大学編入 社会学 参考書ルート|入門書から基本テキスト・小論文対策まで何をどの順で
社会学系の編入試験には、ほかの学部と共通する前提があります。受験生のほぼ全員が、社会学の初学者だということです。高校に「社会学」という科目はありません。政治経済や現代社会で社会の出来事には触れていても、デュルケームやウェーバーといった社会学の理論と用語は、全員がゼロから本を読み始めます。
だからこそ、どの本を、どの順で読むかがそのまま合否に響きます。いきなり大学の専門的な教科書から入って抽象的な概念の壁で止まる人と、図解の入門書を1冊挟んでから積み上げる人とでは、数か月後の到達点が変わります。
そしてもうひとつ、社会学ならではの注意があります。「社会学」という科目を課す学部と、「社会科学に関する小論文」を課す学部が、検索すると混ざって出てくることです。前者は社会学の理論・用語の理解を問い、後者は社会の出来事を筋道立てて論じる力を問います。必要な本がまったく違うので、この記事では分けて扱います。
本文では、標準ルートと難関大ルートを分けて示します。難関大ルートは、筑波大学社会・国際学群や関西大学社会学部のように論文形式で理論の理解を書かせる大学を指します。標準ルートは、追手門学院大学社会学部のように社会学の基礎知識を問う筆記や、基礎知識ベースの小論文が中心の大学です。
この記事で分かること
- 参考書を買う前に確かめること(ここで買う本が決まります)
- 社会学の参考書を読む順序と、標準ルート・難関大ルートの分かれ目
- 「社会学の試験」と「社会科学の小論文」の違いと、それぞれの対策
- 社会学を課している大学と、それぞれの出題形式
- いつまでに何を終えるかの目安と、やってはいけない使い方
編入試験は大学ごとに出願資格も科目も違います。いまの学年・在籍区分で受けられる大学がどこかは、条件を突き合わせて初めて分かります。
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買う前に決めること
先に志望校の募集要項で、専門科目の出題形式を確かめてください。社会学系の編入は「この1冊をやれば大丈夫」という科目ではなく、形式によって必要な本が入れ替わります。
| 確かめること | なぜ必要か |
|---|---|
| 専門試験の型 | 社会学の基礎知識を問う筆記か、論文か、小論文か。論文型なら理論書と論述練習が、小論文型なら書き方の型と時事の引き出しが必要になります |
| 出題範囲 | 「社会学」と科目名を明示する大学のほか、社会学・文化人類学などから1科目を選ばせる大学、人間科学の幅広い分野から出す大学があります。ここで読む本が変わります |
| 指定の教材 | 近畿大学総合社会学部のように、出題範囲となる教材を要項で指定する大学があります。指定があるなら、その本が最優先です |
| 英語の扱い | 筆記試験の大学、TOEICなどのスコアを使う大学、英語を課さない大学の3つに分かれます。スコア型は受験日程の逆算が先です |
| 面接・口頭試問 | 面接だけの大学と、専門科目の内容を口頭で問う大学があります。後者は用語を「説明できる」水準まで要ります |
形式が分かれば、必要な本は多くありません。標準ルートなら社会学の本は2冊が土台です。買い集めるより、決めた本を繰り返すほうが確実に力になります。
社会学:4段階で積み上げる
社会学の参考書は、用語の入門書 → 基本テキスト → 理論を深める本 → 論述練習の順で積み上げます。
| 段階 | 使う本 |
|---|---|
| 1. 入門 用語と人物をつかむ | 社会学用語図鑑。アノミー、予言の自己成就といった主要用語と人物を、イラストで直感的に押さえます。合格した先輩の使用がいちばん多い入門書です |
| 2. 基本テキスト 全体を体系的に通す | 社会学の基礎。社会階層・ジェンダー・家族・メディアなど、試験で繰り返し問われるテーマを一冊で広く固めます |
| 3. 理論を深める 背景まで説明できる状態に | 社会学の力。各概念がどんな問題意識から生まれたのかまで整理されており、論述に耐える理解が作れます |
| 4. 論述練習 書ける状態にする | 志望校の過去問。読んで分かるだけでは論文形式に対応できません。書いた答案は添削を受けてください |
2を飛ばして理論書から入らないでください。社会学の論述は、用語の定義と具体例の理解を前提に組み立てます。土台がないまま理論書に向かうと、抽象的な記述の壁で止まります。
用語図鑑から始める理由は2つあります。ひとつは、社会学の試験が用語と人物の理解を出発点にする科目だからです。もうひとつは、初学者がつまずく抽象的な概念を、イラストで具体的なイメージに変えてくれるからです。ここで作った引き出しは、基本テキストに進んだときの読みやすさを大きく変えます。
社会学を全く学習してこなかったため初級基礎が学べる本として選択。イラストが全ページに記載されており、ノートに用語の意味や使い方をまとめながら6回以上繰り返し学習した。
