにくい構成です。 |
| 岐阜大学 | 工学部 環境・防災デザインコース 社会基盤工学(構造力学・土質力学・水理学・材料およびコンクリート工学・土木計画学・環境衛生工学)の基礎的事項。面接にも配点があり、口頭試問を含みます。 |
| 熊本大学 | 工学部 土木建築学科 建築学プログラム 小論文・構造力学と面接。同じ学科でも社会基盤工学プログラムは「専門分野・数学」で、プログラムごとに試験が違います。 |
| 関西大学 | 環境都市工学部 建築学科(3年次) 建築計画学・建築構造力学と面接。出願にTOEICなどの英語資格が必要です。 |
| 東北工業大学 | 建築学部 建築学科 専門科目は建築計画(建築史・住宅計画・環境工学)と建築構造(構造力学・建築材料学)の2科目。英語・数学・面接も課されます。 |
試験科目は年度によって変わります。とくに宮崎大学のように2027年度入試から構成が変わる例があるため、必ず最新年度の募集要項でご確認ください。各大学のリンク先に、要項を確認した時点の詳しい内容をまとめています。
構造力学:教科書1冊と図を描く演習で積む
構造力学は、ほぼすべての土木・建築系の受験生が通る科目です。上の表でも、10大学すべてで出題範囲に入っていました。ここが土台になります。
この科目でつまずく理由ははっきりしています。力の流れが目に見えないことです。反力を求め、部材のどこにどれだけの曲げモーメントやせん断力がかかるかを図にする——この「図にする」作業が、公式の暗記では越えられません。
順序は「教科書 → 図を描く演習 → 不静定」
まず教科書で静定構造の考え方を通します。力のつり合い、反力、静定と不静定の違い。ここを飛ばして演習書から入ると、解答の手順は追えても「なぜその図になるか」が残りません。
次にM図・Q図・N図(曲げモーメント図・せん断力図・軸力図)を自分の手で描く演習に移ります。構造力学の試験は、この図が描けるかどうかで大半が決まります。そのうえで、たわみや変形、最後に不静定構造へ進みます。不静定は静定が固まっていない段階で手を出しても身につきません。
教科書として使う本です。
上巻が静定編、下巻が不静定編という構成です。上巻を終えないうちに下巻へ進まないでください。静定構造の反力と応力が出せない状態で不静定に入っても、計算の意味が取れません。試験まで3〜4か月を切ってから基礎の教科書に入ると、出題頻度の高い分野の演習時間が圧迫されます。基礎から積むなら受験の6〜10か月前が目安です。
図を描く演習で使う本です。1から順に進めます。
1がM図・Q図・N図、2が図解法とたわみなどの変形、3が不静定構造です。名前のとおり解説が詳しいぶん、1冊あたりの時間はかかります。学校の講義で静定梁・静定ラーメンを習い終えた時点から使い始めるのが噛み合います。試験の3〜4か月前に3冊まとめて始めるのは、量的に現実的ではありません。
土質力学:用語と条件を先に、計算はそのあと
土質力学は、受験生の間で学習経験の差がいちばん大きい科目です。学校の講義で扱う深さにばらつきがあり、初めて触れる状態から始める人も珍しくありません。
この科目の難しさは計算ではなく、用語と条件の区別にあります。全応力と有効応力、排水条件と非排水条件、粘性土と砂質土。どの条件の話をしているのかを取り違えると、計算そのものは合っていても答えが合いません。だから「まず用語と条件、計算はそのあと」の順になります。
最初の1冊です。
『絵とき土質力学』は数式よりも図で説明する構成で、土の性質という抽象的な話を目で捉えたい人に向きます。ただし概念の理解に重心があるため、これだけでは試験の計算に届きません。用語と条件を押さえたら、志望校の過去問と演習に移ってください。
『土質力学(近畿高校土木会)』は高校の土木科向けに編まれた教材で、大学の教科書よりさらに手前にあたります。土質力学にまったく触れたことがなく、大学の教科書で最初の数ページから止まってしまう場合の入口として使えます。すでに出題範囲を把握している人には、優先順位が見合いません。
水理学:式そのものより「使ってよい条件」
水理学は、上の表のうち宮崎大学・日本大学・徳島大学・山口大学・横浜国立大学・東京都立大学・岐阜大学で範囲に入っていました。選択制の大学では、ここを選ぶかどうかが最初の判断になります。
水理学の失点は、計算力よりも式の適用条件で起きます。ベルヌーイの定理、連続の式、管路の損失、開水路の流れ——どの状況でどの式を使ってよいのかを取り違えると、途中の計算がすべて無駄になります。公式を覚える前に、その式が成り立つ前提を言葉で説明できるようにしてください。
3分野をまとめて演習できる本です。
構造力学・土質力学・水理学の演習を1冊に収めた問題集です。3分野すべてが範囲に入る大学(山口大学・東京都立大学など)とは相性がよい一方、理論の解説は最小限です。講義や教科書で一通り学んだあと、計算に不安が残る段階で使ってください。
水理学は、この演習書に学校で使っている指定教科書を組み合わせるのが現実的です。編入対策のためだけに新しい教科書を買い足す必要はありません。手元の教科書で用語と式の前提を確認し、演習で手を動かす形で足ります。
