哲学 入門書から歴史学・教育学まで編入の参考書ルート
人文系の編入試験には、理系や経済・経営系と決定的に違う前提があります。同じ文学部の中でさえ、学科ごとに試験がまったく別物だということです。
たとえば東洋大学文学部では、多くの学科が小論文と面接なのに対し、哲学科だけはドイツ語かフランス語の筆記が課されます。駒澤大学文学部では、地理学科が「地理学に関する基礎知識」、歴史学科と英米文学科が「論文」、国文学科が「日本文学」と、専門科目の名前からして違います。「文学部の参考書」という括りは存在しません。
そしてもうひとつ、人文系に共通する特徴があります。問われ方が「説明させる」形だということです。用語の意味を200字前後で書かせる、テーマについて論文を書かせる、面接で試問する——選択肢を選ぶ試験ではありません。覚えているだけでは書けず、自分の言葉に直せて初めて点になります。
この記事では、まず志望学科の出題形式を確かめたうえで、哲学・歴史・地理・教育学それぞれを何からどの順で読むかを整理します。
この記事で分かること
- 参考書を買う前に確かめること(学科によって必要な本が入れ替わります)
- 学科ごとに試験がどれだけ違うか(要項で確認した実例)
- 哲学・倫理/歴史・考古学/地理/教育学それぞれの読む順序
- 用語集が効く理由と、使い方を間違えたときの失点
- 英語と第二外国語の扱い、いつまでに何を終えるか
編入試験は大学ごとに出願資格も科目も違います。いまの学年・在籍区分で受けられる大学がどこかは、条件を突き合わせて初めて分かります。
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買う前に決めること
先に志望学科の募集要項で、専門科目の名前と出題形式を確かめてください。人文系は「学部で1冊」という科目ではなく、学科が変わると本棚ごと入れ替わります。
| 確かめること | なぜ必要か |
|---|---|
| 専門科目の名前 | ここが最大の分岐です。「概説」なら範囲を広く浅く、「論文」なら書く練習、「試問」なら口で説明する練習が要ります。同じ文学部でも学科ごとに違うため、学部単位で調べても答えは出ません。 |
| 出題形式(過去問) | 用語説明か、論述か、資料の読み取りか。用語を200字前後で説明させる形式を採る大学があり、この形式なら用語集が直接効きます。過去問を1年分見るだけで、買う本が決まります。 |
| 外国語は何語か | 英語とは限りません。哲学科でドイツ語・フランス語が課される大学や、複数言語から選べる大学があります。英語以外を選ぶなら、参考書より先に学習期間の確保が要ります。 |
| その学科が今年募集するか | 人文系は年度によって募集学科が入れ替わります。去年あった学科が今年は募集しないことがあるため、必ず最新年度の要項で確認してください。 |
| 2年次か3年次か | 同じ学科でも年次によって科目が変わることがあります。3年次だけ「専門」が課される大学もあります。 |
学科ごとに試験がこれだけ違う
実際の要項を確認した例です。「人文系だから小論文と英語」という思い込みが、いちばん危ないことが分かります。
| 大学 | 学科と専門科目の構成 |
|---|---|
| 立正大学 | 文学部(2年次・3年次) 哲学科は哲学の基礎知識(哲学史を含む)、史学科の3年次は「日本史・東洋史・西洋史・考古学の各概説」。公開されている問題では20の歴史用語から3つを選び、各150〜250字で説明する形式が2年連続で採られています。英語と面接もあります(大学・短大の卒業者は英語免除)。 |
| 東洋大学 | 文学部(7学科) 多くの学科は小論文+面接ですが、哲学科は独語または仏語の筆記、史学科は日本史・東洋史・西洋史から1科目を選ぶ筆記、英米文学科は面接のみ。学科ごとに全く異なる試験科目です。 |
| 駒澤大学 | 文学部(6学科) 専門科目は国文学科が「日本文学」、英米文学科と歴史学科が「論文」、地理学科が「地理学に関する基礎知識」、社会学科が「専門に関する基礎知識」。加えて英語と面接・口述試験があります。 |