東京外国語大学国際社会学部に合格した先輩(『社会学用語図鑑』を6回以上)
解説がわかりやすく、イラストで覚えやすいのが選択基準。隙間時間に見たり、楽しく読みたい時に見たりして4周した。
大阪大学人間科学部に合格した先輩(同・4周)
社会学:標準ルートと難関大ルート
| ルート | どこまでやるか |
|---|---|
| 標準ルート | 用語図鑑 → 基本テキストの2冊を、繰り返し読んで自分の言葉で説明できる状態に。社会学の基礎知識を問う筆記や、基礎知識ベースの小論文はここまでで戦えます |
| 難関大ルート | そこに2つの上乗せが入ります。①理論書(社会学の力で理論の背景まで固める。社会学や社会学入門も定番です)、②論述練習(過去問のテーマで実際に書き、添削を受ける) |
標準ルートで使う本です。どちらも合格した先輩が実際に使っています。
難関大ルートで足す本です。
基本テキストと理論書について、合格した先輩はこう振り返っています。
幅広い分野が載っており、様々なテーマに応用できる知識を身につけることができる参考書として、3周読み込んで要点をまとめた。
お茶の水女子大学生活科学部に合格した先輩(『社会学の基礎』を3周)
用語を一つ一つ覚えられるから選択。単語カードに要約を書き出して何周も繰り返して暗記した。編入後に大学2年までに全員授業で輪読していることに気づいた。
大阪大学人間科学部に合格した先輩(『社会学の力』を反復)
テキストは軸を1冊に絞ってください。社会学の教科書は定番だけでも複数あり、同じ概念でも本によって説明の仕方が違います。並行して読むと、どの説明で覚えたか分からなくなります。1冊を決めて繰り返し、他の本は疑問が出たときに引く辞書として使うのが確実です。
小論文型:社会学の試験とは準備が違う
龍谷大学社会学部や京都産業大学現代社会学部のように、専門試験が小論文の形で出る大学があります。また、大阪大学法学部や大分大学経済学部のように、法学部・経済学部でも「社会科学に関する小論文」を課す大学があります。
ここで区別してほしいことがあります。「社会科学の小論文」は、社会学という科目の試験ではありません。社会の出来事を、政治・経済・法・社会の考え方で筋道立てて論じられるかを見る試験です。社会学の教科書を通読するより、書き方の型と、テーマごとの背景知識を仕入れるほうが得点に直結します。一方、京都産業大学のように「社会学の理解」をテーマにした小論文を出す大学では、標準ルートの2冊で作った基礎知識がそのまま土台になります。
| 準備するもの | 使う本 |
|---|---|
| 書き方の型 | 小論文これだけ!超基礎編で基本ルールを短く押さえ、社会科学系小論文頻出テーマ16で分野の頻出テーマの書き方に進みます |
| 論点のストック | 大学入試小論文の完全ネタ本〈社会科学系〉編。テーマごとに論点の背景と対立する意見が整理されており、書くことが思いつかないタイプのつまずきに効きます |
| 時事の引き出し | 朝日キーワード。直近の社会の動きを、自分の言葉で説明できる状態にします |
小論文・時事対策で使う本です。
小論文は、書いて添削を受けるところまでが1セットです。型とネタを仕入れただけでは、本番の初見テーマに対応できません。志望校の過去問のテーマで実際に書き、他人の目で直してもらってください。社会科学の論述が中心の法学部を受けるなら、法学の参考書ルートもあわせて確認してください。
英語:筆記・スコア・なしの3つに分かれる
社会学系の編入試験の英語は、筆記試験の大学、TOEICなどのスコアを使う大学、英語を課さない大学の3つに分かれます。どれかで、やることがまったく違います。
| 形式 | やること |
|---|---|
| スコア型 | 最初に受験日程を押さえます。松山大学人文学部のようにスコアが出願の条件になっている大学では、間に合わなければ出願そのものができません。教材は公式TOEIC問題集を軸に、金のフレーズで単語、でる1000問で文法パートを固めます |
| 筆記型 | 社会や文化を題材にした英文の読解・和訳が中心になる大学が多い形式です。システム英単語などの単語帳を土台に、ポレポレ英文読解プロセス50や英文熟考で文構造を正確に取る練習を積みます |
| 英語なし | 追手門学院大学社会学部のように英語を課さない大学もあります。その分は専門科目と面接の完成度で差がつきます |
英語で使う本です。
英語を筆記で課す大学では、専門科目と英語の2本立てで合否が決まります。専門の仕上がりで並んだとき、差がつくのは英語です。社会学の勉強と同じ期間、並行して積んでください。
社会学を課している大学の例
出題形式ごとの目安です。それぞれの大学別記事で、科目・日程・出題傾向を確認できます。この記事の参考書ルートは、これらの大学の出題範囲と対応しています。
