大学編入 生物 参考書ルート|高校範囲の固めから細胞・分子生物学まで
編入試験の生物で最初に知っておくべきなのは、課す学部の幅広さです。理学部の生物系だけでなく、農学・生物資源系、看護などの医療系、薬学系、獣医系まで、生物はさまざまな系統の試験に顔を出します。そして系統によって、要求される深さがまったく違います。
高校の「生物基礎・生物」の範囲を固めれば戦える大学と、細胞生物学・分子生物学という大学レベルの内容まで問う大学。同じ「生物」でも、ほとんど別の試験と言っていいほど差があります。だから検索で出てきたおすすめ本を上から順に買うのではなく、自分の志望系統がどの深さまで要るかを先に決めてから、本を選ぶのが正解です。
この記事では、オンライン編入学院が、合格した人が実際に使った教材と各大学が公表している募集要項をもとに、生物の参考書を細胞・分子生物学、生化学、生態・進化、生理学の分野別に、標準ルートと難関大ルートの2本立てで整理します。数学・化学も含めた理系全体の組み立ては理系の編入試験の参考書にまとめているので、生物以外も課される人はそちらも合わせて読んでください。
この記事で分かること
- 生物の参考書を買う前に確かめること
- 志望系統(理学・農学・看護・薬学)ごとに、どの深さまでやるか
- 標準ルートと難関大ルートの分かれ目
- 細胞・分子生物学、生化学、生態・進化、生理学を、それぞれどの本でやるか
- 生物を課している大学の例と、出題のされ方の違い
編入試験は大学ごとに出願資格も科目も違います。いまの学年・在籍区分で受けられる大学がどこかは、条件を突き合わせて初めて分かります。
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ここでいう難関大ルートは、筑波大学生命環境学群やお茶の水女子大学理学部のように、細胞生物学・分子生物学など大学レベルの生物学まで問われる大学を指します。標準ルートは、高校の「生物基礎・生物」を固めれば戦える大学です。農学系の筆記・口頭試問の多くはこちらに入ります。
買う前に決めること
先に志望校の募集要項で、次の4つを確かめてください。ここが決まらないうちに本を買うと、深さの合わない本が積み上がります。
| 確かめること | なぜ必要か |
|---|---|
| そもそも生物が課されるか | 生物系の学部でも、英語(TOEICスコア)と面接だけで生物の筆記がない大学があります(三重大学生物資源学部の多くのコースなど)。生物が要らないなら、この記事の本は1冊も買わなくてかまいません |
| 高校範囲か大学範囲か | 試験科目の書き方が手がかりになります。「生物」「生物基礎・生物」なら高校範囲が軸、「生物学」なら大学レベルを含むことがあります。ただし表記だけでは決められないので、過去問と大学別の対策記事で確かめてください |
| 筆記か口頭試問か | 農学系では面接の中で生物・化学の基礎を口頭で問う形が目立ちます(新潟大学農学部、徳島大学生物資源産業学部、愛媛大学農学部など)。「書けるか」ではなく「口で説明できるか」が問われるため、対策のしかたが変わります |
| 化学とセットか | 宇都宮大学農学部(生物学及び化学)や東京農工大学農学部(化学・生物学)のように両方課す大学と、名城大学農学部や近畿大学農学部のように選択させる大学があります。化学が要るなら化学の参考書ルートも見てください |
志望系統別:どの深さまでやるか
生物はどの系統を受けるかで、勉強の終点が変わります。先に自分の終点を決めてください。
| 志望系統 | どの深さまでやるか |
|---|---|
| 理学部の生物系 | 大学レベルまで。細胞生物学・分子生物学の内容が筆記や口述で問われます(筑波大学生命環境学群の生物学類、お茶の水女子大学理学部の生物学科など)。難関大ルートの本まで進みます |
| 農学・生物資源系 | 高校範囲が軸。筆記でも口頭試問でも「生物基礎・生物」レベルの理解が中心なので、まず標準ルートを仕上げます。実施大学は農学部編入の実施大学一覧で比べられます |
| 看護・医療系 | 「生物」ではなく解剖学・生理学など専門基礎科目の名前で出ることが多い系統です。高校生物は土台として効きますが、主戦場は専門の教科書になります。筑波大学医学群(看護学類・医療科学類)のように化学・生物学の筆記を課す例もあります。一覧は看護学部・医療系学部の編入へ |