| 新潟大学 | 人文学部(3プログラム) 専門科目は選択科目制。社会文化学プログラムなら社会学・文化人類学・民俗学・考古学・人文地理学・芸能論・メディア論・日本史・アジア史・西洋史から1科目を選びます。外国語も英語・独語・仏語・露語・朝鮮語・中国語から1科目選択です。 |
| 名古屋大学 | 教育学部 1次が英語+小論文(教育学・教育心理学に関する基礎的教養)、2次が口述試験。英語は教育制度・教育政策の評論文、発達心理学・認知心理学の英文、科学哲学や研究方法論の英文まで出題され、和訳と説明が中心です。 |
| 早稲田大学 | 教育学部(学士入学) 大学を卒業した人だけが出願できる制度です。教育学科教育心理学専修と国語国文学科は小論文+面接、理学科生物学専修は英語・生物学・面接と、区分ごとに科目がまったく違います。 |
募集学科と試験科目は年度によって変わります。人文系はとくに、学科単位で募集の有無が動きます。必ず最新年度の募集要項でご確認ください。各大学のリンク先に、要項を確認した時点の詳しい内容をまとめています。
まず用語集で「説明できる」状態を作る
人文系の対策で、いちばん費用対効果が高いのは用語集です。理由は出題形式にあります。
先ほどの立正大学史学科のように、用語を選んで150〜250字で説明させる形式は珍しくありません。論文形式であっても、キーワードを正確に定義できるかどうかで答案の説得力が変わります。面接の試問でも同じです。
用語集は「読む」ものではなく「書けるか試す」ものとして使ってください。項目を見て、本を閉じて、200字で説明してみる。書けなければ読み直す。この往復が、そのまま試験本番の作業になります。
哲学・倫理:図鑑で地図を作り、哲学史で流れをつなぐ
哲学は、用語の意味を知っていても、思想史の中に置けないと答案になりません。立正大学の哲学科が「哲学の基礎知識(哲学史を含む)」と範囲を示しているように、誰がいつ何に反論したのかという流れが問われます。
順序は「図鑑・入門書で地図を作る → 哲学史で流れをつなぐ → 現代の論点に触れる」です。いきなり原典や研究書に入ると、用語の壁で止まります。
最初に地図を作る本です。
哲学史で流れをつなぐ本です。古代から中世、近代から現代の2冊組です。
現代の論点に触れる本です。小論文や面接で「あなたはどう考えるか」と問われたときに効きます。
歴史・考古学:概説の範囲を先に絞る
史学科の「概説」は、範囲を絞らずに読み始めると、いくらでも時間を吸われます。立正大学のように「日本史・東洋史・西洋史・考古学の各概説」と示される場合でも、公開されている問題を見ればどの分野から何語出ているかの配分が分かります。過去問を先に見て、重心を確かめてから読んでください。
順序は「歴史学とは何かを知る → 用語と流れを固める → 論述の型を練習する」です。1つめを飛ばす人が多いのですが、面接で「なぜ歴史を学ぶのか」と問われたときに効くのはここです。
歴史学そのものを知る本です。
考古学を選ぶ人の本です。新潟大学の社会文化学プログラムや立正大学の史学科のように、考古学を独立した選択科目として置く大学があります。
論述の型を練習する本です。世界史の論述は高校向けの教材ですが、因果関係を筋道立てて書く練習としてそのまま使えます。
地理:高校地理の用語で土台を作る
地理学科の専門科目は、駒澤大学のように「地理学に関する基礎知識」と示されることがあります。大学で学ぶ人文地理学・自然地理学が対象ですが、その土台になるのは高校地理の用語と資料の読み方です。
大学の専門書に入る前に、用語集と系統地理で全体像を押さえるほうが早いです。地形・気候・人口・都市・産業といった枠組みは、大学の講義でもそのまま使われます。
これらは高校地理の教材です。志望校が大学レベルの人文地理学を求める場合は、学科の指定教科書や過去問で扱われている文献に進んでください。用語の土台がある状態で読むと、進み方がまったく違います。
教育学:入門書1冊を軸に、教育心理まで
教育学は、名古屋大学のように「教育学・教育心理学に関する基礎的教養」と範囲が示されることがあります。教育学だけでなく教育心理学まで入るのが、この分野の特徴です。