- 難関大ルートの目安(論文・論述型)——筑波大学社会・国際学群(社会学類。社会学・法学・政治学・経済学から1専攻を選ぶ専門科目+英語)、大阪大学人間科学部(小論文+専門基礎科目+口述試験。社会学を含む幅広い分野から出題)、関西大学社会学部(英語+専門論文+面接。専攻ごとにテーマが異なる)、明治学院大学社会学部(論文+英語)、法政大学社会学部(論文+面接の2段階選抜。2年次のみ)、新潟大学人文学部(外国語+専門科目。社会文化学プログラムは社会学などから1科目)
- 標準ルートの目安(基礎知識・小論文型)——追手門学院大学社会学部(社会学+面接)、松山大学人文学部(社会学科は学力検査〔社会学〕+面接)、駒澤大学文学部(社会学科は専門に関する基礎知識+英語+面接・口述試験)、近畿大学総合社会学部(英語+基礎テスト+口頭試問)、京都産業大学現代社会学部(英語+小論文+面接。2年次のみ)、龍谷大学社会学部(小論文+面接)、立正大学文学部(社会学科は英語+小論文)、福岡大学人文学部(文化学科は哲学・社会学・心理学から1科目+英語+面接)、お茶の水女子大学生活科学部(生活社会科学プログラムは社会科学の基礎知識+口述試験)
同じ大学でも学科・専攻・編入年次によって科目が違います。ここに挙げたのは目安です。必ず志望する学科の募集要項で確認してください。社会学部を持つ大学の一覧は社会学系の実施大学一覧から探せます。
いつまでに何を終えるか
試験日から逆算した目安です。始める時期が遅いなら、その分だけ各段階を縮めて進めます。
-
試験の1年前
志望校の専門試験の型(筆記・論文・小論文)と英語の扱いを確認し、買う本を決める。用語図鑑に着手。スコア型なら受験計画もここで立てる
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6〜8か月前
基本テキストを通読して、テーマごとの基礎知識を固める。ここが最も時間がかかります。英語も並行して毎日続ける
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4〜6か月前
難関大ルートは理論書へ広げる。標準ルートは基本テキストの2周目と用語の穴埋め。論述・小論文の練習をここから始める
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2〜3か月前
過去問。時間を計り、答案を最後まで書き切る。書いた答案は添削を受ける
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1か月前
書いた答案の書き直しと、用語・時事の総ざらい。新しい本を増やさない
過去問は最後に取っておくものではありません。勉強を始める前に一度目を通し、どんな形式で何が問われるかを見てください。そこで見た形式が、買う本と進める順序を決めます。
社会学の答案は、書けたつもりになりやすい科目です。用語を並べただけの答案と、概念で事象を説明できている答案の差は、自分では判別しにくいものです。過去問演習の段階では、答案を読んで指摘してくれる相手を必ず確保してください。
やってはいけない3つの使い方
- 教科書を何冊も並行して読む。本によって同じ概念の説明が違い、どの説明で覚えたか分からなくなります。軸を1冊に決めて繰り返し、他は辞書として引くのが確実です
- 読むだけで、書く練習をしない。論文型・小論文型の試験は、白紙から答案を組み立てる力を採点します。用語を知っていることと、概念で社会の事象を説明できることの間には、はっきり段差があります
- 「社会学の試験」と「社会科学の小論文」を混同する。社会科学の小論文が課される大学で社会学の教科書だけを読み込んでも、書き方の型と時事の引き出しがなければ答案になりません。逆も同じです。志望校の出題形式から逆算してください
あとは、いまの自分の位置から何を先にやるかです。志望校と現在の状況をうかがったうえで、順番を整理します。
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まとめ
- 社会学系の編入は、ほぼ全員が初学者から始めます。差がつくのは読む順序です
- 用語図鑑 → 基本テキスト → 理論書 → 論述練習の4段階。専門的な教科書からいきなり入らないでください
- 標準ルートは2冊の土台を固めるところまで。難関大ルートは理論書と論述練習を上乗せします
- 「社会学の試験」と「社会科学の小論文」は別物。小論文型は、書き方の型と時事の引き出しを別に準備してください
- 英語は筆記型・スコア型・英語なしの3つを最初に確認。スコアが出願条件の大学は日程の逆算が参考書より先です
- 過去問は最初に一度見る。形式が、買う本と順序を決めます
科目別の参考書ルートの全体像と、参考書の使い方の共通原則は編入試験の参考書ルートにまとめています。社会学系で紹介できる本は社会学系の参考書レビュー一覧から、小論文の本は小論文の参考書レビュー一覧から探せます。試験の日程や出願の段取りは編入の出願手続きとスケジュール、出願できるかどうかの条件は編入の出願資格と必要単位を確認してください。
よくある質問
社会学を勉強したことがなくても、社会学部に編入できますか?