建築系は「計画・歴史」が別に来る
建築系を受ける人は、構造力学だけでは足りません。上の表のとおり、東北工業大学は建築計画(建築史・住宅計画・環境工学)が構造と並ぶ1科目として出ますし、関西大学の建築学科は建築計画学と建築構造力学の2科目、熊本大学の建築学プログラムは小論文と構造力学という組み合わせです。
建築計画・建築史・環境工学は、力学のように積み上げる科目ではなく、覚えた範囲がそのまま得点になる科目です。学校の授業で使っている教科書とノートが最良の教材になります。過去問を先に見て、出題される時代や建物の範囲を絞ってから覚え始めてください。建築史は範囲を決めずに手を出すと、いくらでも時間を吸われます。
熊本大学のように小論文が課される場合は、力学の勉強とは別に、書く練習の時間が要ります。編入試験の小論文の対策もあわせてご覧ください。
数学と英語をどう組み込むか
専門科目に気を取られがちですが、合否は数学と英語で決まることが少なくありません。
数学は、多くの大学で専門科目とは別枠で課されます(徳島大学・東北工業大学など)。横浜国立大学のように「土木基礎数学」として専門の中に必須で組み込まれる大学もあります。微分積分と線形代数が土台になるため、専門科目の勉強と並行して早い時期から手をつけてください。進め方は編入数学の参考書ルートにまとめています。
英語は、この分野ではTOEICなどのスコア提出型が主流です。徳島大学・三重大学・東北大学・愛媛大学・室蘭工業大学などがスコアを利用します。スコア提出型でいちばん多い失敗は、受験日程の読み違えです。出願に間に合う受験回から逆算し、参考書を選ぶより先に受験日を押さえてください。一方、横浜国立大学の都市科学部のように独立した英語試験がない大学もあります。志望校がどちらかで、英語に割く時間の設計が変わります。詳しくは編入試験の英語の対策で整理しています。
いつまでに何を終えるか
| 時期 | やること |
|---|---|
| 受験の10〜6か月前 | 志望校の要項で専門科目の構成を確定する。選択制なら受験する分野を決める。構造力学の教科書で静定構造まで通す。英語がスコア提出型なら受験日を予約する。 |
| 6〜3か月前 | M図・Q図・N図の演習を反復し、たわみ・変形へ。土質力学は用語と条件を固める。数学を並行して進める。この時期に過去問を一度解き、出題の深さを測る。 |
| 3〜1か月前 | 不静定構造と、選択した分野の演習を仕上げる。過去問を時間を計って解く。4分野必須の大学なら、1題あたりの時間配分を体に入れる。 |
| 直前1か月 | 間違えた問題の解き直しと、図を描く手順の確認。新しい参考書には手を出さない。面接・口頭試問がある大学は、解いた問題を口で説明する練習をする。 |
やってはいけない3つの使い方
1つめ。機械系の「材料力学」の本で構造力学を勉強することです。どちらも、はりのたわみや曲げモーメントを扱います。しかし機械系の材料力学は部材そのものの応力とひずみが中心で、土木・建築の構造力学は骨組み全体に力がどう流れるか——トラス、ラーメン、不静定構造——が中心です。書店では隣に並び、目次も似て見えますが、試験で問われる形が違います。志望校が「材料力学」と書いているのか「構造力学」と書いているのかを、要項の言葉どおりに確認してください。
2つめ。課されない分野に手を広げることです。「構造力学・水理学・土質力学から1科目選択」の大学を受けるのに3分野を薄く回すと、選んだ1分野の完成度が落ちます。選択制は、絞ることが認められている試験です。絞ったぶんを深さに使ってください。
3つめ。演習書から始めることです。詳しい演習書ほど、基礎ができている前提で書かれています。力のつり合いや応力の意味が曖昧なまま詳細な解説を読むと、手順を写すだけで終わります。教科書を1冊通してから演習へ——この順序は、遠回りに見えて最短です。
あとは、いまの自分の位置から何を先にやるかです。志望校と現在の状況をうかがったうえで、順番を整理します。
ボタンを押すとオンライン編入学院の公式LINEが開きます。相談は無料で、志望校がまだ固まっていない段階でも大丈夫です。
まとめ
- 最初にやることは、要項で専門科目の構成を確かめることです。1科目選択の大学と、4分野必須の大学があります
- 構造力学は全員の土台です。教科書で静定構造を通し、M図・Q図・N図の演習を反復し、最後に不静定へ進みます
- 土質力学は用語と条件が先、計算はあとです。全応力と有効応力、排水条件の区別で失点が決まります
- 水理学は式の適用条件を言葉で説明できるように。演習書と学校の指定教科書の組み合わせで足ります
- 建築系は計画・歴史が別に来ます。過去問で範囲を絞ってから覚え始めてください
- 機械系の材料力学の本を構造力学に使わないこと。この分野でいちばん多い本選びの間違いです
志望校の出題範囲に対して、いま手元の本で足りているかどうかは、過去問を1年分解けば分かります。オンライン編入学院では、志望校の出題範囲に合わせた学習計画のご相談を無料で受け付けています。
よくある質問
構造力学と材料力学は、どちらの参考書を買えばよいですか?