| 薬学系 | 化学が主役で、生物は生命科学・生化学の形で問われることがあります。生物単独では決まらないので、化学も含めた科目全体で計画を立ててください |
| 獣医・歯学系 | 私立を中心に高校範囲の生物+英語+面接という構成が目立ちます。2年次編入が多く、麻布大学生命・環境科学部のように口頭試問で基礎知識を確かめる大学もあります |
出発点は、高校生物をどこまでやったかで変わる
| いまの状態 | どこから始めるか |
|---|---|
| 高校で生物を選択していない | 生物合格77講か大森徹の最強講義126講で、高校範囲をゼロから通します。講義本なので独学でも読み通せます。文系からの編入でも、ここから積めば間に合わせられます |
| 高校で生物を選択していた | 生物基礎問題精講で抜けを確かめてから演習へ。忘れている分野だけ講義本に戻る、辞書型の使い方で進められます |
| 大学1〜2年で生命科学を履修 | 理学部系志望なら大学の教科書の復習から入れます。ただし生態・進化など大学の授業で扱われにくい分野は高校範囲に穴が残りやすいので、講義本と図録で埋めてください |
判断に迷ったら、基礎問題精講を数問解いてみてください。手が止まるなら講義本に戻る。「習ったことがあるか」ではなく「いま説明できるか」で決めるのが確実です。
全体の順序:4段階で積み上げる
| 段階 | 使う本 |
|---|---|
| 1. 高校範囲のインプット | 生物合格77講 完全版または大森徹の最強講義126講。フォトサイエンス生物図録を常に横に置き、文章と図を結びつけながら読みます |
| 2. 高校範囲の演習 | 生物基礎問題精講で型を作り、授業で使っていた人はリードα生物基礎+生物で量を足します。仕上げは実戦 生物重要問題集 |
| 3. 大学レベルのインプット 難関大ルートのみ | Essential細胞生物学を軸に、辞書としてキャンベル生物学、簡潔にまとめたい人は理系総合のための生命科学 |
| 4. 過去問・口頭試問対策 | 志望校の過去問で出題の形(空所補充か、実験考察か、口頭か)に合わせて仕上げます |
生物は暗記科目と思われがちですが、編入の筆記で差がつくのは計算・グラフ・実験考察です。知識で並んだ受験生の中で点を分けるのはここなので、大森徹の生物 計算・グラフ問題の解法や生物 思考力問題精講のような専用の本で早めに慣れておいてください。
分野別:どの本をどの深さまでか
細胞・分子生物学:生物の中心。ルートの分かれ目もここ
細胞の構造とはたらき、代謝、DNAと遺伝子発現。編入の生物で最も問われる領域で、標準ルートと難関大ルートの差が一番はっきり出る分野でもあります。
| ルート | どこまでやるか |
|---|---|
| 標準ルート | 講義本の該当章と基礎問題精講で、呼吸・光合成・遺伝子発現のしくみを白紙から図で説明できるところまで。フォトサイエンス生物図録で模式図と顕微鏡写真を結びつけておくと、初見の図をつかう問題に強くなります |
| 難関大ルート | Essential細胞生物学へ進みます。合格した人が大学レベルの軸として挙げることが最も多い1冊です。通読ではなく、過去問に出た分野の章から入ってください。より網羅的な辞書が欲しければキャンベル生物学、講義調で通したい人はアメリカ版 大学生物学の教科書。高校範囲の仕上げも兼ねるなら大森徹の最強問題集172問を演習に足します |
生化学:薬学・農芸化学系で「化学との橋」になる
代謝経路、酵素、タンパク質の構造。薬学系や農学系の一部では、生物と化学の境目にあたる生化学の形で出題されることがあります。
| ルート | どこまでやるか |
|---|---|
| 標準ルート | 高校範囲の代謝(呼吸・光合成・酵素)を講義本と図録で説明できるところまで。専用の本を新しく買う必要はありません |
| 難関大ルート | 要項に生化学・生命科学が明示されている場合のみ、ブラウン生化学を辞書に置き、生化学・分子生物学演習で問題の形に慣れます。有機化学の基礎が前提になるので、化学の参考書ルートと並行してください |
生態・進化:農学・環境系で落とせない
個体群、群集、生態系、物質循環、進化のしくみ。農学・生物資源・環境系の学科と相性のよい分野で、口頭試問でも志望分野に絡めて聞かれやすいところです。
| ルート | どこまでやるか |
|---|---|
| 標準ルート | 講義本と図録で、用語を自分の言葉で説明できるところまで。この分野は大学の授業で扱われにくいぶん、高校範囲の完成度がそのまま差になります |