順序は「入門書で問いの立て方を知る → 原論で理論と制度を押さえる → 教育心理を補う」です。教育学は身近な話題ゆえに、経験談で書いてしまいがちですが、試験で求められるのは理論と制度に基づく説明です。
4冊目は公務員試験の問題集ですが、教育学と教育心理学の頻出項目が問題形式で並んでいるため、覚えた内容を確認する用途で使えます。これだけで対策を完結させないでください。編入試験で問われるのは選択式ではなく、説明と論述です。
英語と第二外国語をどう扱うか
人文系の英語は、一般的な長文読解とは限りません。名古屋大学教育学部では、教育制度や教育政策の評論文、発達心理学・認知心理学の英文、科学哲学や研究方法論の英文まで出題され、和訳と説明が中心です。志望分野の専門的な英文に慣れておく必要があります。
そして人文系では、英語以外の外国語が課されることがあります。東洋大学文学部の哲学科はドイツ語かフランス語の筆記、新潟大学人文学部は英語・ドイツ語・フランス語・ロシア語・朝鮮語・中国語から1科目選択です。これは参考書選び以前の問題です。第二外国語で受けるなら、学習期間を年単位で確保する必要があります。逆に、英語で受けられる大学を選ぶという判断もあります。
英語の進め方は編入試験の英語の対策に、小論文の組み立ては編入試験の小論文にまとめています。
いつまでに何を終えるか
| 時期 | やること |
|---|---|
| 受験の10〜6か月前 | 要項で学科と専門科目・外国語を確定する。過去問を1年分見て出題形式を確かめる(用語説明か、論述か、試問か)。入門書と用語集を1冊ずつ用意する。 |
| 6〜3か月前 | 用語集を「書けるか試す」使い方で回す。哲学史・概説で流れをつなぐ。200字前後で説明する練習を始める。英語(または第二外国語)を並行して進める。 |
| 3〜1か月前 | 過去問のテーマで実際に書き、添削を受ける。論文形式の学科は800字前後の答案を複数本。試問がある学科は、書いた内容を口で説明する練習に切り替える。 |
| 直前1か月 | 用語の穴の確認と、書いた答案の読み直し。新しい本には手を出さない。面接で聞かれる「なぜこの分野か」を、読んだ本の言葉で答えられるようにする。 |
やってはいけない3つの使い方
1つめ。学部単位で参考書を選ぶことです。同じ文学部でも、哲学科は独語・仏語の筆記、史学科は用語説明、国文学科は日本文学と、必要な本がまったく違います。「文学部 参考書」で探すのをやめて、志望学科の要項と過去問から逆算してください。
2つめ。用語集を読んで終わりにすることです。人文系の試験は「説明させる」形式です。読んで分かった状態と、白紙に200字書ける状態は別物です。項目を見て本を閉じ、書いてみる。この往復をしない限り、本番で手が止まります。
3つめ。原典や研究書から入ることです。哲学の原典、歴史の研究書は、用語と流れが頭に入っていない段階で読むと、時間だけが過ぎます。入門書と用語集で地図を作ってから——遠回りに見えて、これが最短です。
あとは、いまの自分の位置から何を先にやるかです。志望校と現在の状況をうかがったうえで、順番を整理します。
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まとめ
- 最初にやることは、志望学科の要項と過去問で出題形式を確かめることです。人文系は学科ごとに試験が別物です
- 用語集がいちばん効きます。ただし「読む」のではなく「200字で書けるか試す」使い方で
- 哲学は図鑑で地図、哲学史で流れ、現代の論点で自分の意見。原典は最後です
- 歴史・考古学は概説の範囲を過去問で絞ってから読む。「歴史学とは何か」を1冊読んでおくと面接で効きます
- 地理は高校地理の用語集と系統地理が土台になります
- 教育学は教育心理学まで入ることがあります。経験談ではなく理論と制度で書く
- 外国語が英語とは限りません。第二外国語が課される学科は、参考書より先に学習期間の確保を
志望学科の出題形式に対して、いま手元の本で足りているかどうかは、過去問を1年分解けば分かります。オンライン編入学院では、志望校の出題範囲に合わせた学習計画のご相談を無料で受け付けています。
よくある質問
哲学の入門書は何から読めばよいですか?