志望校の募集要項に書かれている科目名のとおりに選んでください。土木・建築系の学科は「構造力学」、機械系の学科は「材料力学」と書かれているのが一般的です。どちらもはりのたわみや曲げモーメントを扱うため似て見えますが、材料力学は部材そのものの応力とひずみが中心、構造力学はトラスやラーメンなど骨組み全体の力の流れが中心です。試験で問われる形が違うため、片方の本でもう片方を代用することはできません。日本大学理工学部の土木工学科のように「応用力学」という科目名で出題される大学もあるので、科目名だけで判断せず、出題内容の記載まで確認してください。
構造力学・土質力学・水理学は、3つとも勉強しないといけませんか?
志望校によります。宮崎大学工学部の土木環境プログラムのように3科目から1科目を選択する大学、日本大学理工学部の土木工学科や徳島大学理工学部の社会基盤デザインコースのように2科目を選ぶ大学、山口大学工学部の社会建設工学科のように3分野すべてが範囲の大学、東京都立大学都市環境学部の都市基盤環境学科のように4分野から各1題が出る大学があります。選択制の大学では、出願時に科目を選ぶ場合があるため、願書を出す前に過去問を見て決めてください。
土質力学をまったく習っていません。何から始めればよいですか?
図で説明する入門書から入ってください。土質力学は学校の講義で扱う深さにばらつきがあり、初めて触れる状態から始める受験生も珍しくありません。この科目は計算よりも、全応力と有効応力、排水条件と非排水条件、粘性土と砂質土といった用語と条件の区別でつまずきます。まず用語と条件を言葉で説明できるようにしてから、計算演習と過去問に移ってください。大学の教科書の最初で止まってしまう場合は、高校の土木科向けに書かれたさらに手前の教材を挟む方法もあります。
構造力学の演習書は、いつから始めるのがよいですか?
学校の講義で静定梁・静定ラーメンを習い終えた時点が目安です。詳しい演習書ほど、基礎が入っている前提で書かれているため、力のつり合いや応力の意味が曖昧なまま読むと、解答の手順を写すだけになります。逆に試験の3〜4か月前から詳しい演習書を何冊も始めるのは、量的に間に合わないことが多くなります。教科書で静定構造を通し、M図・Q図・N図の演習に入り、たわみや変形を経て不静定構造へ——この順序で進めてください。
英語はTOEICのスコア提出と筆記試験のどちらですか?
この分野ではスコア提出型が主流です。徳島大学理工学部、三重大学工学部、東北大学工学部、愛媛大学工学部、室蘭工業大学理工学部などがTOEICやTOEFLのスコアを利用します。スコア提出型でいちばん多い失敗は受験日程の読み違えです。スコアの返却には時間がかかるため、出願に間に合う受験回から逆算して早めに予約してください。一方、横浜国立大学都市科学部のように独立した英語試験がなく、専門科目と面接だけで選抜する大学もあります。志望校がどちらかで、英語に割く時間の設計が変わります。
専門科目のほかに、数学はどれくらい必要ですか?
多くの大学で専門科目とは別に課されます。徳島大学理工学部や東北工業大学建築学部のように数学が独立した科目になっている大学のほか、横浜国立大学都市科学部の都市基盤学科のように「土木基礎数学」が専門科目の中の必須問題として組み込まれる大学もあります。範囲は微分積分と線形代数が土台になることが多く、専門科目と並行して早い時期から進めるのが安全です。専門科目の対策を始めてから数学に手をつけると、直前期に両方が残ります。
ほかの科目の参考書ルート
数学や物理を併せて受ける人、あるいは併願先で別の科目が必要な人は、こちらもあわせてご覧ください。