| 難関大ルート | キャンベル生物学の該当章で「なぜそうなるか」を補強します。データを読ませる考察型の問題は思考力問題精講で練習できます |
生理学:看護・医療系は「解剖生理学」の顔で出る
体内環境、神経、ホルモン、免疫。ヒトのからだに関わる分野で、看護・医療系ではこの領域が「解剖学・生理学」という専門基礎科目の形で問われることが多くあります。
| ルート | どこまでやるか |
|---|---|
| 標準ルート | 高校範囲の体内環境・神経・ホルモンを講義本で固めるところまで。獣医系・歯学系の高校範囲の筆記や口頭試問はここでカバーできます |
| 看護・医療系 | 高校生物の参考書では範囲が足りません。解剖生理学の専門教科書と志望校の過去問が主戦場になります。どの大学が何を課すかは看護学部・医療系学部の編入 実施大学一覧から各大学の記事で確認してください |
標準ルートと難関大ルートの全体像
| ルート | 流れ |
|---|---|
| 標準ルート | 講義本(77講か126講)で高校範囲を通す → 基礎問題精講で型を作る → リードαや重要問題集で演習量を積む → 志望校の過去問。農学系の筆記・口頭試問の多くはここまでで戦えます |
| 難関大ルート | 標準ルートの後にEssential細胞生物学を軸に大学レベルを1段足します。生化学が範囲ならブラウン生化学+演習書、考察型の筆記が出るなら思考力問題精講。大学の教科書まで仕上げるのがこの層です |
標準ルートで使う本です。
難関大ルートで足す本です。
迷ったら、志望校の過去問を先に1年分見てください。空所補充中心か、実験・データの考察を書かせるか、オペロンやシグナル伝達のような大学レベルの語が出てくるか。この確認より先にEssential細胞生物学を買わないのが、遠回りしないコツです。
生物を課している大学の例
生物を課している大学の例です。それぞれの記事で、範囲と出題のされ方を確認できます。
- 大学レベルまで問う例——筑波大学生命環境学群(生物学類は生物学の筆記)、お茶の水女子大学理学部(生物学科は生物学と口述試験)、新潟大学理学部(生物学プログラム)、広島大学理学部(生物科学科は口頭試問)、岡山大学理学部(生物学科は口述試験を含む面接)
- 高校範囲の筆記が軸の例——名城大学農学部(生物または化学から1科目)、近畿大学農学部(生物・物理・化学から1科目選択)、龍谷大学農学部(生命科学科は生物学)、石川県立大学生物資源環境学部(生物学・化学・物理学から2科目選択)
- 口頭試問で問われる例——東京農工大学農学部(化学・生物の学力検査と口述試験)、鹿児島大学農学部(農学基礎と口頭試問)、島根大学生物資源科学部や新潟大学農学部のように面接の中で生物・化学の基礎を問う大学
- 2年次編入の例——麻布大学生命・環境科学部(口頭試問)、筑波大学医学群(看護学類・医療科学類)(化学・生物学の筆記)。2年次は1年次からやり直す編入で、出題も基礎寄りになります
同じ大学でも学科・コースによって科目と範囲が違います。ここに挙げたのは目安です。必ず志望する学科の募集要項で確認してください。志望校がまだ絞れていない人は、農学部編入の実施大学一覧や理学部編入の実施大学一覧から科目で比べられます。
使い方:「覚えた」ではなく「説明できる」まで
生物も、基本は1冊を3周して白紙から解ける状態にすることです。周回のやり方は理系の編入試験の参考書に書いたので、ここでは生物に固有の注意だけ足します。
- 用語を口で説明する練習を、最初の周から入れる。定義を暗唱するだけでなく「なぜそうなるか」を1〜2文足して言えるようにします。口頭試問がある大学では、この練習がそのまま本番対策になります
- 図録を常に横に置く。文字だけで覚えた知識は、図や実験データを使う問題で使えません。講義本で読んだ内容を図録の写真・模式図と結びつける習慣をつけてください
- 計算・グラフ・実験考察から逃げない。遺伝、酸素解離曲線、ミクロメーターのような計算問題は、出れば確実に差がつきます。専用の問題集で型を作っておくのが安全です
独学で進める人におすすめの生物の参考書の組み合わせ
生物は、独学と相性のよい科目です。数学や物理のように、1つ前の理解が欠けると次に進めないという性質が薄く、分野ごとに区切って進められるためです。
ただし独学ならではの失敗があります。用語を覚えた段階で「終わった」と判断してしまうことです。編入の生物は、用語の意味を説明させたり、現象の理由を書かせたりする出題が中心です。赤シートで隠して答えられても、白紙に説明を書けるとは限りません。