用語の地図を作る本からです。哲学は用語の意味を知っていても、思想史の中に置けないと答案になりません。まず図鑑や入門書で「誰がいつ何を主張し、誰がそれに反論したか」の全体像をつかみ、そのうえで哲学史の通史に進んでください。立正大学文学部の哲学科のように「哲学の基礎知識(哲学史を含む)」と範囲が示される大学があり、流れの理解がそのまま得点になります。原典や研究書から入ると用語の壁で止まるため、順序は入門書が先です。
人文系の編入試験で、用語集は本当に必要ですか?
必要です。人文系は選択式ではなく「説明させる」形式が中心だからです。立正大学文学部の史学科では、公開されている問題で20の歴史用語から3つを選び、それぞれ150字以上250字以内で説明する形式が2年連続で採られています。論文形式の学科であっても、キーワードを正確に定義できるかどうかで答案の説得力が変わります。ただし読むだけでは効果が出ません。項目を見て本を閉じ、200字で書いてみる使い方をしてください。
文学部の編入なら、学部共通の参考書を買えばよいですか?
学部単位では選べません。同じ文学部でも学科ごとに試験がまったく違うためです。東洋大学文学部では多くの学科が小論文と面接ですが、哲学科は独語または仏語の筆記、史学科は日本史・東洋史・西洋史から1科目を選ぶ筆記です。駒澤大学文学部では国文学科が「日本文学」、地理学科が「地理学に関する基礎知識」、歴史学科が「論文」と専門科目の名前から異なります。志望学科の要項と過去問から逆算して選んでください。
外国語は英語だけ準備すれば大丈夫ですか?
学科によります。東洋大学文学部の哲学科はドイツ語かフランス語の筆記が課され、英語では受験できません。新潟大学人文学部は英語・ドイツ語・フランス語・ロシア語・朝鮮語・中国語から1科目を選択します。第二外国語で受けるなら、参考書を選ぶ前に学習期間を年単位で確保する必要があります。英語で受けられる大学に絞るという判断もあるため、志望校を決める段階で外国語の条件を確認してください。
教育学部の編入では、教育心理学も必要ですか?
必要になることがあります。名古屋大学教育学部の小論文は「教育学・教育心理学に関する基礎的教養」が範囲で、英語でも発達心理学・認知心理学の英文が出題されます。早稲田大学教育学部の学士入学では教育学科教育心理学専修という区分があり、小論文と面接で選抜されます。教育学の入門書と原論で理論と制度を押さえたうえで、教育心理学の基本的な理論まで手を広げてください。経験談ではなく理論に基づいて説明できることが求められます。
去年募集していた学科が、今年は見当たりません。
人文系は年度によって募集学科が入れ替わります。学科単位で募集の有無が動くため、前年度の情報や第三者のまとめだけで判断すると、出願段階でつまずきます。必ず最新年度の募集要項で、志望する学科が募集対象に入っているか、編入学年(2年次か3年次か)はどちらかを確認してください。募集が無い年に当たった場合は、同じ分野を扱う他大学の学科や、別の入試区分(学士入学など)に切り替える判断が必要になります。
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