できます。高校には社会学という科目がないため、社会学系の編入試験は、ほとんどの受験生が初学者の状態から始めます。差がつくのは順序です。イラスト中心の用語図鑑で主要な用語と人物の全体像をつかんでから、体系的な基本テキストへ進んでください。専門的な教科書からいきなり入ると抽象的な概念の壁で止まりやすく、入門書を1冊挟むだけで読み進めやすさが大きく変わります。合格した先輩にも、編入対策で初めて社会学を勉強した人が多くいます。
社会学の編入試験の参考書は何冊くらい必要ですか?
標準ルートなら、用語図鑑と基本テキストの2冊に、英語の教材を足した構成が土台になります。論文形式で理論の理解を書かせる大学を受けるなら、そこに理論書と論述練習が加わります。大切なのは冊数を増やすことではなく、決めた本を繰り返し読んで、用語と概念を自分の言葉で説明できる状態にすることです。まず志望校の募集要項で専門科目の出題形式を確かめてください。出題範囲となる教材を要項で指定している大学もあります。
「社会学の試験」と「社会科学の小論文」はどう違いますか?
社会学の試験は、社会学という学問の理論・用語の理解そのものを問います。一方、法学部や経済学部などで課される「社会科学に関する小論文」は、社会の出来事を政治・経済・法・社会の考え方で筋道立てて論じる力を見る試験で、社会学の教科書の通読よりも、小論文の書き方の型とテーマごとの背景知識を仕入れるほうが得点に直結します。同じ「社会」という語が入っていても必要な本が違うため、志望校の募集要項でどちらの型かを最初に確かめてください。
論文形式の大学は、用語を覚えるだけでは足りませんか?
足りません。論文形式では、概念の定義を示したうえで、社会の具体的な事象をその概念で説明し、自分の考察まで書き切る力が採点されます。教科書を読んで分かったつもりでも、白紙から書くと手が止まるのが普通です。理論書で各概念が生まれた問題意識まで理解し、過去問のテーマで実際に書き、書いた答案は添削を受けてください。用語を並べただけの答案と概念で説明できている答案の差は、自分では判別しにくいものです。
英語はどう準備すればよいですか?
大学によって、英語の筆記試験を課す型、TOEICなどの外部試験のスコアを使う型、英語を課さない型の3つに分かれます。スコアが出願の条件になっている大学では、間に合わなければ出願そのものができないため、参考書より先に受験日程を押さえてください。筆記型は、社会や文化を題材にした英文の読解・和訳が中心になる大学が多く、文構造を正確に取る練習と長文演習を積みます。募集要項の英語の条件は、参考書を買う前に読んでください。
面接や口頭試問では何を聞かれますか?
志望理由や入学後に学びたいテーマに加えて、専門科目の内容を口頭で問う大学があります。口頭試問がある大学では、用語の意味を暗記しているだけでは足りず、聞かれた概念をその場で自分の言葉で説明できる水準まで仕上げる必要があります。対策としては、基本テキストで学んだ用語を口頭で説明する練習が筆記の理解の確認にもなります。面接だけの大学でも、学びたいテーマと社会学の概念を結びつけて話せると説得力が変わります。
