独学で進めるときの組み合わせは、「図が多い教科書1冊」+「用語集または一問一答1冊」+「記述式の問題集1冊」です。図の多い本を選ぶ理由は、生物の理解が構造と過程の把握に依存するからです。文字だけで代謝経路を覚えようとすると、時間がかかるうえに忘れます。
覚えたつもりを防ぐ方法は1つです。1つの用語について、何も見ずに3行で説明を書いてみる。書けなければ、まだ覚えていません。この確認を挟むだけで、本番の記述で手が止まらなくなります。
あとは、いまの自分の位置から何を先にやるかです。志望校と現在の状況をうかがったうえで、順番を整理します。
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まとめ
- 買う前に、生物が課されるか・高校範囲か大学範囲か・筆記か口頭試問かを募集要項で確かめてください。系統によって終点がまったく違います
- 理学部の生物系は大学レベルまで、農学系は高校範囲が軸、看護・医療系は解剖生理学が主戦場。自分の終点を決めてから本を選びます
- 標準ルートは講義本+基礎問題精講+演習1冊まで。難関大ルートはそこにEssential細胞生物学を1段足します
- 化学とセットの大学が多い。2科目の合計時間で計画し、化学は早めに始めます
- 「白紙から図が描ける」「口で説明できる」を仕上がりの基準にする。筆記でも口頭試問でも、ここが得点になります
理系全体の科目の組み立てと数学・化学のルートは理系の編入試験の参考書へ。化学が課される人は化学の参考書ルートも合わせて読んでください。志望校ごとの科目・範囲は農学部編入|実施大学一覧・難易度ランキングと理学部編入|実施大学一覧・難易度ランキングから各大学の記事で確認できます。
よくある質問
編入試験の生物は、高校範囲と大学範囲のどちらが出ますか?
大学と学部系統で分かれます。農学系の筆記や口頭試問は高校の「生物基礎・生物」レベルの理解が軸になり、理学部の生物系では細胞生物学・分子生物学など大学レベルの内容まで問われます。募集要項の科目名(「生物」なのか「生物学」なのか)がひとつの目安になりますが、表記だけでは決められないため、志望校の過去問と募集要項で確かめてから本を選んでください。
生物と化学の両方が課されます。どちらを先に始めるべきですか?
並行して進めるか、化学を先に始めることを勧めます。化学は理解の積み上げに時間がかかる一方、生物は知識分野なら後からの追い込みも効きやすい科目です。ただし生物を全部あとまわしにしてよいわけではありません。呼吸・光合成・遺伝子発現のような理解型の分野は化学と同じように時間がかかるので、講義本を通す作業だけは早い時期に済ませておいてください。
文系出身でも、農学部編入の生物は間に合いますか?
間に合わせている人はいます。農学系の多くは高校範囲が軸なので、講義本で高校範囲をゼロから通し、基礎的な問題集で演習する標準ルートで届きます。ただし農学系は化学もセットで課す大学が多く、化学のほうが仕上がりに時間がかかります。生物単独ではなく、2科目の合計時間で計画を立ててください。
Essential細胞生物学は、必ずやるべきですか?
全員には勧めません。細胞生物学・分子生物学まで問われる大学を受ける人の軸になる本で、高校範囲が中心の大学を受けるなら優先度は下がります。使う場合も1ページ目から通読しようとせず、志望校の過去問に出た分野の章から入ってください。章末の内容を白紙から説明できる状態が仕上がりの目安です。
口頭試問で生物が問われる場合は、何を準備すればよいですか?
筆記と同じ範囲を、口頭で説明できる状態まで持っていってください。用語の定義に加えて「なぜそうなるか」を1〜2文で言えるようにする練習が中心になります。農学系の口頭試問では、志望理由や入学後に学びたいことと結びつけて問われることも多いので、志望分野に近い単元は特に厚く準備してください。普段の演習で、解いた問題を声に出して説明する練習が効きます。
生物の参考書は何冊やればよいですか?
講義本1冊と問題集1〜2冊が基本です。標準ルートなら講義本+基礎的な問題集、余裕があれば入試レベルの問題集を1冊。難関大ルートでも、そこに大学レベルの教科書を1冊足す程度で足ります。同じ役割の本を並行して何冊も進めないでください。解けない問題が多いときは、問題集を替えるのではなく講義本と図録に戻るのが正しい対処です。
















